2012年11月21日水曜日

乳癌の治療最新情報34 TDM-1

以前にもご紹介しましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/18adc.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/10/adc.html)、トラスツズマブエムタンシン(TDM-1)の臨床試験の結果についての続報が届きました。

トラスツズマブ(商品名 ハーセプチン)は、HER2陽性乳がんに対してタキサン系抗がん剤と併用するのが第1選択ですが、この治療に抵抗性のケース(もしくは治療後に再発した場合)では、トラスツズマブにビノレルビン(商品名 ナベルビン)を組み合わせるか、ラパチニブ(商品名 タイケルブ)+カペシタビン(商品名 ゼローダ)を投与するかが一般的な次の治療法です。しかし、なかなか十分な効果を得られない場合も多く、ラパチニブは他剤との併用は認めていないこと、トラスツズマブとその他の抗がん剤との組み合わせについては十分なデータはないことから、手探りで治療を行なわざるを得ないのが現状です。

TDM-1は、抗体医薬品トラスツズマブと抗がん剤のDM1が結合した抗体薬物複合体(ADC)です。今回、カナダのEMILIA試験グループによるTDM-1の有効性と安全性を検討した第3相無作為化試験(国際多施設共同無作為化オープンラベル試験)の結果が、NEJM誌2012年11月8日号(オンライン版2012年10月1日号)で発表されました(http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1209124)。概要は以下の通りです。


<EMILIA試験>

対象:2009年2月~2011年10月に、26ヵ国213施設から被験者を登録。トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者991例を対象とし、TDM-1群とラパチニブ+カペシタビン群に無作為に割り付けた。

方法:主要エンドポイントを独立審査委員会が評価した無増悪生存期間、全生存期間、安全性、副次エンドポイントを試験担当医が評価した無増悪生存期間、客観的な奏効率、症状増悪までの期間とし、全生存期間中の中間解析は2回行った。

結果:
〜主要エンドポイント〜
①無増悪生存期間中央値 DM-1群 9.6ヵ月 vs ラパチニブ+カペシタビン群 6.4ヵ月(TDM-1群の増悪・全死因死亡ハザード比は0.65[95%信頼区間(CI):0.55~0.77、p<0.001])。
②全生存期間中央値(2回目中間解析時点) 有効性の中止基準を超えた30.9ヵ月 vs. 25.1ヵ月であった(全死因死亡ハザード比は0.68[95%CI:0.55~0.85、p<0.001])。
③安全性 グレード3または4の有害事象発生率はラパチニブ+カペシタビン群のほうが高かった(57%vs. 41%)。TDM-1群の発生が高率だったのは、血小板減少症、血清アミノトランスフェラーゼ値上昇で、下痢、悪心、嘔吐、手掌・足底発赤知覚不全発生率はラパチニブ+カペシタビン群で高率だった。

〜副次エンドポイント〜
客観的奏効率はTDM-1群のほうが有意に高く(43.6%vs. 30.8%、p<0.001)、試験担当医が評価した無増悪生存期間(p<0.001)、症状増悪までの期間(12.6ヵ月vs. 6.5ヵ月)などその他の副次エンドポイントもすべてTDM-1群のほうが良好だった。

これらの結果からは、安全性、有効性ともに進行・再発HER2陽性乳がんの新たな治療薬として十分に期待が持てそうです。もちろん、新薬ですので慎重に判断しなければなりませんが、このデータ通りなのであれば早く患者さんに使えるようになって欲しいものです。

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