ベバシズマブ(商品名 アバスチン)に関する情報はここでも何度か取り上げてきました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/10/avastin.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/06/asco-2010.html)。特に米国のFDAから承認取り消しの決定が下されたニュースが流れてからは(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/07/blog-post_22.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2010/12/fda.html)、日本での承認は困難だと思っていました。
ところが、先日ベバシズマブの「手術不能又は再発乳癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を厚生労働省から取得したと販売元の中外製薬が発表したのです。
FDAでの判断は、全生存期間(OS)を改善できなかったというフェーズ3の結果に基づくものです。今回の日本での申請は、国内で実施されたフェーズ2と海外で実施されたフェーズ3の結果に基づいて中外製薬が厚生労働省に対して行なっていたものです。つまり、FDAはフェーズ3で全生存期間(OS)を改善しなかった点を重視して認可を取り消し、日本では無増悪生存期間(PFS)の延長を示した結果と国内での安全性と有効性の試験結果を重視したということなのでしょうか?臨床試験の有効性の評価をどちらで行なうかは非常に難しい問題です。この点に関してはこちらの記述がわかりやすいと思います。→http://blog.goo.ne.jp/cancerit_tips/e/1fba8db2e347f13e42b1ad109835a0b5
以下に今回追加された効能・効果・用法・容量を示します。
<手術不能又は再発乳癌>
パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマブとして1回10mg/kgを点滴静脈内注射する。投与間隔は2週間以上とする。
欧州と同様に臨床試験で行なわれたパクリタキセルとの併用に限って認可されたということになりますが、併用薬を限定されるとなかなか使いにくくなってしまいます(すでにパクリタキセルを使用している場合も多いですので)。高額な薬剤でもありますし、重篤な副作用の問題もあります(高血圧、消化管出血・穿孔など)。実際に使用できる患者さんはかなり限定されるかもしれません。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2011年9月30日金曜日
2011年9月27日火曜日
"Durch Wahrheit zur Klarheit"
いきなりこんなドイツ語を書いてもなんのことかわかりませんよね?これは私が東京のG病院での研修を終えた時に、恩師のK先生から色紙に書いていただいたお言葉です。たまたま部屋を整理していて戸棚に飾っていたのを思い出しました。
実は今でもこの言葉の意味を完全には理解できていません。
Durch :〜を通して
Wahrheit :真実
zur:〜への
Klarheit :明快さ
ネットで調べてみてもドイツ語のサイトしか引っかかってきません。なにかの格言のようですが…。
エキサイト翻訳で直訳すると「明快さへの真実を通して」となりましたが今ひとつ意味不明です。自分勝手に解釈したのは、「目の前の患者さんたちから得た経験をもとに病態の真理を追究しなさい」という感じですが、正しいかどうかは自信ありません。もしわかる方がいらっしゃったら教えて下さい。
G病院での研修中に(もう15年も前になりますが…)私はよく「乳腺部屋」と呼ばれていたデータ管理をしていた部屋に調べものをするために訪れていました。そこのパソコンには10000例を超える乳がん患者さんのデータが入っていて医療秘書さんがデータ管理をしていました。ごく普通の一般病院から来た私にとってそれは宝物のようなデータでした。普通の病院では何も物事を語れないような珍しい症例や事象もここでは1施設で集めることができます。
いま自分の病院にいるとそのデータがうらやましくなります。きっと日常診療で疑問に思ったことの答えの多くはそのデータから導き出せることでしょう。でも数が少なくても想像力は働かせることはできます。患者さん1例1例を大切にして、そこで得られた経験から推理を働かせ、真理に近づくような努力をしていかなければならないと思っています。それがいつかG病院のデータなどで証明される日が来ればきっとK先生からいただいた言葉の意味に近づけるのだと信じています。
実は今でもこの言葉の意味を完全には理解できていません。
Durch :〜を通して
Wahrheit :真実
zur:〜への
Klarheit :明快さ
ネットで調べてみてもドイツ語のサイトしか引っかかってきません。なにかの格言のようですが…。
エキサイト翻訳で直訳すると「明快さへの真実を通して」となりましたが今ひとつ意味不明です。自分勝手に解釈したのは、「目の前の患者さんたちから得た経験をもとに病態の真理を追究しなさい」という感じですが、正しいかどうかは自信ありません。もしわかる方がいらっしゃったら教えて下さい。
G病院での研修中に(もう15年も前になりますが…)私はよく「乳腺部屋」と呼ばれていたデータ管理をしていた部屋に調べものをするために訪れていました。そこのパソコンには10000例を超える乳がん患者さんのデータが入っていて医療秘書さんがデータ管理をしていました。ごく普通の一般病院から来た私にとってそれは宝物のようなデータでした。普通の病院では何も物事を語れないような珍しい症例や事象もここでは1施設で集めることができます。
いま自分の病院にいるとそのデータがうらやましくなります。きっと日常診療で疑問に思ったことの答えの多くはそのデータから導き出せることでしょう。でも数が少なくても想像力は働かせることはできます。患者さん1例1例を大切にして、そこで得られた経験から推理を働かせ、真理に近づくような努力をしていかなければならないと思っています。それがいつかG病院のデータなどで証明される日が来ればきっとK先生からいただいた言葉の意味に近づけるのだと信じています。
2011年9月26日月曜日
乳がん検診受診率が増加!〜今後の課題は?
