今日、C社からの依頼で社員教育のための学習会に行ってきました。
話の内容は乳がん診療についてであれば何でも良いということでしたので、「再発治療が目指すもの〜再発したら治癒しないと諦めるのか?〜」という演題名でお話ししてきました。これは私の究極のライフワークですので、エビデンスとは少し離れた内容になりましたが、再発治療に対する思いを自分の経験をもとにスライド50数枚にまとめてお話ししました。
お話しした内容の概略は、以下の通りです。
①再発の早期発見は無意味なのか?
②再発したら本当に治癒しないのか?
③再発治療と緩和治療の関係
④再発巣の外科的治療/組織採取の意義
⑤再発が治癒したと考えられる症例(Luminal A、Luminal B(HER2+)、HER2 enriched、triple negative各1例)
⑥CR(完全寛解)後の再発治療の継続期間
⑦長期CR症例の特徴
⑧医療の進歩と目指すべき再発治療
⑨製薬企業に期待すること
再発治療は簡単ではありませんが、新薬の開発で闘える武器は増えました。今は乳がんの再発を完全に治癒させることができるケースは非常に少ないかもしれません。しかし、最初から再発したら治らないと決めつけることは治療の進歩を妨げます。もちろん、患者さんにとって無益な治療を医師の自己満足でやり続けることは避けなければなりませんし、常に緩和ケアを取り入れながらQOLを重視した治療を考えていかなければなりません。患者さんの状態を見ながら抗がん治療の中止時期も適切に判断しなければなりません。しかしそういう状況の中でも再発を治癒させたいという意識だけは持ち続けていくことが必要だと私は思っています。
最後から2枚目のスライドであの名言を入れてみました。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ(by 安西先生)」(ご存知ない方は是非「SLAM DUNK」を読んでみて下さい)
ちなみにこれは患者さん1人の抗がん治療に最後まで固執するということではありません。常に「再発を治癒させたい」という気持ちを持ち続けること、それが再発治療の進歩につながるという意味です。そして同時に根治を目指す抗がん治療から延命を目指す抗がん治療、そして緩和的抗がん治療への切り替えの適切な判断と早期からの緩和治療の導入が重要であるということを再度強調して約1時間の講演を終えました。
学会での発表は慣れていますが、製薬会社での講演は初めてなので少し緊張しました。なんとか役目を果たせたようでほっとしています。
6 件のコメント:
『SLAM DUNK』・・・当時夫婦ではまりました。ちょうど今、中学生の娘がはまってます。
例の台詞は娘の担任の先生も学級通信で引用してました。
再発治療に対する先生の姿勢は患者として心強いです。
『再発の早期発見は無意味』が一般化しないことを願います。
理解出来なくはないんですが、素人としては骨転移なんかは少しでも早い方がQOLを保てる気がしたりしてしまいます。
先生は骨シンチは1年に1回程度が妥当だと思われますか?
>匿名さん
骨シンチはまったくしない医師と年1回行う医師とにだいたい分かれるのではないかと思います。
私はかなり前は年1回骨シンチを行っていましたが、今は全員には行なっていません。再発リスクが高い患者さん、他の臓器に再発がある患者さん、腫瘍マーカーの異常や骨転移を疑う症状が出た場合に骨シンチを行なうことが多いです。
理由はいろいろあるのですが、一つは検査費用が高いこと、そして特に早期発見が予後の改善に結びつきにくい再発形式が骨転移ではないかということ(転移部位が1カ所だけということはほとんどないのです)、早期発見のためには年1回では不十分かもしれませんので、そうすると被曝の問題が出てくること、などです。ただ、ゾメタやランマークなどの骨転移治療薬の開発もあり、骨転移を早期発見してこれらの治療薬を早期に用いることによって予後の改善効果が期待できるようになる可能性はあります。ですから今後は骨シンチの定期的検査も考えなければならないかもしれないと思っています。
今晩は!はじめまして、昨年6月に乳房切除術をし、術後補助療法でTCを1クール、そのごはゾラデックスとノルバデックスでホルモン療法をおこなっています。腫瘍計は30×20mmでセンチネル穿刺の結果リンパ節転移がなかった為リンパ節郭清は行いませんでした。
今回一年定期検査で同側リンパ節転移が発覚され、担当医からは非常に稀なケースだといわれました。
病院の都合で郭清手術が9月でなにもしないのは不安だからハラヴィンは1クールしようと計画しています。
4月に撮影したCTにはまだリンパ節転移の兆候はみられず、この数ヶ月で20mm程になりました、
笑えるはなしですが季節がらブラを着用して創部にあたりずっといたみを感じていたので、
まさか腫脹していりとは思いませんでした。こんなに早くしかもセンチネル穿刺では問題なかったのに、先生こんな症例ありますか?
ちなみに今回採血した腫瘍マーカーはすべて一桁で正常です。
担当医はこの結果もいいことだと言ってくれますが、慰めにしか聞こえませんでした。
不安です。
>くろさん
はじめまして。
思いがけない結果で動揺されていることと思います。
まず2つ質問があります。
①リンパ節再発は、細胞診か組織診で確認されたのですか?ブラの刺激などによる炎症性腫大の可能性はないのですよね?
②センチネルリンパ節生検は色素法、RI法のどちら(または両方)で行ないましたか?術前にCTリンフォルラフィという検査は行ないましたか?
①は確認済みという前提でお答えします。このようなことは非常に稀ではありますが起こりえます。
このような判断の誤りが起きる主な原因を挙げます。
①本来のセンチネルリンパ節ではないリンパ節を摘出した、または複数あるのを見逃した。→これは色素法単独の場合に起こりやすいです。色素はセンチネルより先のリンパ節にも流れますので、一番手前のリンパ節を見逃したり、腫瘍からのリンパ流が数本に分かれている場合にセンチネルリンパ節が複数あることに気づかないことによって起きます。これを防ぐためにはCTリンフォグラフィでセンチネルリンパ節の位置と個数を確認しておくことが役に立ちます。
②センチネルリンパ節に転移があったためにリンパ流が変わって本来のセンチネルではないリンパ節がセンチネルリンパ節であると誤認した。
③センチネルリンパ節に実は小さな転移があったのにそこが割面にならなかったので病理学的に転移陰性と診断されてしまった。
以上はいずれも考えられる原因です。できるだけこのようなことが起きないように、術前のCTを詳細に検討したり、CTリンフォグラフィやRI法を併用したりするのですが、それでも100%正確に診断できるわけではありません。
残念な結果ではありますが、手術時に郭清しても再発してから郭清しても予後には大きな変化はないという臨床試験の結果もあります。どうしてこうなったのかを考えることは今後の治療にプラスにはならないと思います。まずはいま受けるべき治療をしっかり受けるということをお考えになった方がよいのではないかと私は思いますよ。それではお大事に!
早速お返事ありがとございました。
発覚後再度細胞診をおこない、転移は確定診断です。センチはRI法でおこない、裁断幅は2mmで切っているそうです。センチの画像は一つ?で担当医も間違えないと強く言っています。CTリンフォグラフィーは多分行ってはいません。
担当医とは何でも話せるいい関係でまるでヒデチン先生みたいです。
ほんとによくあたしのはなしを聞いてくださいます。だからこそ今回の転移は辛かった!
頑張ります!先生がおっしゃるように再発してからの郭清でも間に合う!
病理の結果がでたらまた先生にお知らせいたします。
有難うございましたo(^▽^)o
>くろさん
そうでしたか。
治療が順調に進むことをお祈りしています。お大事に!
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