読者の陽さんからのリクエストにお応えします。
以前も少し書きましたが、乳がん術後の患者さんに対して明確なエビデンスがある定期検査は、年1回のマンモグラフィ(推奨グレードA)と定期的な問診と視触診(推奨グレードB)だけです。
つまり、再発の有無を調べる検査(腫瘍マーカー、腹部超音波検査や胸腹部CT、骨シンチなど)を定期的に行なうことに関して有益性が証明されていないので推奨はできないということです。米国ではこのガイドラインに則ってフォローされているようですが、米国の場合は保険の保障対象外ですと医療費が高額ですのでその影響も受けているように思います。日本では、術後に再発検査を行なっても保険適応外として認められないということはありませんし、国民性なのか、再発検査を望む患者さんが多いこともあって、実際は多くの病院で定期的な再発チェックの検査を行なっています。私もエビデンスがないことや、診療ガイドラインで推奨されていないことは十分に理解していますが、実際は検査を行なうケースがほとんどです。
術後定期検査を行なう場合に考慮すべき点を列挙してみます。
①エビデンスがあるかどうか
②患者さんの健康に不利益をもたらす可能性があるかどうか
③医療費への影響はどうか
④検査をしないことが患者さんの精神衛生上、マイナスにならないかどうか
①については、現時点では上記の通り、遠隔再発を早期発見することの意義は証明されていません。しかし、その根拠になっている臨床試験のほとんどはかなり古い症例から得れれたデータです。ここ20年くらいの間に、乳がんの治療は目覚ましい進歩をとげています。ハーセプチンもアロマターゼ阻害剤もゾメタもなかった時代のデータをもとに、再発の早期発見の意義を否定して良いのかどうか、考慮する必要があります。実際、再発を早期発見、早期治療して治癒した症例は存在するわけですから、まったく無意味とは言えないはずです。ただし、早期発見の有効性を論じる時には、lead-time bias(早期に発見したために見かけ上、生存期間が長く見えるバイアス)を考慮した上で判断しなければならないため、評価には十分な注意が必要です。
②については超音波検査は無害ですので問題ありませんが、放射線被曝を受けるCTやシンチ、PETの場合には必ずそのリスクを考慮しなければなりません。放射線被曝については原発事故の影響で今も問題になっていますがいろいろな考え方があります。私にはどれが正しいのかよくわかりません。実際、専門家の意見も分かれているわけですし、被曝の臨床試験を行なったわけではありませんので(ほとんどは原爆の古いデータから推測された影響を根拠にしています)、本当のところはわからないと言うべきなのかもしれません。ですから、放射線というのは浴びないに越したことはありません。浴びても良いとはっきり言えるのは、自然からやむを得ず浴びる放射線と有益性が被曝リスクを上回ると推測される場合のみです(多くの医療被曝など)。再発チェックのために放射線を浴びるのは是か非か、という問いに対して、正確には答えられません。エビデンスがないのだから不利益のほうが上回るという考え方も間違っていないと思います。しかし、もしかしたらCTで肺転移や肺がんが早期に見つかって治癒につながるかもしれないという可能性も否定はできませんので、完全に不利益しか受けないとまでは言えません。胸部CTについては、最近、肺がん検診としての有用性が証明されたという報告も出てきていますのでそれだけでも有益なのかもしれません。
③は最近、様々な医療現場で重視されていることです。私は経済学者でも政治家でもありませんので、患者さんの命をお金で判断はしたくありません。もちろん、有益性がまったくないなら別ですが、どこまでがお金に見合う利益なのかを考えるのは非常に難しいことです。ですから私自身のコメントは差し控えます。
④”検査をしないと不安です!”とおっしゃる患者さんは多いです。これは日本だけなのか、他国でもそうなのかはわかりませんが、比較的簡単に安価(米国に比べて)で検査できる日本は特別なのかもしれません。”遠隔転移の定期検査にはエビデンスがありません”とお話ししても検査を希望される方も多いです。もちろんこちらの説明の仕方にもよると思います。医師があまりにエビデンスを強調しすぎて機械的に話すと、患者さんに冷たい印象を持たれて他の病院に転院を希望したというようなお話もよく聞きます。検査をすることが精神の安定につながるのであれば、定期的に行なっても悪いとは言えないのかもしれません。
