2014年3月16日日曜日

”北海道HBOCネットワーク” 発足!

昨日、市内某所にて”北海道HBOCネットワーク 第1回ミーティング”が開催されました。

何度かここでも書いていますが、HBOCというのは昨年アンジェリーナ・ジョリーさんの件で世界中にその存在が知れ渡ることになった”遺伝性乳がん卵巣がん症候群”のことです。米国ではNCCN(全米総合がんネットワーク)がガイドラインを作成し、その拾い上げから検査、カウンセリング、予防治療、フォローアップなどのシステムが確立しつつありますが、日本ではまだかなり遅れています。ようやくHBOCコンソーシアムという組織が中心となって日本のHBOCの状況の把握、カウンセリングの講習会などが開催されるようになり、一部の病院では予防手術も行なわれつつあるようですが、多くの地域ではカウンセリングや遺伝学的検査の実施を行なえる環境がまだまだ不十分です。

北海道ではがんセンターと3大学などでカウンセリングと遺伝子検査の体制が整いつつありますが、私たち一般の乳腺外科医や婦人科医にとってはまだ十分な知識が不足しており、対応のノウハウがよくわかっていないのが現状です。

そこで北海道内のHBOC関連医療の普及、発展のためにこのネットワークを発足させ、昨日その第1回のミーティングが行なわれたというのが今回の経過です。私たちの施設からもG先生、N先生と私の3人が参加しましたが、全道から会議室いっぱい(40人くらい?)の乳腺外科医、婦人科医が集まり、その関心の大きさがわかりました。

会議の内容は、以下の通りです。

①開会あいさつ・HBOCネットワーク設立について(札幌医大 遺伝医学 櫻井晃洋先生)
②HBOCへの取り組み・症例報告(北海道がんセンター 乳腺外科 高橋將人先生)
③BRCA1/2遺伝子検査について(㈱ファルコバイオシステムズ 和泉美希子さん)
④全体討論

詳細な内容は割愛しますが、現在行なわれている一般的なHBOCの1次拾い上げを行なうとその対象者は莫大な数になり(トリプルネガティブだけでも全体の15-20%になります)、その患者さんたち全員にHBOCについての詳細な説明を行なってカウンセリングにまわせる環境(特に説明の時間の確保)がなかなかないこと、得られた遺伝情報をどう管理するか(カルテに記載すべきか、別に管理すべきか、特に未発症者の情報はカルテには残さないのが原則だが、その後のフォローを誰がどうやって行なうかなど)、その患者さんがHBOCと判明した場合に、どの程度積極的に血縁者の人たちに知らせることを勧めるべきか(実際はほとんど十分には伝えられていないのが現状)など、遺伝性疾患特有の難しい問題があることがあらためて理解できました。

今回は初めての会合でしたが、これをきっかけにメーリングリストが作成されて情報交換が可能になるようですし、相談もしやすくなります。まだまだ道のりは長いですが、北海道におけるHBOC診療発展の第1歩になりそうです。

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