2014年4月18日金曜日

乳癌の治療最新情報36 T-DM1(カドサイラ®)ついに発売!

以前から何度かご紹介してきましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/07/18adc.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/10/adc.html、http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/04/t-dm1-vs-trastuzumabdocetaxelphase.html)、HER2陽性乳がんの新規治療薬T-DM1(カドサイラ®)がようやく4/17に薬価収載され4/18に発売になりました。

カドサイラはハーセプチンにDM1(エムタンシン)というチューブリン阻害剤(抗がん剤の1種)を結合させて、HER2が発現している細胞(主にがん細胞)に集中的に効果を発揮する薬剤です。

効能・効果は、HER2陽性の手術不能又は再発乳がんとなっていますが、添付文書には2次治療以降での有効性しか臨床試験で証明されていないと記載されており、実質的に2次治療以降で使用されることになります。投与方法は、1回3.6mg/kgを3週間間隔の点滴静注です。薬価は100mgバイアル製剤が23万5108円、160mgバイアル製剤が37万3945円と非常に高価ですのでほとんどの方が高額医療の対象となります。

HER2陽性乳がんの新規治療薬、特に分子標的薬の開発は目覚ましいものがあります。高額なのが難点ですが、それでもそれに見合う効果が期待できるのであれば新薬の発売は患者さんにとっては朗報です。今、私たちの施設にもこの薬剤の発売を待っていた患者さんたちがいます。ただ血小板減少などの副作用もありますので、十分に注意しながら投与していきたいと考えています。

10 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

乳がんのホルモン治療と卵巣摘出について教えてください。

43歳です。まだ手術前です。10センチほどの子宮筋腫があります。
バネ式生検での結果なのですが、ホルモン感受性が強いとのことで、先生に「卵巣摘出も選択のひとつとしてある」といわれました。日本では一般的ではないようですが、どうしてでしょうか?
ホルモン治療と卵巣摘出のそれぞれのメリット、デメリットがあったら教えてください。
私が希望すれば、乳がんと卵巣摘出手術は同時に行われます。

また、どちらがよいか先生のお考えをお聞かせいただけるとうれしいです

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
術後の補助療法として卵巣摘出まですることは通常はありません。術後の卵巣機能抑制目的で行なうのはゾラデックスやリュープリンなどの薬剤がありますし、これらの投与期間は現在は2年が標準となっています(再発リスクが高い場合はもう少し長く投与することはありますが)。再発治療の場合は治療が長期になりますので経済的なことも考えると卵巣摘除は考慮されますが、術後補助療法では標準的ではありませんし、私もお勧めはしません。ただし子宮筋腫の手術が必要で、そのついでに卵巣摘除を行なうのでしたら考慮しても良いとは思います。
卵巣摘除を行なう場合のメリットは、薬剤で卵巣機能抑制をするより安価であること、効果が永続的であること(もしかしたらより再発リスクを下げる可能性はあります)などです。デメリットは、手術による侵襲がありますのでそのことのリスクは0ではないこと、早期に完全に閉経しますので骨粗鬆症や脂質代謝異常などが起きやすいことなどです。
そのあたりの詳細は、主治医の先生にご確認下さい。
なお、トップページの注意事項をご一読いただければ幸いです。それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

すぐのお返事ありがとうございます。
どうしていいか、わからなかったので大変参考になりました!

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
お役に立てたなら良かったです。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

続々と効果が期待される薬剤が発売されており、確かに患者さんには朗報ですね。
しかし、ほとんどが高額医療費の対象となります。MRは、高額医療費でいけますので、経済的負担もある程度まで支払えるなら大丈夫!といいますが、はたして大丈夫なのでしょうか?
結局は、国のお金が不足し、また増税という結果になるでしょう。このままだと経済破綻すると思います。解決策はないものか・・・と心配しております。
せめて、製薬メーカーの派手な研究会など中止にして、金のかからないオンライン講演会に変更する、その他派手な宣伝、ほしくもない記念品とかもやめて、ういた金の分、薬価を下げることくらいかないかと思いますが先生はどうお考えでしょうか?
         関西の専門医

