2016年8月28日日曜日

第14回日本乳癌学会北海道地方会

昨日は乳癌学会の地方会でした。

朝9時から夕方5時までびっしりだったのでちょっと疲れましたが、なかなか興味深い発表もあり勉強になりました。私も3-4回質問もしましたが、活発な討議が行なわれていました。

教育セミナーやランチョンセミナー、特別講演、コーヒーブレイクセミナーも知識の整理に役立ったと思います。教育セミナーでは質問したかったのですが、時間の関係で遠慮してしまいました。この症例は、胸骨傍リンパ節と鎖骨上リンパ節に転移があった症例で、術前化学療法で完全寛解が得られた症例だったのですが、腋窩郭清を行なうことに対して異論は出ませんでした。もちろん私も異論があるわけではないのですが、よく考えてみると腋窩リンパ節転移だけであればこれで良いのですが、いくら腋窩リンパ節郭清をしても胸骨傍リンパ節と鎖骨上リンパ節の転移があったリンパ節は残るわけですし、術後に放射線治療を行なう予定なのですから腋窩郭清もせずに全部放射線治療でも良いという考え方もありうるのかどうかを聞いてみたかったのです。あとでうちの乳腺センター内でカンファレンスをしてみたいと思っています。

私たちの病院からは、G先生と後期研修医のNS先生が演題を発表しました(2人とも一番最後のセッション)。私はNS先生のサポート、N先生は出産から復帰後間もないこともあり今回は発表を見送りました。2人の発表自体は珍しい症例報告ということもあり特に問題なく終了しました。



9月は院内のCVポートの学習会、10月はHS病院のO先生に頼まれた市民講座、11月は乳腺症例検討会の100回記念講演会があります。その他にも製薬会社からの社内講演が2件予定されています。12月中には来年の乳癌学会の演題締め切りがある予定です。まだ何も準備していません(汗)。そのそろ取りかかろうと思っています。

2016年8月21日日曜日

「第13回 With You Hokkaido~あなたとブレストケアを考える会~」無事終了!

昨日、札幌医大の大講堂で「第13回 With You Hokkaido~あなたとブレストケアを考える会~」が開催されました。



開場時間直前から台風の影響で大雨になってしまい、欠席される人が多いのではないかと心配しましたが、昨年より多くの方に集まっていただくことができました。

今年もまず最初にグループワークが行なわれました。ここ数年は再発治療や緩和治療のグループが続いたために、3年続けて同じ患者さんが私のグループに入ってしまって申し訳ないと思っていましたので、グループ担当を決める際に今年はなるべく重複しないようにH病院のK先生に配慮していただきました。ということで今年は”治療中の仕事や経済的な悩み”のグループを担当することになりました。

医療従事者は私の病院の医療福祉課の課長のFさん、そして今は小樽の病院で緩和ケア認定看護師をしていますが17年くらい前に私が勤務していた病院で一緒に働いていた看護師のIさんと私の3人でした。患者さんは、がん患者歴の長い患者さん1人(私の患者さんでした…汗)と乳がんと診断、治療を受けたばかりの患者さん3人の計4人でした。人数的にはちょうど良いくらいで、比較的バランスよく皆さんに話をしていただけたのではないかと思います。満足していただけたらうれしいのですが…。

そのあとは大講堂に戻って私の恩師の元G病院のK先生の開会のご挨拶に引き続き、特別講演が2題。S医大のS先生による”乳がん治療最新情報”は、新しい治療薬についてだけではなく、がん相談業務や遺伝子診断、ネットの活用法などのお話も含めて多岐にわたる内容でしたがわかりやすいお話だったと思います。乳がん体験者のTさんによる”乳がんになっても私らしく行きたい”のご講演では、結婚したばかりで乳がんになったショックやご家族との関わり、そして職場にどのように伝えて理解してもらい乗り切ったかなどの貴重な体験談をお聞きすることができました。

続いて行なわれたのは”聞かせて!あなたの治療と生活・仕事両立方法”というテーマのパネルディスカッションでした。



パネルディスカッサーは、Tさんと、同じ乳がん体験者のSさん、私の病院のFさんと私の4人で、司会はSS病院のO先生でした。この間、O先生と何度もメールのやり取りをしたり、メンバーで打ち合わせをしたりしてきたのですが、私自身、得意と言える分野の内容ではありませんでしたし、何度打ち合わせをしてもスライドのチェックをしても実際は当日になってみないとわからない感じでしたので始まるまでとても不安でした。でもさすがO先生、見事な司会ぶりでスムーズに進んだのではないかと思います。体験者2人のお話は、きっと集まった人々の心に響いたと思いますし、無料低額診療制度というシステムがあることをお知らせできたことは、もしかしたら経済的に困難を抱えている患者さん(患者さんや医療関係者の知り合いのがん患者さんも含めて)にとって役に立つ情報になったのではないかと思います。