ちなみに私が定期的に行なっている検査はおよそ以下の通りです。
<術後〜5年目>
1/3ヶ月 視触診、血液検査(腫瘍マーカー、一般採血…ホルモン剤の副作用チェックのためなど)
1/6ヶ月 腹部超音波検査、乳房・所属リンパ節超音波検査
1/1年 マンモグラフィ、胸部CT、(骨シンチ…再発リスクが高い場合)、骨密度検査(アロマターゼ阻害剤内服症例)、婦人科がん検診(タモキシフェン内服症例は1/6ヶ月の場合あり)、希望者は胃カメラ、便潜血検査など
<〜10年目>
1/6ヶ月 視触診、血液検査(腫瘍マーカー+必要に応じて一般採血)、腹部超音波検査、乳房・所属リンパ節超音波検査
1/1年 マンモグラフィ、胸部CT、(骨シンチ…再発リスクが高い場合)、骨密度検査(アロマターゼ阻害剤内服症例)、婦人科がん検診(タモキシフェン内服症例は1/6ヶ月の場合あり)、希望者は胃カメラ、便潜血検査など
<10年目〜>
1/6ヶ月〜1/1年 視触診、乳房・所属リンパ節超音波検査
1/1年 マンモグラフィ、婦人科がん検診(タモキシフェン内服症例は1/6ヶ月の場合あり)、希望者は胃カメラ、便潜血検査など
もちろんこの定期検査にはエビデンスはありません。ただ、経験的に、再発は2年、5年、10年が節目だと感じていました。それはいま考えるとサブタイプ(トリプルネガティブ→2年、HER2 richやLuminal B→5年、Luminal A→10年)別の再発時期に関連していたのかもしれません。今後はサブタイプ別に検査を行なう工夫も必要かもしれないと感じています。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2011年5月30日月曜日
2011年5月29日日曜日
御礼 アクセス 100000件!
いつの間にかアクセス数が100000件を突破していました。芸能人のブログに比べるとささいな数ですが、私にとっては驚くほどの早さだったと思います。いつも見ていただきありがとうございました。記念すべきことなのに気づかずに大変失礼しました。
2009年2月にこのブログを始めてから、最初は20件/日程度だったアクセス数が、皆さんのおかげで200-300件/日を越えるようになりました。見て下さった方々が口コミでお友達に教えて下さったり、ブログでご紹介下さったり、本当にうれしく思っています。ただ、その分、次第に責任の重さものしかかってきて、あまり個人的な思いは軽々しくは書けないなと感じています。
でもこれからもただ医療関係のニュースをコピペするのではなく、その情報から読み取れる背景だったり、違う物の見方だったり、その情報に関連する自分の経験だったりを加えながらわかりやすく情報を発信できたらと思っています。
もし取り上げて欲しいテーマなどがありましたら、ここのコメントにでも書き込んでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします!
2009年2月にこのブログを始めてから、最初は20件/日程度だったアクセス数が、皆さんのおかげで200-300件/日を越えるようになりました。見て下さった方々が口コミでお友達に教えて下さったり、ブログでご紹介下さったり、本当にうれしく思っています。ただ、その分、次第に責任の重さものしかかってきて、あまり個人的な思いは軽々しくは書けないなと感じています。
でもこれからもただ医療関係のニュースをコピペするのではなく、その情報から読み取れる背景だったり、違う物の見方だったり、その情報に関連する自分の経験だったりを加えながらわかりやすく情報を発信できたらと思っています。
もし取り上げて欲しいテーマなどがありましたら、ここのコメントにでも書き込んでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします!
