2014年7月8日火曜日

第22回 日本乳癌学会学術総会 in Osaka

明後日から大阪で乳癌学会学術総会が開催されます。私は明日の夕方出発して、一日早い金曜日に帰ってきます。G先生は一日遅れの明後日に出発して最終日までいる予定です(N先生はフル参加)。

今回の発表もe-POSTERという形式です。あらかじめデータは送ってありますので直前の準備などはありません。当日の発表もないので緊張感もなく、なんだか学会発表という感じではないです。とりあえず参加しなければ発表と見なされないので参加しますが、今回は例年のような学会に参加するわくわく感はまったくありません。

学会発表も今回が最後かもしれません。今回乳腺専門医を更新したらもう5年後は更新しないつもりですので発表の点数は必要なくなります。気楽なような寂しいような感覚です。

猛烈な台風が近づいていますので帰って来れるかどうかだけが心配です。それでは明日行ってきます!
(しばらくコメントにはお返事できません)

2014年7月6日日曜日

生活保護を打ち切られて受診を中断してしまった患者さん宅への訪問

私が外来で診ている乳がん術後の患者さんの中には、障がい者のお子さんをお持ちの方が数人いらっしゃいます。それぞれ入院の際にはそのお子さんを誰がみるか、どこに預けるかでけっこう大変でした。でも幸い皆さん再発なくお元気に経過されています。

ただ最近、とても心配なことが起きました。その中の1人の患者さんが急に受診を中断されたのです。いつも半年に1回きちんと通院されていた方だったのですぐにお電話をしたのですが現在使われていない状態でした。その方は生活保護を受けていたため、居住地である札幌近郊のE市の保護課に問い合わせたのですが、春に生活保護を打ち切ったとのことでした(理由は教えてもらえませんでした…)。

その患者さんはずっと母子家庭で重度の心身障害者の娘さんの世話をしながら2人で生活しており、その患者さん自身も重い慢性疾患で時々入院をしているような状況でした。ですから普通に就労できるような状態ではありません。生活保護を打ち切られて生活するのはかなり困難であることが予想される状況でしたので連絡がつかないのは大変心配なことでした。

最近、生活保護を打ち切られた方の悲しいニュースをときどき目にしていましたので、胸騒ぎがしていてもたってもいられなくなり、昨日の土曜日、仕事が終わってからその患者さんの自宅のあるE市まで車で行ってきました。ナビで検索して行きましたが、その周辺を探して見てもその患者さんの表札が見つかりませんでした。ただ表札がない家が2軒あったのでそのうちの1軒の隣の家の方にお聞きしたところ、その隣の家が患者さんの家でしたが春に転居されたとのことでした。転居先はわからないとのことでしたのでこれ以上の追求は残念ながら不可能となってしまいました。

予想された中の最悪の結果ではなかったのでとりあえず安堵しましたが、いったいどこに転居されたのかやはり心配です。世話をしてくれるような親戚などに身を寄せていれば良いのですが…。一日も早く患者さんから連絡が来ることを願っています。

2014年6月27日金曜日

昨日見た夢のお話…

昨日の朝、右腕が猛烈に痛くてたまらない夢を見ました。

夢の中で私はがん患者であり、腕の骨への転移による痛みということになっていました。痛くて痛くてたまらないのでG先生に痛み止めの注射を右腕に何回も打ってもらったのですがいっこうに痛みは改善せず、あまりの痛さに泣きながらのたうち回るという夢でした(汗)

朝3時半に目覚めてみると、私の右腕はうつ伏せになった身体の下敷きになってしびれてまったく動かない状態になっていました…。そして枕には痛みに耐えかねて流した涙でびっしょり濡れた跡が…(泣)

がん患者さんの痛みをあらためて実感した夢でした。あの痛みは辛いですね…。がん患者さんの痛みに対して今以上に親身になって考えてあげたいと思わされたリアルな夢のお話でした…(汗)
(ちなみにしびれて動かなくなった腕は無事復活しました!)

2014年6月26日木曜日

第11回 With You Hokkaido ”良く知ろう、乳がんの治療”

今年もWith You Hokkaidoが近づいてきました。今年は例年より早くチラシとポスターが届きました(写真)。さっそく病棟、外来、化学療法室、関連病院の外来に置くことにしました。



開催日は、2014年8月23日(土)の12:30-15:50で、場所はいつもの札幌医大研究棟1階大講堂です。今回は実行委員会での協議の結果、例年とはいくつか異なる形で行なうことになりました。

まず第1に、グループワークが一番最初に行なわれることになりました。会場についたらすぐにグループワークの部屋に移動になります。

第2に、今回は患者さんからの質問に答える形のパネルディスカッションを行なうことになりました。どんな質問が来るのかちょっとどきどきです。

特別講演は2題。”性機能障害”のお話と”放射線治療”のお話です。患者さんにとってはとても興味深いお話が聞けると思いますので楽しみにしていて下さい!

