ついに新しい骨転移に対する分子標的薬(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)「ランマーク(一般名 デノスマブ)皮下注120mg」が本日薬価収載されました(発売は来週?)。
注目の薬価は、45155円。分子標的薬でもあり、噂で聞いた米国での薬価が10数万ドルでしたので、思いのほか安くなったようです(それでも高いですが…)。ゾメタ4mgが32254円ですので微妙な差ではあります(自己負担3割で13547円 vs 9677円)が、高価な抗がん剤やホルモン剤も併用していることを考えると少しでも安くと思う方も多いのではないかと思います。
ランマークは以前もここで書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/08/21.html)、「骨転移を有する進行性乳癌患者を対象としたデノスマブのゾレドロン酸(ゾメタ)対照ランダム化二重盲検多施設共同比較試験」において、有効性(骨関連事象抑制効果)がゾメタを上回ったと報告されています(臨床試験中において骨関連事象が最初に見られた中央値は、ランマーク治療患者27.7カ月に対しゾメタ治療患者においては19.5カ月)。またランマークはゾメタほど腎機能低下に対して神経質にならなくて良いという利点もあります。ただ、下額骨壊死が臨床試験で1.8%(ゾメタは1.3%、有意差はなし)と高いことには注意が必要だと思われます。なお、全生存率およびがん進行までの期間はゾメタによる治療患者、デノスマブ治療患者とも同等でした。
ゾメタは非常に良い薬剤です。今まで骨転移の患者さんたちにとても多くの恩恵を与えてくれたと思います。また、術後補助療法としての生存率向上への寄与も期待されています。ランマークが発売されたからといって、全て切り替えるつもりはありません。とりあえず当面はゾメタ使用中に骨転移が悪化した患者さんに使用してみようかと思っています。
いずれにしても、今までゾメタ使用中に悪化した場合の対応には苦慮してきましたがランマークの出現によって新たな武器が増えたのは確かです。ゾメタで悪化した患者さんにも是非有効性を発揮して欲しいと願っています。
10 件のコメント:
はじめまして、temariと申します。
乳癌術後6年目の去年骨転移となりました。ゾメタ開始早々に歯の治療で休止となり、再開はデノスマブの予定でしたがまだ入荷?しないので来週より、またゾメタをすることになりました。主治医より薬価が決まっていない、と説明を受けていたのですが先生のブログで薬価も分かり、今後のことを考え少しほっとしています。(もっと高価だと思っていました)
ゾメタ休止中に主たるホルモン治療薬が功を奏せず、主治医はヒスロンHへの変更を提案されましたが抵抗があり、フェソロデックスをお願いしました。抗エストロゲン剤を経て、アロマターゼ阻害剤はアリミデックス、アロマシンが効かなかった場合フェマーラやフェソロデックスはあまり期待できないのでしょうか?
>temariさん
はじめまして。
骨転移で治療中なんですね。デノスマブは明日発売となりましたよ!効果があればいいですね。ただ下額骨壊死などの副作用はデノスマブでもみられますので歯科治療中は避けた方が良いと思います。
ホルモン剤の選択ですが、アリミデックスとフェマーラは構造と作用が似ていますのでアリミデックス耐性にフェマーラの効果はあまり期待できません(一度奏効した場合には効く場合もありますが…)。アロマシンはステロイド系のアロマターゼ阻害剤なので上記2剤とは作用が異なります。しかしアロマシンも使用していて、抗エストロゲン剤が使用済みとなれば残るのはヒスロンHかフェソロデックスということになります。ヒスロンHは肥満などの副作用がありますので嫌がる患者さんも多いですが、とてもよく効く薬剤ではあります(フルツロン、エンドキサンと3剤の内服で投与するDMpC療法は 奏効率が高いです)。
フェソロデックスは抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤耐性のホルモン陽性乳がんに有効と言われていますので、現在の選択は正しいと思います。
ただし、この間ホルモン剤を変更しても効果がみられていないようですので、現在の再発巣はホルモンレセプターが陰性に変化している可能性もあります。フェソロデックスが効かないようなら早めに化学療法への変更(DMpCも含めた)も考慮すべきだと思います。
取り急ぎ以上です。効果が見られることをお祈りしています。お大事に!
