2012年4月20日金曜日

アバスチン初使用と独特な副作用

先日遅ればせながらようやく初めて乳がんの胸膜再発の患者さんにアバスチン+パクリタキセルを投与しました。

アバスチンは使い慣れない副作用があるのと高額であることなどから、比較的若くて元気な患者さんを1例目に選びました。投与後数日たちましたが今のところパクリタキセルによると思われる倦怠感があるくらいでお元気です。

アバスチン(一般名 ベバシズマブ)は、がん細胞が分泌するVEGFという血管新生を促すタンパクに結合して腫瘍に栄養を送る血管の新生を阻害する分子標的薬です。つまりがんを兵糧攻めにして増殖を抑えるということです。さらに異常な構造になった腫瘍血管を正常化する働きもあるため抗がん剤が腫瘍に到達しやすくなるとも言われています。単独では効果が不十分なため、抗がん剤(乳がんではパクリタキセルのみ適応)を併用します。

一般的な抗がん剤の副作用(白血球減少、嘔気、脱毛など)はほとんどありませんが、出血、血栓症、消化管穿孔、創傷治療の遅延、血圧上昇、蛋白尿などの副作用があるため、いつもとは違った注意が必要です。出血しやすいため、腫瘍が露出している場合や、抗血小板剤、抗凝固剤などを内服している患者さんには原則お勧めできません。

アバスチンは、米国においてFDAの判断で認可取り消しになった経過などがあり、国内での承認はどうなることかと思いましたが、思いのほかスムーズに認可されました。このあたりの経過はhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2011/09/blog-post_30.htmlをご参照下さい。その後、徐々に使用症例も増えているようです。今後市販後の調査でどのような成績が出るのか注目していますが、とりあえず今使い始めた患者さんには重篤な副作用なく、劇的な効果がみられることを願っています。

2 件のコメント:

カノン さんのコメント...

アバスチンを使い始めました。
3月25日のハラヴェンのところで何回かコメントを入れさせていただいた者です。
結局、ハラヴェンは私には効果がなく、腫瘍マーカーもどんどん上がり、CEA 264.6 CA15-3 1880.2までになり、胸水も1700ccも抜いたりしたので、また抗がん剤を変更することになり、アバスチン&パクリタキセルになりました。
まだ1クールしかやっていませんが、なんと驚いたことに劇的にマーカーの数値が下がりました。
CEA 84.0 CA15ー3 1308.8です。
トリプルネガティブということもあってか、今まで腫瘍マーカーはほとんど上がり続けるばかりでしたので、ちょっと信じられないくらいですが、今の所まだ副作用もパクリの脱毛や手足の痺れくらいで、一時は上がっていた肝機能もまた正常値の戻ったし、胸水もあまりたまらなくなり、できればこの状態が少しでも長く続けばいいな、と思っているところです。
アバスチンはいろいろ取りざたされていましたが、こういう著効もあり得るのだな、と思うと薬の認可などは難しいことだな、と感じました。

hidechin さんのコメント...

>カノンさん
そうでしたか。心配な状態だったんですね…。でもとりあえず今の治療が奏効しているようで良かったです。これからも副作用なく、症状も検査結果も落ち着いていることをお祈りしています。それではお大事に!