NPO法人乳房健康研究会(霞富士雄理事長)がこのたび発表した乳がん検診に関する意識調査の結果によると、40歳代~60歳代の女性における、乳がん検診無料クーポン対象者のマンモグラフィ検査の受診率が45.7%だったそうです(今年6月の調査)。以前発表されていた無料クーポン対象者の受診率は30%台だったと記憶していますので、ようやく定着してきたようです。厚労省の目標値(50%)までもう少しです。
ただまだ問題はあります。今回の調査によると無料クーポンの対象者でない場合の乳がん検診受診率は、35.5%だそうです。私自身の経験でもクーポン券は初回の検診やしばらく中断していた患者さんを検診に向かわせる良いきっかけになっているのは事実ですが、1-2年後の乳がん検診を受けてくれるかどうかはわかりません。できるだけ次回の検診時期についてご案内するようにはしていますが、無料かどうかが受診動機に影響を及ぼす可能性は否定できません。できることなら隔年の乳がん検診をすべて無料にしてくれると良いのですが…。
それと長期的に見た課題としては、乳がん検診受診率の増加が乳がん死亡率の低下につながるかどうかということがあります。さらに言えば全死亡率の低下につながることが本来の検診の目的です。超音波検診の導入を含めて、誰もが受けやすくて、日本人に合った安全で合理的で有効な検診方法の確立が重要だと思っています。
ただまだ問題はあります。今回の調査によると無料クーポンの対象者でない場合の乳がん検診受診率は、35.5%だそうです。私自身の経験でもクーポン券は初回の検診やしばらく中断していた患者さんを検診に向かわせる良いきっかけになっているのは事実ですが、1-2年後の乳がん検診を受けてくれるかどうかはわかりません。できるだけ次回の検診時期についてご案内するようにはしていますが、無料かどうかが受診動機に影響を及ぼす可能性は否定できません。できることなら隔年の乳がん検診をすべて無料にしてくれると良いのですが…。
それと長期的に見た課題としては、乳がん検診受診率の増加が乳がん死亡率の低下につながるかどうかということがあります。さらに言えば全死亡率の低下につながることが本来の検診の目的です。超音波検診の導入を含めて、誰もが受けやすくて、日本人に合った安全で合理的で有効な検診方法の確立が重要だと思っています。
2011年9月24日土曜日
Novartis Breast Cancer Forum 2011 参加報告

今日、東京から帰ってきました。
昨日行なわれた「Novartis Breast Cancer Forum 2011〜乳がん個別化治療に向けて〜」は大変勉強になりました。と同時にあまりに分子生物学の進歩が早いため、少しでも油断しているとついていけなくなるという危機感を持ちました。
講演の内容は私が聞いていても完全に理解できない部分もあるため、メモできた中で印象に残った部分を書いてみます。
講演①「Breast cancer signal pathway and treatment strategy」(Stephen Uden氏 ノバルティスファーマ)
アロマターゼ阻害剤やハーセプチンの耐性(効果がなくなる現象)発生の機序と耐性化した乳がんに対して効果が期待される新たな分子標的(mTOR pathway、PI3K/ATK pathway、FGFR pathway、Heat Shock Protein90)についての話でした。すでに臨床試験が開始され、一定の効果がみられているということで今後に期待できそうです。
講演②「Individualization of breast cancer-Intrinsic Subtype」(Prof.Matthew J.C.Ellis Department of Medical Oncology,Washinton University)
ER陽性乳がんの個別化治療についての話でしたが、特に術前ホルモン療法におけるKi-67の変化についての話が印象的でした。通常、日本では術前治療の前に針生検で検体を採取したあとは、手術材料で調べるくらいですが、Ellis先生の施設では術前ホルモン療法中に再度針生検を行なってKi-67の変化を調べるそうです。そしてKi-67が低下していた場合は治療が奏効していると判断できるためそのまま継続する指標になるし、もし逆に増加しているようならホルモン療法の効果は期待できないと判断して化学療法への変更を考慮することができるということでした。2回目の針生検に関して患者さんの同意が得られるのか?という質問には、治療効果を患者さんも知ることができるため、かえって安心して治療を継続したり変更する決断ができるので問題ないと答えていました。
