乳癌の術後補助療法は、ホルモンレセプター(ER)、HER2が陽性か陰性かによって、治療方針がおおむね決定されます。
つまり、
①ER陽性なら、ホルモン療法を行なう。抗がん剤は他の因子をみて併用するかどうか決定する。
②HER2陽性ならハーセプチン+抗がん剤を行なう。
③ともに陰性(トリプルネガティブ)なら抗がん剤は必ず必要(ただし抗がん剤に抵抗性のタイプには、有効な治療がほとんどない)。
というのが原則です。
TNにはバイオマーカーがないため、ホルモン剤やハーセプチンのような、その癌のタイプに特有な治療薬というのがない(だから抗がん剤に頼らざるを得ない)、ということが治療を難しくさせていました。
ところが今回ワシントン大学のGuojun教授らの研究で、TNで高頻度に発現しているバイオマーカーが確認されたという内容がProceedings of the National Academy of Sciencesにおいて報告されたのです。
この報告によると発見されたバイオマーカーは、LDL受容体関連タンパク質(LPL)6というものだそうです。このLPL6遺伝子が過剰発現しているタイプの乳癌は予後不良であり、調べてみるとTNに高頻度で発現していたということです。
もしこれが事実であり、この遺伝子の働きをブロックするような治療薬が開発できれば、予後不良だったHER2陽性乳癌がハーセプチンの登場で著明に治療成績が改善したように、TNのかなりの患者さんの予後が改善できる期待が持てます。
最近の分子標的薬の開発速度は早くなってきています。
近い将来、このような新しい分子標的薬が開発され、TNが治療に難渋する乳癌ではなくなる時代が来るに違いありません。
0 件のコメント:
コメントを投稿