2011年5月27日金曜日
乳腺術後症例検討会 11 ”Firefly=ほたる”
<お知らせ>
5/25から私のPCからブログのアカウントにアクセス不能になっており、ブログのアップもコメントの返事も書き込めない状況になっています。いろいろトライしてみましたがいまだに原因は不明ですので病院のPCから投稿しています。
コメントを書き込まれた方は返事に時間がかかることをご了承願います。
5/25に毎月恒例の症例検討会を開催しました。今回は新たに他の施設からの参加者が加わり、狭い会場はいっぱいでした。
今回も症例は4例。
①ステロイドが著効した肉芽腫性乳腺炎の1例
②両側の腫瘤で粘液癌と線維腺腫と診断された症例
③構築の乱れでフォロー中に診断された非浸潤がん主体の乳がん症例
④長期間大きさが変わらず脂肪または線維腺腫としてフォローされた末にごく早期の乳がんと診断された症例
の4例でした。いずれも診断がなかなか難しい症例でした。
そのあと、先月に引き続き、N技師によるMicro Pure(Firefly:“ほたる”の意味)についてのミニレクチャーがありました。Micro Pureは微細石灰化を明瞭化させる超音波の技術です。これが進歩したら、石灰化はマンモグラフィでなければ見えない、ということがなくなるのですが、実際はなかなか難しいです。今後症例を集めて技量アップと超音波検診の導入につなげたいと思っています。
5/25から私のPCからブログのアカウントにアクセス不能になっており、ブログのアップもコメントの返事も書き込めない状況になっています。いろいろトライしてみましたがいまだに原因は不明ですので病院のPCから投稿しています。
コメントを書き込まれた方は返事に時間がかかることをご了承願います。
5/25に毎月恒例の症例検討会を開催しました。今回は新たに他の施設からの参加者が加わり、狭い会場はいっぱいでした。
今回も症例は4例。
①ステロイドが著効した肉芽腫性乳腺炎の1例
②両側の腫瘤で粘液癌と線維腺腫と診断された症例
③構築の乱れでフォロー中に診断された非浸潤がん主体の乳がん症例
④長期間大きさが変わらず脂肪または線維腺腫としてフォローされた末にごく早期の乳がんと診断された症例
の4例でした。いずれも診断がなかなか難しい症例でした。
そのあと、先月に引き続き、N技師によるMicro Pure(Firefly:“ほたる”の意味)についてのミニレクチャーがありました。Micro Pureは微細石灰化を明瞭化させる超音波の技術です。これが進歩したら、石灰化はマンモグラフィでなければ見えない、ということがなくなるのですが、実際はなかなか難しいです。今後症例を集めて技量アップと超音波検診の導入につなげたいと思っています。
2011年5月23日月曜日
「高額療養費」拡充を検討!
多くのがん患者さんにとって医療費の問題は切実です。乳がんに限らず、がん領域における治療薬の進歩がめざましいのは良いことではありますが、新薬が多い分、薬剤費も高額になります。
大腸がんとの闘病の末、昨年1月に亡くなった故金子明美さんが、室蘭でのがんウオークや国会参加で訴え続けてきたことが実を結びそうです。金子さんのがん患者の高額医療費負担軽減の願いは一歩ずつではありますが前に進んでいます。
読売新聞によると、今回厚生労働省は、医療費の窓口負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる高額療養費制度の拡充などを柱とする医療・介護分野の改革案を、「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅首相)に提出したということです。高額療養費制度については、「セーフティーネット機能の強化」を図るため、低所得者とがんなどで長期間、高額な医療を受ける患者に関し、負担上限額を引き下げるそうです。必要な財源は、外来患者さんの窓口負担に数百円程度の少額を上乗せする「初再診時定額負担制度」の導入で捻出するということですから、一般患者さんに、高額医療費の患者さんの負担を負ってもらうことになりますので素直には喜べませんが、今の国家財政ではやむを得ないのかもしれません。
いずれにしても、「金の切れ目が命の切れ目」にならないように、医療費負担に苦しむ患者さんの救済制度は絶対に必要です。ただ、薬価自体が非常に高額であることにも目を向ける必要があります。新薬開発に要した費用の回収は理解できますが、本当に今の薬価が適切なのか、開発費を回収できたら自動的に薬価を下げるようなシステムづくりは不可能なのか、開発費用を下げる工夫と努力はこれ以上できないのか、国と製薬会社に検討をお願いしたいところです。
大腸がんとの闘病の末、昨年1月に亡くなった故金子明美さんが、室蘭でのがんウオークや国会参加で訴え続けてきたことが実を結びそうです。金子さんのがん患者の高額医療費負担軽減の願いは一歩ずつではありますが前に進んでいます。
読売新聞によると、今回厚生労働省は、医療費の窓口負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる高額療養費制度の拡充などを柱とする医療・介護分野の改革案を、「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅首相)に提出したということです。高額療養費制度については、「セーフティーネット機能の強化」を図るため、低所得者とがんなどで長期間、高額な医療を受ける患者に関し、負担上限額を引き下げるそうです。必要な財源は、外来患者さんの窓口負担に数百円程度の少額を上乗せする「初再診時定額負担制度」の導入で捻出するということですから、一般患者さんに、高額医療費の患者さんの負担を負ってもらうことになりますので素直には喜べませんが、今の国家財政ではやむを得ないのかもしれません。
いずれにしても、「金の切れ目が命の切れ目」にならないように、医療費負担に苦しむ患者さんの救済制度は絶対に必要です。ただ、薬価自体が非常に高額であることにも目を向ける必要があります。新薬開発に要した費用の回収は理解できますが、本当に今の薬価が適切なのか、開発費を回収できたら自動的に薬価を下げるようなシステムづくりは不可能なのか、開発費用を下げる工夫と努力はこれ以上できないのか、国と製薬会社に検討をお願いしたいところです。
2011年5月22日日曜日
アロマターゼ阻害剤による関節痛にグルコサミン+コンドロイチンが有効??
