2011年5月22日日曜日

アロマターゼ阻害剤による関節痛にグルコサミン+コンドロイチンが有効??

現在主に使用されているアロマターゼ阻害剤には、アリミデックス、フェマーラ、アロマシンの3種類がありますが、いずれも関節のこわばりや痛みという副作用を生じることがあります。命に関わる副作用ではありませんが、患者さんにとってはかなり苦痛を感じる場合が多いようです(参考:http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/09/blog-post_06.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2011/01/blog-post_27.html)。

少し前の話ですが、サンアントニオ乳癌シンポジウム 2010において、アロマターゼ阻害剤による関節痛に対するグルコサミン+コンドロイチンの有効性を検証する臨床試験の中間結果が報告されたそうです。

これはコロンビア大学のGreenleeらが行なった第Ⅱ相試験で、3ヶ月以上アロマターゼ阻害剤を内服した後に関節のこわばりや痛みを発症した患者さんに対してグルコサミン1500mg/日とコンドロイチン1200mg/日を投与するというものです。有効性の評価は、WOMAC index、M-SACRAH、BPI-SFという方法で12週ごとに解析しました。最終的に解析できたのは25人と少ないため、信頼性は不十分ですが、膝・股関節痛とこわばりの改善が52%(WOMACで2P以上改善)、手の疼痛の改善が64%(M-SACRAHで2P以上改善)という結果でした。全体で見ると患者さんの80%は、WOMACまたはM-SACRAHにおいて手、または膝の症状の改善がみられていました。

この研究は興味深いですが、まだ第Ⅱ相試験です。関節痛などの症状は非常にプラセボ効果が大きいと考えられますので、今後プラセボと比較した第Ⅲ相試験での評価が必要です。ただプラセボ効果でもこれだけ改善するのであれば、この治療による副作用や費用の問題がないのであれば使用を考慮しても良いのかもしれませんが…。


一方で昨年、「グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない」という研究結果も報告されています(スイス・ベルン大学社会・予防医療研究所 Simon Wandelら BMJ誌2010年10月2日号)。これによれば、ネットワーク・メタ解析によって10試験・3,803例を調査した結果、プラセボとの比較において、「グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もない」という結論だったということです。

アロマターゼ阻害剤の副作用による関節症状に対する効果は、一般の関節痛に対する効果とは違うのかもしれませんが、この解析結果を考慮すると、Greenleeらの報告は、安易に「グルコサミン+コンドロイチンがアロマターゼ阻害剤による関節症状に効果がある」と考えるのではなく、慎重に評価すべきであるということは言えるかもしれませんね。

0 件のコメント: