2014年10月19日日曜日

持続型G-CSF製剤”ジーラスタ”の講演会

昨日、病院薬剤師のSさんと協和発酵キリンの講演会に参加してきました。

抗がん剤治療の副作用のうち、比較的高頻度に発生し、重篤化する可能性のあるものの代表が発熱性好中球減少症です(好中球は白血球の中で細菌と直接闘う代表的な血球です)。好中球の減少に対しては、かなり以前からG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤(グラン、ノイトロジンなど)が使用されてきましたが、日本での適応は好中球が減少してからということになっていました。しかし実際には好中球数が下がってしまってからG-CSFを使用してもあまり効果的ではないことが以前から海外では報告されており、下がる前から投与する予防投与が有効とされています。しかし日本では予防投与は保険適用外でしたのでなかなか有効的にG-CSFを使用することができていませんでした。また、従来型のG-CSFは効果時間が非常に短いため、連日投与が必要でした。ですから外来化学療法を行なうことの多い乳がん領域では患者さんの負担が大きいという問題もありました。

そこで開発されたのが、Ⅰクール毎に1回投与(抗がん剤投与後24-72時間以内に1回皮下注)するだけで連日投与とほぼ同じ好中球減少予防効果のある持続型のG-CSF製剤”ジーラスタ(協和発酵キリン)”で、先日製造販売認可が下りました。発売はもう少しかかりますが年内には使用できそうです。昨日はその関連の講演会でした。

保険適用にはがん種やレジメンの細かい制限はないようですが、最新のガイドラインを参照するように書いてあります。日本でも久しぶりに”G-CSF適正使用診療ガイドライン”が改訂されましたが(http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g03)、発熱性好中球減少症(FN)の発生率が20%以上のレジメンに対しての予防投与が推奨グレードA、10-20%のレジメンが推奨グレードBとなっています。前者はTAC、dose-dense AC-Tだけですが、ともにあまりに副作用が強いために特にG-CSFの予防投与ができない日本ではほとんど使われてこなかったレジメンです。後者にはTC、ACなどが含まれます。FEC100は日本人では20%というデータがありますが、海外では10%未満という低い数値になっています。なお、国内の臨床試験のデータではTCのFN発生率は60%以上でしたので前者に変更になる可能性があります(FNの発生率は臨床試験によっては抗生剤を予防投与しているケースもあるため、判断には注意が必要です)。私たちの施設でもFEC100とTCのFN発生率は20%を大きく越えています。

問題点の1つは、ジーラスタはかなり高額であること(10万以上?)です。入院で投与する場合、DPC病院ではこれらの薬剤費を算定できませんのですべて病院の負担になってしまいます。また、関節痛や背部痛、発熱、間質性肺炎などの副作用も一定みられます。

今後発売までにジーラスタの適応について乳腺センター内で検討する予定でいますが、FNで緊急受診、入院するリスクが減ることは患者さんにとってはもちろん、私たちにとってもうれしいことです。

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