申し込みは、実行委員のいる病院の外来に置いてあるチラシの郵送、もしくは下記の連絡先にご相談下さい。

「東札幌病院内 With You Hokkaido事務局」
TEL : 011-812-2311(代表)
FAX : 011-823-9552
受付時間 月曜〜金曜 9:00-17:00



2014年6月25日水曜日

乳腺術後症例検討会 33 ”新体制”

今日は定例の症例検討会でした。

今までは私が症例の選定やスライドのチェック、進行の補助などを行なってきましたが、前回の検討会でその役目を終え、今回からはG先生が中心になってこの会を運営していくことになりました。

その第1回は、症例検討が2例、そして検査技師のTさんによる”乳腺超音波検査の学び方”に関する講演でした。

症例はやや丸みを帯びた多形性微細石灰化の集簇に変化がみられ、DCISの合併を疑いましたが結果的にはMucocele-like tumor(MLT)だった一例と一見境界明瞭に見えて充実腺管がんを疑った硬がんの一例でした。

T技師による講演は、超音波技師向けというより放射線技師や病理医など他の職種に対する乳腺超音波検査に関する基礎知識の講義とグループ分けをして10例の症例の超音波診断を行なう(超音波技師が助言しながら他の職種の参加者に読ませる)クイズという内容でした。新たな試みでしたので参加したメンバーは楽しめたのではないでしょうか?ちょっと時間が押していて駆け足になってしまったのは残念ですが…。

新体制、そして新しい試み(前回もG先生のマンモグラフィの読み方の講演があったので2回目ですが)は、順調なようです。これで心置きなく彼らに任せて私はいつでも引退することができそうです!

2014年6月19日木曜日

ワールドカップ真っ最中!

気がつけばもう6月も後半になっていたのですね…。この間、体調不良と7月に行なわれる症例検討会の準備などに追われていて、ブログのコメントに返事をするのがやっとの状態でした(汗)。ようやく体調も上向きになってきましたが、これからの生き方の答えが見つからず、なかなかブログをアップする気力も湧いてきません。今までのようなペースでは書けないことをどうかご了承願います。

そういえば今はワールドカップ真っ最中ですね。入院中の患者さんの中にも朝早くからサッカーを楽しみに見ている方がいらっしゃいます。明日のギリシャ戦はなんとか勝って決勝トーナメント進出に望みを残して欲しいものです。

日本代表の初戦(コートジボワール戦)は日曜日でしたが、私は関連病院の乳がん検診でした。幸い、検診の合間にホールのTVで本田選手の素晴らしいゴールシーンを見ることができましたし、検診終了後に逆転のゴールも見ることができました(泣)。

監督や選手たちが思っていたようなサッカーができなかったこと、そして見ている日本国民が期待しているような結果ではなかったことはたしかに残念なことでした。そしてネット上では、選手たちへの個人批判が行なわれているのを何度も見かけました。

でもよく考えてみて下さい。日本がワールドカップに出場できるようになったのはつい最近のことです。1998年の初出場まではそのピッチに立つことすらできなかったのです。選手たちが優勝を目標に掲げるのは良いことだと思いますし、ある意味当然だと思います。最初から負けることを目標にすることはおかしいですし、参加するからにはどのチームにもチャンスはあるからです。でも選手たちが優勝を目指すということを口に出したからと言って、そのとおりにいかないと批判するのはこれもおかしなことです。前回優勝のスペインだって、毎回優勝候補と言われながら何十年もかかってようやく優勝できたのですから、ワールドカップで優勝することは簡単なことではないと思います。そのスペインでさえ、今回は連敗で真っ先に決勝トーナメント進出の夢を断たれたのです。

選手たちは、結果はともかく勝ちたいと思って一生懸命頑張ってきたはずです。なんの努力もしていない外野が無責任に彼らを批判することはやめるべきだと私は思います。世界からも評価されている日本のパスサッカーを明日は存分に見せて、結果を恐れずに良い試合をしてくれることを私は願っています。

今回は全然関係ない話でした(笑)

明日はみんなで日本代表を応援しましょう!

2014年6月5日木曜日

タモキシフェンは10年投与を推奨(ASCO 2014)

タモキシフェンの投与期間に関しては以前から様々な見解が報告されてきましたが、最近の報告では5年より10年を推奨するものが多いようです。今回米臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した乳癌の診がんガイドラインにおいても、ステージI-IIIでホルモン受容体陽性の患者に対する術後ホルモン療法の項目を更新し、ホルモン受容体陽性患者に対する最長10年までのタモキシフェン投与が推奨されました。

ASCOの専門委員会が2010年から行なってきた関連する医学文献を対象に系統的レビューによるとタモキシフェンを5年間使用した乳がん患者に比べ10年間使用した患者には生存利益が見られること、10年使用群では再発リスクと対側乳癌リスクも低いことを示しました。一方で、前回のガイドライン更新以降の文献に、アロマターゼ阻害薬の投与期間の延長に関する新たなエビデンスは見られませんでした。

ガイドラインに示された勧告の要点は以下の通りです。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経前または閉経期の女性には、術後ホルモン療法としてタモキシフェンを5年間投与し、その時点で引き続き閉経前であればタモキシフェンをさらに5年間投与し、閉経後であればタモキシフェンをさらに5年間投与するか、アロマターゼ阻害薬を5年間投与する。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経後の女性に対する術後ホルモン療法の選択肢は以下のとおり。
①タモキシフェンを10年間投与
②アロマターゼ阻害薬を5年間投与
③タモキシフェンを5年間投与し、その後アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与
④タモキシフェンを2-3年投与し、アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与

・閉経後の女性でタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬に対して不忍容を示した患者には、代替となる術後ホルモン療法を提供する。
①アロマターゼ阻害薬を使用していたが5年未満で使用を中止した患者には、その時点から当初予定されていた5年後までタモキシフェンを投与
②タモキシフェンを2-3年使用していた女性には、その時点から最長5年間アロマターゼ阻害薬を投与

ホルモン療法を最長10年間受けることのリスクや、想定される有害事象について患者さんと医師がきちんと話し合うことは大切です。タモキシフェンを使用した患者さんの多くが有害事象を経験しますが、今回ASCOが検討対象にした臨床試験では、使用期間を延長しても新たな、または想定外の有害事象は発生しなかったということです。

まだ国内ではタモキシフェンの投与期間について十分な合意はできていません。しかし今回のASCOのガイドラインによって今後は再発リスクによって10年投与が標準になっていくのかもしれませんね。