2014年1月29日水曜日

突出痛に対する新しい癌性疼痛治療薬

ちょっと遅くなりましたが、先週の土曜日に協和発酵キリンで昨年発売された「アブストラル」という薬剤の講演会に行ってきました。

ご存知の通り、乳がんに限らず、がんの再発は時に堪え難い疼痛を伴います。このような痛みに対しては、通常の鎮痛剤ではコントロールできないことも多く、医療用麻薬が使われます。以前は我が国では麻薬に対するアレルギーが強く(患者さんも医療者側も)、十分な医療用麻薬が使われてこなかった歴史がありますが、ここ10年くらいの間にかなりその有益性に関する知識が浸透してきたのではないかと思います。

昔からある医療用麻薬の代表はモルヒネですが、その後モルヒネ徐放錠(MSコンチンなど)、オキシコドン(オキシコンチン)、フェンタニル(フェントステープやデュロテップなど)が次々に発売され、患者さんの状況に合わせて様々な製剤が使用できるようになってきました。

麻薬系鎮痛剤の基本は、長時間作用型の徐放剤が基本ですが、体動時などに出現する突出痛(急激な痛み)に対しては即効性の麻薬が使われます。モルヒネ製剤の場合はオプソ、オキシコドンの場合はオキノームという薬剤が処方されることが多いと思いますが、以前はフェンタニル製剤の短時間作用型の製剤がなかったため、オキノームなどで代用せざるを得ませんでした。

今回協和発酵キリンから発売された「アブストラル」はフェンタニルの短時間作用型の製剤で、突出痛に有用とされています。この製剤の特徴は以下の通りです。

・消化器症状が少ない(特に便秘)
・モルヒネやオキシコドン内服中の突出痛にも有効
・1日量の多寡に関わらず(ただし経口モルヒネ換算30mg/日以上内服している患者さん)100μgから段階的に増量し(100、200、400μgの製剤があり、100、200、300、400、600、800μgの順で増量)、至適用量を決定する(今までは麻薬の1日量の約1/6程度が目安とされていました)(最高800μg/日)
・舌下錠で溶けやすい
・効き目が早く、効果持続時間があまり長くないので突出痛の経過に合っている(オキシコンチンやオプソは効果発現まで少し時間がかかり、必要以上に効果が長引く)。
・服用は1日4回まで(1日1回まで効果が不十分なら30分後に1回分までの量の追加可能)。

問題点としては、
①異なる用量の製剤を同時には処方できない(誤薬を防ぐため)
②外来で至適用量まで調整するのは難しい(入院の方が調整しやすいかもしれません)
③5回目の突出痛に対しては他の即効性製剤の服用が必要(あまり頻度は高くないと思いますが)
④薬価が高い(1錠あたり、100μg 573.60円、200μg 800.40、400μg 1116.80円)…1日4回100μgを舌下すると、3割負担なら1ヶ月で573.6×4×30×0.3=20649.6円、800μgなら1116.8×2×4×30×0.3=80409.6円!…かなり高いですね(泣)

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつも参考になるお話ありがとうございます。 私も再発、リンパ節に腫瘍が出てしまっていて、今、パクリとアバスチンに変更したばかりです。 腫れ上がるたびの痛と、抗ガン剤によっては体の痛みがありました。 今はカロナールですが、効かなければロキソニン出すよーと言われてます。 新薬も効果はあるのでしょうが、早く値段が安くやるように期待します。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
新薬はやはり高いですよね。痛みと言っても様々ですし、匿名さんのように腫瘍そのものによる痛みと抗がん剤の副作用に伴う神経痛やしびれとは対処法が異なります。この新薬が匿名さんの痛みの状況に最適なのかどうかはわかりませんので主治医の先生とよくご相談なさって下さい。
それではお大事に。