また、LH-RH agonist+AI(アロマターゼ阻害剤)のホルモン療法については、LH-RH agonistでは卵巣機能抑制が不十分なために徐々にE2レベルが上昇し、AIの効果が低下するという問題点について述べていました。このようなケースには外科的な卵巣摘除を考慮すべきであるということでした。以前からこの治療についてはここでも書いてきましたが、なかなか再発治療の実臨床で認められない理由が理解できたような気がします。
講演③「How should we implement the St.Gallen Consensus 2011 in daily practice?」(Prof.Beat Thürlimann Breast Center ,Cantonal Hospital St.Gallen)
Thürlimann先生はSt.Gallen consensus meetingの中心メンバーの一人で、この会議の意義(エビデンスが十分ではないことを討論し、合意を作っていく)について説明して下さいました。また、Adjuvant!Onlineは様々な理由(データに信頼区間がない、何年後の再発率または死亡率なのかが不明、ハーセプチンなどを使用する以前の治療に基づいたデータであることなど)からあまり信頼するべきではないとの考えを強調されていました。また、臨床試験から得られるエビデンスやガイドラインというのは平均的な患者さんに対する平均的な治療を提示するものであるので、個々の患者さんに対しては別な視点が必要であるというようなお話しをされていました。
Thürlimann先生の講演で最も印象的だったのは、スイスではOncotype Dxの保険適応の採用を却下したというお話でした。その根拠になったのは、Oncotype Dxで得られる再発リスクというのは、その腫瘍そのものの性質を現しているだけで、その患者さん個々の化学療法によるリスク低下を反映しているわけではないからだということでした。つまり、腫瘍径やリンパ節転移の程度によって患者さんの再発率は違うので、化学療法を行なった時に得られる再発率の低下の絶対値も異なります。例えば絶対値の低下が5%以上あれば化学療法をしようと考えたとしてもOncotype Dxから得られるデータからは推測することができないということです。
今回のSt.Gallenではサブタイプ別の治療方針がより明確になり、腫瘍径やリンパ節転移の程度の持つ重要性はかなり低くなったと報道されていまいましたし、ほとんどの乳腺外科医もなんとなく納得がいかなくても「そんなものなのかな…」と思っていたと思います。にも関わらず、St.Gallenの主要メンバーであるThürlimann先生の口からこのような考えを 聞くとは思いませんでした。やはり、Luminal Aであっても杓子定規に「ホルモン療法のみでいい!」というのではなく、進行度によって変化する再発リスクを考慮した上で化学療法の追加を検討しても良いのだということのようです。これが確認できたことが今回の最大の収穫だったと思います。
パネルディスカッション「個別化治療のための生物学的解析」
パネルディスカッション 「個別化治療の実践」
詳細は省略しますが、この中で「Luminal Aでリンパ節転移がある患者さん」に対してどの治療を選択するかというVotingにおいてもThürlimann先生は、「N=3ならホルモン治療のみ、N=4なら化学療法(EC×4またはTC×4)を選択する」とおっしゃっていました。
ちょっと今回は難しい話になってしまいました。ゆっくりする暇はありませんでしたが、参加できて良かったです。参加させて下さったノバルティス(株)、そして回診のために残ってくれた同僚のG先生とN先生に感謝申し上げます。
2011年9月22日木曜日
Novartis Breast Cancer Forum 2011〜乳がん個別化治療に向けて〜
明日はグランドプリンスホテル高輪でノバルティスファーマの主催の講演会があります。台風の影響で行けるかどうか心配しましたが、無事通り過ぎてくれたようです。
講演会のスケジュールは、海外からの招待講演が3題、そのあとで個別化治療についてのパネルディスカッションがあります。4時間くらいずっと座っていなければならないので持病の腰痛が悪化しないか心配です(汗)。ただ、非常に興味のあるサブタイプ分類や個別化治療、St.Gallen2011に関する内容が中心ですので、一生懸命勉強して来ようと思っています。
乳腺外科医は、臨床試験を慎重に行ないながら乳房温存手術やセンチネルリンパ節生検などを導入し、患者さんの美容や機能温存を図るとともに、後遺症を減らす努力を行なってきました。そして乳腺外科医と腫瘍内科医によって不要な化学療法を減らすべくSt.Gallenの国際会議などで個別化治療の検討を行なってきています。にもかかわらず、「外科医は必要もないのにやたらと切りたがる」「製薬会社とつるんで金儲けのために抗がん剤をやたらと使いたがる」と言う人たちが未だに多いのは残念なことです。おそらく乳腺外科医のほとんどは、「切らずに副作用のない治療で乳がんを治癒させる」ことを望んでいるはずなのです。もちろん私も常にそう思ってきました。
今回のテーマである個別化治療をもっと洗練させることができれば、患者さん個々に合った治療を選択することができるようになり、不要な治療を避けることができるようになります。まだまだ先の話ではありますが、このような努力を世界中の医師と研究者、製薬会社が目指していることだけは確かだと思います(中には利害関係しか考えていない人もいるかもしれませんが、企業である以上、一定の利益を求めるのはある意味当然だと私は思っています)。
講演会のスケジュールは、海外からの招待講演が3題、そのあとで個別化治療についてのパネルディスカッションがあります。4時間くらいずっと座っていなければならないので持病の腰痛が悪化しないか心配です(汗)。ただ、非常に興味のあるサブタイプ分類や個別化治療、St.Gallen2011に関する内容が中心ですので、一生懸命勉強して来ようと思っています。
乳腺外科医は、臨床試験を慎重に行ないながら乳房温存手術やセンチネルリンパ節生検などを導入し、患者さんの美容や機能温存を図るとともに、後遺症を減らす努力を行なってきました。そして乳腺外科医と腫瘍内科医によって不要な化学療法を減らすべくSt.Gallenの国際会議などで個別化治療の検討を行なってきています。にもかかわらず、「外科医は必要もないのにやたらと切りたがる」「製薬会社とつるんで金儲けのために抗がん剤をやたらと使いたがる」と言う人たちが未だに多いのは残念なことです。おそらく乳腺外科医のほとんどは、「切らずに副作用のない治療で乳がんを治癒させる」ことを望んでいるはずなのです。もちろん私も常にそう思ってきました。
今回のテーマである個別化治療をもっと洗練させることができれば、患者さん個々に合った治療を選択することができるようになり、不要な治療を避けることができるようになります。まだまだ先の話ではありますが、このような努力を世界中の医師と研究者、製薬会社が目指していることだけは確かだと思います(中には利害関係しか考えていない人もいるかもしれませんが、企業である以上、一定の利益を求めるのはある意味当然だと私は思っています)。
2011年9月19日月曜日
乳腺センター開設〜もうすぐ半年経過〜
10/1に病院診療管理者の合宿があります。ここでセンター化半年の総括をすることになりました。私はその日は乳がん患者会の温泉旅行と重なっていて出席できないため、文書報告とさせてもらうことになりました。先日その書類を作成してようやく提出したところです。
4月からのデータを分析してみると、手術件数は昨年同期の1.8倍に増加していました。市内の他の施設の先生方にお聞きしてみるとどこも増えているようですので、特別私たちの病院に患者さんが流れてきているわけではないようですが驚くほどの増加です。入院件数も収益も予算を上回っており、まずは良いスタートを切れたようです。
最近目立つのは、進行再発乳がん患者さんの増加です。この影響で化学療法やその副作用、病状悪化などによる入院が増えたため、手術患者さんのベッド確保が困難になってきています。今はなんとか他の 病棟のベッドを借りたりしてしのいでいますが、そろそろ根本的な解決策を考えなければなりません。
乳腺センターとしての医療活動は、ピンクリボン in SAPPOROやWith You Hokkaidoへの参加(これは毎年ですが)、検診センターへの訪問、乳癌学会への看護師の初めての参加と乳腺外科医3人の演題発表などがあり、10月以降も患者会温泉旅行、J.M.S(J.POSHが呼びかけた日曜日に行なう乳がん検診)、乳癌検診学会での超音波技師3人の演題発表、地域住民への乳がん啓蒙講演会、乳がん患者会講演会などを行なう予定になっています。
さて来年は今年乳腺外科医の仲間入りしてくれたN先生が研修に出ることになりそうです。今のペースで増加すると手術も病棟管理もかなり厳しい状況になるかもしれません。最近の症例の増加を見ているとうれしいですがちょっと心配になります(汗)
4月からのデータを分析してみると、手術件数は昨年同期の1.8倍に増加していました。市内の他の施設の先生方にお聞きしてみるとどこも増えているようですので、特別私たちの病院に患者さんが流れてきているわけではないようですが驚くほどの増加です。入院件数も収益も予算を上回っており、まずは良いスタートを切れたようです。
最近目立つのは、進行再発乳がん患者さんの増加です。この影響で化学療法やその副作用、病状悪化などによる入院が増えたため、手術患者さんのベッド確保が困難になってきています。今はなんとか他の 病棟のベッドを借りたりしてしのいでいますが、そろそろ根本的な解決策を考えなければなりません。
乳腺センターとしての医療活動は、ピンクリボン in SAPPOROやWith You Hokkaidoへの参加(これは毎年ですが)、検診センターへの訪問、乳癌学会への看護師の初めての参加と乳腺外科医3人の演題発表などがあり、10月以降も患者会温泉旅行、J.M.S(J.POSHが呼びかけた日曜日に行なう乳がん検診)、乳癌検診学会での超音波技師3人の演題発表、地域住民への乳がん啓蒙講演会、乳がん患者会講演会などを行なう予定になっています。
さて来年は今年乳腺外科医の仲間入りしてくれたN先生が研修に出ることになりそうです。今のペースで増加すると手術も病棟管理もかなり厳しい状況になるかもしれません。最近の症例の増加を見ているとうれしいですがちょっと心配になります(汗)
2011年9月17日土曜日
無料低額診療制度について
今日もこのブログに医療費が払えなくて通院が困難という方からのご相談の書き込みがありました。
失業、就職困難、離婚、などをきっかけに経済的に困難となり、無保険になったために病院にもかかれない方が増加しているように感じています。このような方ががんになってしまうと、検査、治療費が高額ですので非常に厳しい状況に陥ってしまいます。
日本国憲法第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあり、国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないことになっています。しかし、黙っていてはこのような病院にかかりたくてもかかれないような生活困窮者に国が自ら手を差し伸べてくれることはありません。
無料低額診療制度とは、社会福祉法人や公益法人などに関する法人税法と社会福祉法などに基づいた、生活困窮者でもきちんと医療を受けられるようにするための救済制度なのですが、知らない方は非常に多いと思います。以前、新聞に取り上げられたことがありますが、そのような時くらいしかこの制度を知るチャンスはないのかもしれません。
概要を以下に示します。
<無料低額診療制度>
①内容
低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行なう事業で、大きく分けて二つの法律に基づいています。一つは社会福祉法人や日本赤十字社、済生会、旧民法34条に定める公益法人などが、法人税法の基準に基づいて実施するもので、もう一つは社会福祉法 (昭和26年法律第45号)に基づく第二種社会福祉事業として実施するものです。
②対象
「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者(厚生労働省)。
適応基準は、病院によって異なります。「全額免除は、1ヶ月の収入が生活保護基準のおおむね120%以下、一部免除が140%以下」などです。
③適応期間
これも病院や自治体によって違うようです。1回のみの治療ですむような軽い症状にしか適用しない東京都の某区のようなところから、無料診療の場合は、健康保険加入または生活保護開始までの原則1ヶ月、最大3ヶ月(一部負担の全額減免と一部免除は6ヶ月)などを基準にしている病院まで幅がありますので事前に確認する必要があります。いずれにしてもこの制度は、生活が改善するまでの一時的な措置であることが原則です。
④制度を利用できる病院の条件
第二種社会福祉事業に基づいてこの制度を行なう場合には、都道府県知事に届け出を出して認可を得る必要があります。認可を受けるための条件として、生活保護を受けている患者と無料または10%以上の減免を受けた患者が全患者の1割以上などの基準が設けられていますが、厚生労働省は「都道府県の状況を勘案して判断する」としています。更に、医療機関には、(1)生計困難者を対象とする診療費の減免方法を定めて、これを明示すること (2)医療上、生活上の相談に応ずるために医療ソーシャル・ワーカーを置くこと (3)生計困難者を対象として定期的に無料の健康相談、保健教育等を行うことなどいくつかの条件が義務付けられています。
どの病院でこの制度の利用が可能かを知るためには、自治体の役所に問い合わせをするのが良いと思います。とりあえず調べるてみるのには、ネット検索も便利です。「自治体名(札幌市など)」と「無料低額診療制度」で検索してみて下さい。