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(関西の専門医さん)
おっしゃる通りだと思います。MRさんにはいつもハーセプチンで十分元は取れたのだしもっと安くても良いのではないか?と言っています(笑)
医療費の問題もその通りですよね。最近メーカーも研究会などのお金の使い方を自粛しつつあるとは思いますが、薬価を下げるためというよりは当局の監視の目が厳しくなってきたからという理由のように思います。
もっと安価で良い治療を患者さんに提供できることを私も願っています。

匿名 さんのコメント...

ステージ4のHER2タイプです。
期待の薬カドサイラの実際の実力はどうでしょうか?
ハーセプチン+抗がん剤と比べると副作用が少ないというのは魅力です。
セカンドラインということだと、ハーセプチンに耐性出ていたりすると、
全く効かないということになるのでしょうか?
がんは不均一性なので、HER2タイプと言っても、それ以外のがんは生き残り、増殖していくということを考えると、
普通の抗がん剤を併用した方が効果があるのではと思ってしまいます。
ハーセプチン単独ではなく、抗がん剤併用というのは理にかなっているのかなと思います。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
カドサイラは効く人には良く効きますし、通報の抗がん剤に比べると副作用もそれほど強くないので比較的使いやすい薬剤です。ただ、匿名さんがおっしゃる通り、HER2陽性のがん細胞にしか効きませんから、サブタイプが変化した場合には効果は期待できません。
ただセカンドラインとしての有効性は証明されていますので、ハーセプチン+パージェタ+ドセタキセルで増悪した場合にはカドサイラを使用することが多いと思います。ただ上記の治療が一時的にも効果を発揮せずまったく無効だった場合には、サブタイプが変わっている可能性もありますので、可能であれば再度の生検を考慮すべきかと思います。
私が言えることは以上です。

匿名 さんのコメント...

hide chin先生ありがとうございました。
関連して教えて欲しいのですが、憎悪したらという言葉が出てきましたが、これについて教えてください。
薬を使って、50だったものが20になり、それが30になった場合は、憎悪ということになるのでしょうか?
よくPFSという言葉が出てきますが、これは、薬が効いて腫瘍が小さくなり、効かなくなって元の大きさに戻り、さらに大きくなった時、憎悪ということになるのでしょうか?

ハーセプチン+抗がん剤が効く人もいれば、効かない人もいます。これは、HER2発現に、疑問があるということなのでしょうか?
分子標的薬であっても、何故効く人効かない人が出てくるのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
簡単に言いますと”増悪(PD)”というのは、RECISTという基準においては、標的病変(例えば肺転移など)の最長径の総和が一番小さくなったときから20%以上増加した場合、もしくは新規病変が出現した場合に判定します。PFS(無増悪生存期間)というのは、PDにならずに生存した期間の平均(Kaplan-Meier法という手法を用います)を意味します。
腫瘍が小さくなり、その後元に戻った場合でもPDの基準を満たさなければSD(不変)の判定になります(例えば35㎜が30㎜になり、その後35㎜に戻った場合など)。
ちなみに匿名さんが書いた数字は腫瘍マーカーのことだと思いますが、腫瘍マーカーのみではPDの判定は行ないません。

ハーセプチンなどの抗HER2薬が効く人と効かない人(圧倒的に効く人が多いですが)がいる、もしくは一度効いたにも関わらず、途中から効かなくなる(耐性と言います)原因についてはいまさまざまな研究が行われています。抗生物質もそうですが、長く同じ薬剤にさらされていると、その毒性から逃れる変化をがん細胞はきたすと考えられていますが、それは単純なことではなく、多様な機序によって行なわれているのです。ですから一度効いたとしてもそれで根治することはなかなか難しいのです。もちろんがん細胞の多様性で最初から効かない細胞も存在するということも推定されています。
私がお答えできるのは以上です。