現在主に使用されているアロマターゼ阻害剤には、アリミデックス、フェマーラ、アロマシンの3種類がありますが、いずれも関節のこわばりや痛みという副作用を生じることがあります。命に関わる副作用ではありませんが、患者さんにとってはかなり苦痛を感じる場合が多いようです(参考:http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/09/blog-post_06.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2011/01/blog-post_27.html)。
少し前の話ですが、サンアントニオ乳癌シンポジウム 2010において、アロマターゼ阻害剤による関節痛に対するグルコサミン+コンドロイチンの有効性を検証する臨床試験の中間結果が報告されたそうです。
これはコロンビア大学のGreenleeらが行なった第Ⅱ相試験で、3ヶ月以上アロマターゼ阻害剤を内服した後に関節のこわばりや痛みを発症した患者さんに対してグルコサミン1500mg/日とコンドロイチン1200mg/日を投与するというものです。有効性の評価は、WOMAC index、M-SACRAH、BPI-SFという方法で12週ごとに解析しました。最終的に解析できたのは25人と少ないため、信頼性は不十分ですが、膝・股関節痛とこわばりの改善が52%(WOMACで2P以上改善)、手の疼痛の改善が64%(M-SACRAHで2P以上改善)という結果でした。全体で見ると患者さんの80%は、WOMACまたはM-SACRAHにおいて手、または膝の症状の改善がみられていました。
この研究は興味深いですが、まだ第Ⅱ相試験です。関節痛などの症状は非常にプラセボ効果が大きいと考えられますので、今後プラセボと比較した第Ⅲ相試験での評価が必要です。ただプラセボ効果でもこれだけ改善するのであれば、この治療による副作用や費用の問題がないのであれば使用を考慮しても良いのかもしれませんが…。
一方で昨年、「グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない」という研究結果も報告されています(スイス・ベルン大学社会・予防医療研究所 Simon Wandelら BMJ誌2010年10月2日号)。これによれば、ネットワーク・メタ解析によって10試験・3,803例を調査した結果、プラセボとの比較において、「グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もない」という結論だったということです。
アロマターゼ阻害剤の副作用による関節症状に対する効果は、一般の関節痛に対する効果とは違うのかもしれませんが、この解析結果を考慮すると、Greenleeらの報告は、安易に「グルコサミン+コンドロイチンがアロマターゼ阻害剤による関節症状に効果がある」と考えるのではなく、慎重に評価すべきであるということは言えるかもしれませんね。
少し前の話ですが、サンアントニオ乳癌シンポジウム 2010において、アロマターゼ阻害剤による関節痛に対するグルコサミン+コンドロイチンの有効性を検証する臨床試験の中間結果が報告されたそうです。
これはコロンビア大学のGreenleeらが行なった第Ⅱ相試験で、3ヶ月以上アロマターゼ阻害剤を内服した後に関節のこわばりや痛みを発症した患者さんに対してグルコサミン1500mg/日とコンドロイチン1200mg/日を投与するというものです。有効性の評価は、WOMAC index、M-SACRAH、BPI-SFという方法で12週ごとに解析しました。最終的に解析できたのは25人と少ないため、信頼性は不十分ですが、膝・股関節痛とこわばりの改善が52%(WOMACで2P以上改善)、手の疼痛の改善が64%(M-SACRAHで2P以上改善)という結果でした。全体で見ると患者さんの80%は、WOMACまたはM-SACRAHにおいて手、または膝の症状の改善がみられていました。
この研究は興味深いですが、まだ第Ⅱ相試験です。関節痛などの症状は非常にプラセボ効果が大きいと考えられますので、今後プラセボと比較した第Ⅲ相試験での評価が必要です。ただプラセボ効果でもこれだけ改善するのであれば、この治療による副作用や費用の問題がないのであれば使用を考慮しても良いのかもしれませんが…。
一方で昨年、「グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない」という研究結果も報告されています(スイス・ベルン大学社会・予防医療研究所 Simon Wandelら BMJ誌2010年10月2日号)。これによれば、ネットワーク・メタ解析によって10試験・3,803例を調査した結果、プラセボとの比較において、「グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もない」という結論だったということです。
アロマターゼ阻害剤の副作用による関節症状に対する効果は、一般の関節痛に対する効果とは違うのかもしれませんが、この解析結果を考慮すると、Greenleeらの報告は、安易に「グルコサミン+コンドロイチンがアロマターゼ阻害剤による関節症状に効果がある」と考えるのではなく、慎重に評価すべきであるということは言えるかもしれませんね。
2011年5月20日金曜日
これからの乳がん検診の課題
先日のピンクリボン in SAPPOROの打ち合わせで、対がん協会の方が、”もうマンモグラフィを無料体験などでお誘いする段階は終わった”と話されていました。
たしかにもうそういう段階は終わったのかもしれません。ここ数年、ピンクリボン in SAPPOROの夏のイベントでも、ファイターズの田中賢介選手がアウト1つにつき1人の無料マンモグラフィをプレゼントしたり、無料クーポン券が配布されたり、様々なメディアでピンクリボン運動や乳がん検診を取り上げていただいたりで、”興味を持っている対象者”に対してはかなりマンモグラフィ検診が認知されたのではないかと思います。
しかし、一方で未だに目標の検診受診率にはほど遠く、せいぜい20%程度で頭打ちになっています。今のままでは50%の検診受診率にはほど遠い状況だと思います。受診率向上、そして乳がん死亡率減少のためには、さらなる工夫が必要になってきているのだと思います。
現在の乳がん検診の課題をあげてみます。
①乳がん検診を受ける気がない人は結局受診しない(自分は乳がんにならないと思っている、乳がんと言われたら怖いから…、経済的問題など)
②マンモグラフィという検査自体の問題(被曝のリスク、痛み、高濃度乳腺の小腫瘤の描出能が低い)
③乳がんは30才代から増加するのに対象年齢が40才以上に限定されている
④検診発見乳がんは、比較的進行の遅いタイプが多く、たちの悪い進行の速いタイプは検診で引っかかりにくい?(検診不要論者の根拠にもなっています)
⑤地方に住んでいる人は機会が限定されていて検診を受けるのもなかなか困難な場合がある
①の経済的問題については、所得に合わせたきめ細かい自己負担率(無料受診者割合を増やすなど)の設定を行なうなどが必要です。正しい知識の啓蒙については地道に努力していく必要があります。また、生命保険に定期的ながん検診を無料でセットにして、保険支払いの条件にがん検診を受けていることを入れるというのも良いかもしれません。
②③④は、マンモグラフィという検診手段の問題です。マンモグラフィのみに頼っているうちは解決しない問題かもしれません。現在、J-STARTで超音波検査併用検診の臨床試験が行なわれていますのでその結果に期待したいところです。また、④についてですが、私の病院での検診発見乳がんと有症状発見乳がんの悪性度、増殖能(Ki-67)を調べてみると、たしかに検診発見乳がんはおとなしいタイプが多い傾向がありました。もちろん、だからと言って検診発見乳がんを放っておいても命に関わらないなどという”がんもどき”理論を支持するつもりはありませんが、問題は石灰化を伴わない悪性度の高いタイプをどうやって検診で拾い上げていくかという検討が必要だということです。これはおそらくマンモグラフィの読影能力を上げるだけにこだわっていては解決しない問題なのではないかと私は思っています。
⑤は乳がん検診に携わる医療従事者を増やす以外に解決の道はないと思います。一般病院で勤務しながら地方へ出張検診するのは現在の体制上なかなか困難です。対がん協会などの検診専門施設だけではマンパワーが不足しています。しかし医師不足は全国的、全科的な問題ですので、乳がん検診に関わる医師だけ増やすのは現状ではかなり困難な課題です。
私の病院は、乳腺外科医3人体制になって少し余裕ができました。私の病院には関連診療所が道内にいくつもあります。検診車さえあれば定期的な出張乳がん検診ができるのですが…。超音波検診なら可能ですので今後検討していきたいと思っています。
たしかにもうそういう段階は終わったのかもしれません。ここ数年、ピンクリボン in SAPPOROの夏のイベントでも、ファイターズの田中賢介選手がアウト1つにつき1人の無料マンモグラフィをプレゼントしたり、無料クーポン券が配布されたり、様々なメディアでピンクリボン運動や乳がん検診を取り上げていただいたりで、”興味を持っている対象者”に対してはかなりマンモグラフィ検診が認知されたのではないかと思います。