いま現在、私の外来に通院中の患者さんの中にもこの制度を利用されている方が3人ほどいらっしゃいます。原則的な適用期間はありますが、実際は働いても働いても生活していくのがやっとで、この制度を継続している方もいらっしゃいます。病気や介護などで働くことができない、働きたくて努力していても職が見つからない、職が見つかっても収入が少なくて保険料も支払うことができない、という人々には何の罪もありません。憲法25条を遵守するために、国と自治体はもっとこのような人々に目を向けて欲しいと思っています。
失業、就職困難、離婚、などをきっかけに経済的に困難となり、無保険になったために病院にもかかれない方が増加しているように感じています。このような方ががんになってしまうと、検査、治療費が高額ですので非常に厳しい状況に陥ってしまいます。
日本国憲法第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあり、国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないことになっています。しかし、黙っていてはこのような病院にかかりたくてもかかれないような生活困窮者に国が自ら手を差し伸べてくれることはありません。
無料低額診療制度とは、社会福祉法人や公益法人などに関する法人税法と社会福祉法などに基づいた、生活困窮者でもきちんと医療を受けられるようにするための救済制度なのですが、知らない方は非常に多いと思います。以前、新聞に取り上げられたことがありますが、そのような時くらいしかこの制度を知るチャンスはないのかもしれません。
概要を以下に示します。
<無料低額診療制度>
①内容
低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行なう事業で、大きく分けて二つの法律に基づいています。一つは社会福祉法人や日本赤十字社、済生会、旧民法34条に定める公益法人などが、法人税法の基準に基づいて実施するもので、もう一つは社会福祉法 (昭和26年法律第45号)に基づく第二種社会福祉事業として実施するものです。
②対象
「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者(厚生労働省)。
適応基準は、病院によって異なります。「全額免除は、1ヶ月の収入が生活保護基準のおおむね120%以下、一部免除が140%以下」などです。
③適応期間
これも病院や自治体によって違うようです。1回のみの治療ですむような軽い症状にしか適用しない東京都の某区のようなところから、無料診療の場合は、健康保険加入または生活保護開始までの原則1ヶ月、最大3ヶ月(一部負担の全額減免と一部免除は6ヶ月)などを基準にしている病院まで幅がありますので事前に確認する必要があります。いずれにしてもこの制度は、生活が改善するまでの一時的な措置であることが原則です。
④制度を利用できる病院の条件
第二種社会福祉事業に基づいてこの制度を行なう場合には、都道府県知事に届け出を出して認可を得る必要があります。認可を受けるための条件として、生活保護を受けている患者と無料または10%以上の減免を受けた患者が全患者の1割以上などの基準が設けられていますが、厚生労働省は「都道府県の状況を勘案して判断する」としています。更に、医療機関には、(1)生計困難者を対象とする診療費の減免方法を定めて、これを明示すること (2)医療上、生活上の相談に応ずるために医療ソーシャル・ワーカーを置くこと (3)生計困難者を対象として定期的に無料の健康相談、保健教育等を行うことなどいくつかの条件が義務付けられています。
どの病院でこの制度の利用が可能かを知るためには、自治体の役所に問い合わせをするのが良いと思います。とりあえず調べるてみるのには、ネット検索も便利です。「自治体名(札幌市など)」と「無料低額診療制度」で検索してみて下さい。
いま現在、私の外来に通院中の患者さんの中にもこの制度を利用されている方が3人ほどいらっしゃいます。原則的な適用期間はありますが、実際は働いても働いても生活していくのがやっとで、この制度を継続している方もいらっしゃいます。病気や介護などで働くことができない、働きたくて努力していても職が見つからない、職が見つかっても収入が少なくて保険料も支払うことができない、という人々には何の罪もありません。憲法25条を遵守するために、国と自治体はもっとこのような人々に目を向けて欲しいと思っています。
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