その後は乳がん患者会の活動報告と各地のWith Youの報告があり、閉会となりました。毎年K先生を始め、本州から手弁当(無報酬)でこの会を手伝うためにスタッフが北海道に来て下さっています。悪天候の中なんとか到着できましたが、無事帰ることはできたのでしょうか?ずっと天候が悪いのでちょっと心配です。

今年の反省も踏まえて、来年はさらに多くの方々に集まっていただけるような会になることを願っています。

2016年8月10日水曜日

黒松内での講演

先週の金曜日に黒松内に行ってきました。

黒松内に行ってきた経過はちょっと複雑ですが、今回は町の保健師さんたちとの懇談と乳がんについての講演が目的でした。そもそものきっかけは以前ここでも書いたと思いますが、黒松内には対がん協会が出張検診に行っていないということを知って、私たちの診療所がある地域ということもあってなんとか私たちで検診にいけないものかと検討したことがきっかけです。結局民間の検診センターがすでにマンモグラフィ検診に来ていることが判明して、私たちがマンモグラフィ検診に行く計画は頓挫したのですが、超音波検診の需要はないのか、乳腺外科の特診の必要性はないのかを探ることも視野にいれての出張でした。

金曜の午前外来を終えてから事務次長と一緒に黒松内(札幌と函館の中間くらいにあります)に向かい、到着してからはまず黒松内町の保健福祉センターの職員と診療所の職員を交えての懇談が行なわれました。人口減少が深刻な地域ですので超音波検診の必要性は微妙ではありますが、検診センターのマンモグラフィ検診で要精検になった方への精査や乳がん術後の患者さんに対する医療相談、そして老人保健施設で働く職員などに対する超音波検診などでお役に立てる可能性はあるのではないかという手応えは感じました。

今年度は町の補助を受けての検診は困難ですが、診療所の特診としてまずは一度行ってこようと考えています。そこで実績を作り、必要性があるとなれば本格的に黒松内町の乳腺診療へのアプローチを強めようと思っています。

懇談が終わってからは、町の職員や診療所の職員、地域の住民を対象に乳がんについての講演をしてきました。乳がんの現状、診断から最新の治療、そして乳がん検診の重要性などについて約1時間お話をしてきました。地元の方の参加が少なかったのは残念ですが、30人弱くらいの人にお話を聞いていただきました。

終了後は宿泊先の旅館で、たまたま翌日のリウマチ特診に来ていた院長と診療所の職員、7人で会食をしました。ちょうど初物のアユが取れた日でしたのでアユの塩焼きやヤマメの天ぷらなど、美味しい食事をいただきながら親睦を深めました。

北海道には、過疎の進む市町村がたくさんあります。日常の診療も検診もままならない医療過疎地です。そのなかのいくつかには私たちの医療機関の診療所があります。このような地域に少しでも乳腺診療が行き届くようにしていくのがこれからの私の役目だと思っています。まずは年内に黒松内での特診を行ないたいと思っています。

2016年7月31日日曜日

「ピンクリボン in SAPPORO 2016 ピンクリボンロード」終了!

今日は「ピンクリボン in SAPPORO 2016 ピンクリボンロード」が行なわれました。朝から曇り空で、時折小雨がパラつくあいにくの天気ではありましたが、本降りになることなく、無事予定通り開催されました。

天気がいま一つでしたので、あまり人出が多くないのではないかと心配したのですが、思った以上に人通りが多かったような気がします。私たちの病院では例年通りブースを設けて触診モデルやエコー検査のデモ機を使った啓発活動をしながら、手分けをして沿道で乳がん検診の啓発パンフの配布を行ないました。



今年は医師、エコー技師、病棟看護師、健診課・医事課・管理部の事務、合わせて13人が参加しました。初めての職員も3人いましたが、積極的に活動をしてくれたので私自身はあまり手伝わずにすみました(笑)。

ステージでは、ドラムサークル、フラダンス、玉入れ大会、コーラスなどのイベントが行われ、多くの観客の方々が参加して下さいました。東区のキャラクターのタッピーも”乳がん検診を受けよう!”というアピールをしながら参加していました。2年連続の参加ですが、今年も子供たちには大人気でした(笑)。



病院で用意した乳がん検診の啓発パンフ100部は早々に全て配布したので、ピンクリボン in SAPPOROのパンフもたくさん配布することができました。この活動に触れた方から検診の輪が大きく広がることを期待したいと思います。

今日は病院の患者さんたちや出入りしている製薬会社の方も応援に来て下さいました。裏方のスタッフさんも万全の準備をして下さり、無事終了することができました。来年はさらに工夫を加えながらより良い乳がん啓発活動を行っていきたいと考えています。

2016年7月25日月曜日

もうすぐピンクリボンロード!

以前ここで取り上げましたが、今度の日曜日(7/31)に札幌の大通で「ピンクリボン in SAPPORO 2016 ピンクリボンロード」が開催されます。詳細はピンクリボン in SAPPOROのHP(http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/)をご覧下さい。なお、多少の雨なら行ないますが、大雨の場合は中止となります。

今日はその最終打ち合わせがありました。今年の目玉は”玉入れ大会”です。是非大通に来られる方はご参加下さい。出場者にはけっこうもらうとうれしい商品が当たるようです!