しかし、一方で未だに目標の検診受診率にはほど遠く、せいぜい20%程度で頭打ちになっています。今のままでは50%の検診受診率にはほど遠い状況だと思います。受診率向上、そして乳がん死亡率減少のためには、さらなる工夫が必要になってきているのだと思います。
現在の乳がん検診の課題をあげてみます。
①乳がん検診を受ける気がない人は結局受診しない(自分は乳がんにならないと思っている、乳がんと言われたら怖いから…、経済的問題など)
②マンモグラフィという検査自体の問題(被曝のリスク、痛み、高濃度乳腺の小腫瘤の描出能が低い)
③乳がんは30才代から増加するのに対象年齢が40才以上に限定されている
④検診発見乳がんは、比較的進行の遅いタイプが多く、たちの悪い進行の速いタイプは検診で引っかかりにくい?(検診不要論者の根拠にもなっています)
⑤地方に住んでいる人は機会が限定されていて検診を受けるのもなかなか困難な場合がある
①の経済的問題については、所得に合わせたきめ細かい自己負担率(無料受診者割合を増やすなど)の設定を行なうなどが必要です。正しい知識の啓蒙については地道に努力していく必要があります。また、生命保険に定期的ながん検診を無料でセットにして、保険支払いの条件にがん検診を受けていることを入れるというのも良いかもしれません。
②③④は、マンモグラフィという検診手段の問題です。マンモグラフィのみに頼っているうちは解決しない問題かもしれません。現在、J-STARTで超音波検査併用検診の臨床試験が行なわれていますのでその結果に期待したいところです。また、④についてですが、私の病院での検診発見乳がんと有症状発見乳がんの悪性度、増殖能(Ki-67)を調べてみると、たしかに検診発見乳がんはおとなしいタイプが多い傾向がありました。もちろん、だからと言って検診発見乳がんを放っておいても命に関わらないなどという”がんもどき”理論を支持するつもりはありませんが、問題は石灰化を伴わない悪性度の高いタイプをどうやって検診で拾い上げていくかという検討が必要だということです。これはおそらくマンモグラフィの読影能力を上げるだけにこだわっていては解決しない問題なのではないかと私は思っています。
⑤は乳がん検診に携わる医療従事者を増やす以外に解決の道はないと思います。一般病院で勤務しながら地方へ出張検診するのは現在の体制上なかなか困難です。対がん協会などの検診専門施設だけではマンパワーが不足しています。しかし医師不足は全国的、全科的な問題ですので、乳がん検診に関わる医師だけ増やすのは現状ではかなり困難な課題です。
私の病院は、乳腺外科医3人体制になって少し余裕ができました。私の病院には関連診療所が道内にいくつもあります。検診車さえあれば定期的な出張乳がん検診ができるのですが…。超音波検診なら可能ですので今後検討していきたいと思っています。
2011年5月17日火曜日
ピンクリボン in SAPPORO 2011
今年もまた夏に「ピンクリボン in SAPPORO」が行なわれます。今年で6回目になります。今日、その実行委員会に参加してきました。
今年のテーマは、
「ピンクリボン大作戦」(写真左)
概要は以下の通りです。
日程:
2011年8月28日(日)
主な内容:
①ピンクリボンカフェ
13:00-16:00 昨年も参加して下さったゴスペルシンガーKiKiさんとピンクリボンクワイヤによる歌を中心に札幌プロムナード(南1西3の歩行者天国)でステージを行ないます。カフェ形式のテーブルと椅子を置いて、乳がん検診の啓蒙活動や自己検診のご説明、パンフレットの配布なども行なう予定です。参加は無料です。
②ピンクリボン電車
集合時間は13:00と15:00の2回です。市電を1台借り切って円山方面まで往復し、その間、乳がん啓発活動に積極的に取り組んでいるパフォーマー「もえぎ色女学院」(写真右)が車内を盛り上げてくれます。彼女たちのパフォーマンスやクイズ大会などを行ないながら、市内をピンクリボン電車が走り抜けます。参加人数は各30人で、事前申し込みが必要です。飲み物込みで参加費は1000円とのことですが、具体的な内容はこれから詰める予定とのことです。私にはまだちょっとイメージがわきませんが、彼女たちの笑顔とパフォーマンスに元気をもらえるのではないかと思います。
お問い合わせ:
「ピンクリボン in SAPPORO」実行委員会事務局
〒063-0841 札幌市西区八軒1条西1丁目1-26-402
TEL (011) 621-8150
FAX (011) 621-9458
http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/
*実行委員がいる病院にはパンフレットを置いてありますのでお問い合わせ下さい。
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