早々のレスをありがとうございます。
デノスマブは、もしかすると使ってもらえるかもしれませんね。明日が通院日なので聞いてみます、ありがとうございます。
アリミデックス(2011.5~)は多分効いてはいたのですが、下肢にひどい浮腫みが出ました。当初原因が分からず、入院してあらゆる検査をしました。結局検査で原因はつかめなず、アリミデックスを中止(2011.7~)することで浮腫が改善された次第です。薬をフェアストンに変更(2011.8~2011.10)し、副作用はなかったものの下降していた腫瘍マーカーが安定せず、アロマシン(2011.11~現在)に再度変更しました。その間ゾメタを休止(2011.10~現在)。またここ2.3ヶ月腫瘍マーカー(NCC-SF-439)が停滞→上昇しています。※当初の570U/mlから300台U/mlまで減ったのが、また500台 U/mlくらいになっています。
こんな数値なのでちょっと怖いのですが再発しているのだから仕方ないのでしょうね。
明日は骨シンチ、CTを受けます。それぞれ11月、2月と受けていて前回は変化が無かったのですが、ちょっと覚悟しています。
化学療法のこともこれから調べてみます。色々とありがとうございました。
また質問で申し訳ないのですが、骨転移が広範囲であった場合ストロンチウス-89は効果的でしょうか?化学療法と併用は出来ないと聞いたような気がします。また、なるべく副作用の無い化学療法で、お勧めの治療がありましたら教えてください。
>temariさん
アリミデックスの浮腫は私は経験ありませんが経過からすると副作用なのかもしれませんね。アリミデックスが効いていたならフェマーラも有効かもしれませんが、同様の副作用が出る可能性はあると思います。
ご質問のストロンチウムですが、主に疼痛緩和目的に使用する治療薬ですし、おっしゃる通り化学療法との併用はできませんので単剤で骨転移を含めた再発自体の治療効果を期待するのは難しいと思います。ただホルモン療法とは併用できますので疼痛が悪化した場合にはフェソロデックスやヒスロンH、フェマーラと併用して使用してみても良いとは思います。
副作用のない化学療法は残念ながらありません。脱毛、嘔気が少ないのはCMF療法やXC療法(ゼローダとエンドキサンの内服)、DMpC療法(フルツロン、ヒスロンH、エンドキサンの内服)などです。骨髄抑制も他の抗がん剤と比べると軽いことが多いです(後2者は長く使用しているとエンドキサンによる骨髄抑制は起きます)。
以上です。それではお大事に。
お疲れ様です。今日も早々のご回答をありがとうございました。改めて今までの経過を振り返り、先生のご意見を聞いたことで、ちゃんと治療に向き合う気持ちになってきました。腫瘍マーカーが上がり、慌てて薬や治療について調べ、こちらにたどり着いた次第です。去年の転移発覚時の激痛が収まり、最近は病気が少しヒトゴトのような感覚でした。先生のご意見を参考にヒスロンHも化学療法も、選択肢に入れて考えてみます。副作用を恐れて治療を避けるのは、自分勝手でしたよね。先生方も研究を重ね、どんどん新しい薬や治療法が開発されているのですから。
どうぞこれからも頑張ってください。
>temariさん
ありがとうございます。
治療がうまくいくことをお祈りしています。
hidechin先生
はじめまして。乳がん術後5年目で再発し、その後の4年間にリンパ、骨、肺へと転移した40代主婦です。
お忙しいかと思いますが、よろしければひとつ質問させてください。
現在フェソロデックスとランマーク投与中です。
ランマーク投与中、抜歯等の歯科治療禁止は理解できています。
今更その歳で何を?と思われるかと思いますが、
病気で仕事を失い、転居し、知り合いのいない土地で過ごし、家で家族を迎える日々となった今、矯正歯科治療を受けたくなりました。
矯正装置を取り付けて歯を動かすという治療はランマーク投与中でもできるのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
>匿名さん
はじめまして。
再発治療、大変ですよね。でも前向きに頑張っておられることとご推察いたします。
ランマークやゾメタを投与する場合にすべての歯科治療がだめなわけではありません。抜歯などの観血的治療と言われる侵襲のある治療は注意が必要ということです。
矯正器具を用いた治療が私のイメージ通りのものでしたら、メスを入れたり抜歯したりするわけではないと思いますので大丈夫だと思いますよ。念のため歯科医に必ず確認してみて下さいね。
それではお大事に!
hidechin先生
早速のご返答ありがとうございます。
先生のコメント拝見して 涙が出てきてしまいました。
頑張っては いますが、どうしても検査結果に一喜一憂する日々です。
近いうちに矯正歯科の門をたたこうと思います。
これからも希望を持っていきたいと思います。
ありがとうございます。
>匿名さん
検査結果も大切ですが、元気に楽しく過ごせることがなによりも一番大切だと思いますよ。
頑張りすぎないように頑張って下さいね!
それではお大事に!
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