今回も私たちスタッフはピンクのTシャツで参加します。札幌西ロータリークラブの皆さん、いつもご寄付いただきありがとうございます!

そして今年もう一つの注目は、ピンクリボン in SAPPORO特製のピンクリボンバッジがついにお披露目になることです。今日見てきましたが、なかなか完成度が高く、おしゃれなデザインになっています。販売価格は当日まで公表できませんが、値段以上の価値はあると思います。是非ご覧になってみて下さい。

今のところ当日の天気は雨ではないようです。好天に恵まれると良いのですが…。ただあまり熱いと私たちの施設恒例の着ぐるみ(タッピー)の中の人(研修医のY先生)が熱中症になってしまいますのでほどほどが良いですね!

2016年7月24日日曜日

乳頭温存皮下乳腺全摘術(NSM)は乳腺全摘だから局所再発しない?

今年の乳癌学会で、「乳房温存術か乳房再建術か?」というセッションがありました。

このセッションの中で、乳頭温存皮下乳腺全摘術(以下NSM)による一次一期再建は、温存術+放射線治療に比べ、”局所再発がない”というのが利点の1つだというお話がありました。

たしかに乳腺を”全摘”していれば、早期がんであれば局所再発はほとんどありません。しかし、実際に行なわれているNSMのほとんどは、真の”乳腺全摘術”ではありません。乳がんのオンコロジーをきちんと理解している乳腺外科医であったとしても、乳頭・乳輪直下の乳腺組織はわずかに残す(乳頭・乳輪の血流を保つため)のが基本であり、また通常の乳房切除術より皮下組織を厚めに残すことが多いですのでここでも乳腺がわずかに残る可能性があります。それでもほとんどの乳腺を切除していますので局所再発率はかなり低いとは思いますが、厳密に言うと”乳腺全摘”ではありませんので局所再発率は0%にはならないのです。

それ以上に問題だと思うのは、少なくともいくつかの施設で”皮下乳腺全摘術”と言いながらかなりの乳腺を残していることです。なぜそう思うのかと言いますと、北海道から本州まで行ってこの手術を受けてから戻ってきた患者さんを2人診療したことがあるのですが、2人とも切除標本の病理写真を見る限り全摘したとは到底思えないような切除乳腺だったからです。この標本ではほとんど部分切除(温存手術を少し大きくしたような)にしか見えないような感じで明らかに乳腺が残存しているはずです。これが全摘か…とびっくりしました。

この患者さんたちは、1人は”浸潤巣で断端陽性”だったためこちらで放射線治療を受けるように言われて戻ってきました。もう1人も乳管内進展で断端陽性だったため追加切除を行なっていましたが本当にそれで完全切除になったかどうかは不明です。いずれの施設もこの術式を数多く行なっているようですので、これで善しと考える流れが一部にあるのだと思います。ということは同じような考えを持った施設が他にもあるのかもしれません。もちろんこれは例外的な施設での手術であり、ほとんどの施設ではがんを残さないような配慮と説明をした上できちんとした手術をしていると信じています。

整容性を考えたら皮下組織は厚く残す方が良いに決まっています。しかし、あくまでもきちんとがんを切除することが前提のはずです。乳房温存術では完全切除できたとしても、残存乳腺からの多発がんの予防のために放射線治療を追加することが原則となっています。それなのにNSMで乳腺が多量に残存している場合には放射線治療は必要ないのでしょうか?にもかかわらず局所再発はないと断言できるのでしょうか?まあ整容性を重視するからNSMをするわけですので、全例放射線治療を加えたら整容性を損なうことになりますから明らかな遺残がない限り照射を併用しないのはある意味当然です。ただ乳腺全摘だから局所再発をしないという考え方はこの術式においては明らかな間違いであり、慎重なフォローが必要だということを執刀医は理解し、患者さんにも説明すべきだと思います。

根治性と整容性を両立させるのはなかなか難しいことです。私が診療した患者さんたちがきわめて稀な症例であることを願うばかりです。

2016年6月21日火曜日

「第13回 With You Hokkaido~あなたとブレストケアを考える会~」開催要綱

先日事務局から、「第13回 With You Hokkaido~あなたとブレストケアを考える会~」のポスターとチラシが病院に届きました。
さっそく関係部署に置いてもらうことにしました。

詳細は札幌医大のHPに掲載されています(http://web.sapmed.ac.jp/jp/news/event/03bqho000026jaek.html)。申し込み方法も書いてありますのでご参照下さい。



今回は少し楽をしたかったのですが、なかなかそううまくいきません(汗)。しかも今回の内容は個人的には苦手な部類に関するテーマですのでどうなることやら…。せっかくの機会ですのでこれから綿密に打ち合わせをして良い内容にしていきたいと思っています。でも来年こそは気楽に参加したいものです(笑)。

8/20、多くの方に来ていただけることを願っています!