2011年3月3日木曜日

Paget病について



Paget(パジェット)病は、1874年に英国の外科医Sir James Pagetが報告した比較的まれなタイプの乳がんです。乳がん全体の約0.5%を占めます。

その特徴は、
①乳頭(から乳輪)にびらん(ただれ)を呈する
②明らかな乳房内の腫瘤がない
③ほとんどが非浸潤がんで予後は良好
④比較的高齢者に多い
というものです。

病理学的な特徴は、乳管から乳頭の表皮内に進展したPaget細胞という大型のがん細胞がみられることです。がん細胞は乳管内にも広がり、時に乳管外にも浸潤しますが軽度のものだけを”Paget病”と呼びます。一方、浸潤がんが乳頭まで乳管内進展してびらんを呈したものは”Pagetoidがん”と呼びます。

Paget病の進行は一般的に遅く、病変の表皮内の進展速度は1年間に半径3.6mmと言われています。私たちの病院でもかなり長い経過で、広範囲な病変を呈した(乳輪を超えていました)Paget病の症例を経験しましたが、この症例でも浸潤は認めませんでした。

Paget病の治療は以前は単純乳房切除術で良いとされていたようですが、微小浸潤を伴うことがあるため現在ではセンチネルリンパ節生検を併用した乳房切除が標準術式となります。病変が限局している場合には、乳頭乳輪を含めた乳房温存術+放射線治療を行なう場合もありますが、変形しやすいため適応は慎重に判断する必要があります。以前、研修中の病院で温存手術をトライした患者さんがいらっしゃいましたが、残念ながら広範な乳管内進展があったため、再手術となりました。形成外科がある場合には、乳房切除+同時再建も考えて良いと思います。

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