2014年6月5日木曜日

タモキシフェンは10年投与を推奨(ASCO 2014)

タモキシフェンの投与期間に関しては以前から様々な見解が報告されてきましたが、最近の報告では5年より10年を推奨するものが多いようです。今回米臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した乳癌の診がんガイドラインにおいても、ステージI-IIIでホルモン受容体陽性の患者に対する術後ホルモン療法の項目を更新し、ホルモン受容体陽性患者に対する最長10年までのタモキシフェン投与が推奨されました。

ASCOの専門委員会が2010年から行なってきた関連する医学文献を対象に系統的レビューによるとタモキシフェンを5年間使用した乳がん患者に比べ10年間使用した患者には生存利益が見られること、10年使用群では再発リスクと対側乳癌リスクも低いことを示しました。一方で、前回のガイドライン更新以降の文献に、アロマターゼ阻害薬の投与期間の延長に関する新たなエビデンスは見られませんでした。

ガイドラインに示された勧告の要点は以下の通りです。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経前または閉経期の女性には、術後ホルモン療法としてタモキシフェンを5年間投与し、その時点で引き続き閉経前であればタモキシフェンをさらに5年間投与し、閉経後であればタモキシフェンをさらに5年間投与するか、アロマターゼ阻害薬を5年間投与する。

・ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された、閉経後の女性に対する術後ホルモン療法の選択肢は以下のとおり。
①タモキシフェンを10年間投与
②アロマターゼ阻害薬を5年間投与
③タモキシフェンを5年間投与し、その後アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与
④タモキシフェンを2-3年投与し、アロマターゼ阻害薬を最長5年間投与

・閉経後の女性でタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬に対して不忍容を示した患者には、代替となる術後ホルモン療法を提供する。
①アロマターゼ阻害薬を使用していたが5年未満で使用を中止した患者には、その時点から当初予定されていた5年後までタモキシフェンを投与
②タモキシフェンを2-3年使用していた女性には、その時点から最長5年間アロマターゼ阻害薬を投与

ホルモン療法を最長10年間受けることのリスクや、想定される有害事象について患者さんと医師がきちんと話し合うことは大切です。タモキシフェンを使用した患者さんの多くが有害事象を経験しますが、今回ASCOが検討対象にした臨床試験では、使用期間を延長しても新たな、または想定外の有害事象は発生しなかったということです。

まだ国内ではタモキシフェンの投与期間について十分な合意はできていません。しかし今回のASCOのガイドラインによって今後は再発リスクによって10年投与が標準になっていくのかもしれませんね。

18 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

み と申します。
現在ホルモン治療の中です。
今月からゾラデックスを三ヶ月製剤に変えました。
一ヶ月と三ヶ月製剤で副作用に大きな違いがでるものでしょうか?
主治医に聞いてみましたが、変わらないと思うと言う事でした。

先生の病院ではいかがでしょうか?
三ヶ月製剤にして少し体調崩したという方はいますか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(みさん)
3ヶ月製剤だから特別な副作用が出るということはないと思いますが、当院ではまだ乳がんに対してゾラデックスの3ヶ月製剤は使用していません。前立腺がんでの使用例においても特にそのような話は聞いていませんのでおそらく問題ないと思います(薬剤自体は同じですから副作用が異なるということはないはずです)。以上です。

匿名 さんのコメント...

み です。
ありがとうございます。
実は先週の土曜日に注射し、昨日から微熱があり、だるくて少し吐き気もあったのでコメントしました。
明日以降も続くようであれば主治医の診断を受けます。
今週は便秘がひどく酸化マグネシウムを服用していたのでその影響かもしれません。
酸化マグネシウムの服用はとりあえずやめました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(みさん)
主治医の先生によく診てもらって下さいね。それではお大事に。

ミナミ さんのコメント...

hidechin先生
こんばんは。
ミナミと申します。こちらにコメントさせていただくのは2回目です。いつも、お世話になり、ありがとうございます。
先日、非浸潤性癌で全摘手術後の病理検査結果が、ハイグレードだったためホルモン療法を5年間勧められて始めております。
hidechin先生のブログを読ませていただき、5年と10年では、どれだけの発生を抑制する効果があるのか、副作用の影響、子宮癌への危険性はどうなのか。。が気になりました。
もちろん、まだ、10年治療をした方が少ないので、統計をとったりすることができないと思います。現在、タモキシフェン5年と言われていますが、今後10年に変更されることもあるのでしょうか。。
今回の記事を読ませていただいて、疑問が出てきました。
10年続けるメリットとデメリットを詳しく知りたいと思います。
不躾なコメント、大変失礼致しました。
これからもブログ楽しみにしております。

hidechin さんのコメント...

>ミナミさん
このガイドラインの元になった主な臨床試験の1つの結果については以前ここで書いていますのでご参照下さい(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2012/12/blog-post_17.html)。
ただミナミさんの場合は、非浸潤がんで全摘後ですので、そもそもタモキシフェンを内服する意義は対側乳がんの予防が主です。このようなケースではタモキシフェンを処方しない場合も多いですので、ましてや5年を10年に延長する意義については今回の報告は参考にはなりません。もしかしたらmerit(対側乳がんの予防やもしかしたら非浸潤がんではなく微小浸潤がんが隠れていいて、それが原因で再発するわずかな可能性を予防できるかもしれないmerit)よりもdemerit(子宮体がんや血栓症によって受ける不利益)が上回る可能性も考えなければなりません。主治医の先生とよくご相談の上でご判断下さい。

ミナミ さんのコメント...

hidechin先生
こんばんは。
早速のお返事、ありがとうございます。
過去記事をしっかり読まずにコメントしてしまいまして、申し訳ございませんでした。

5年でも、デメリットの方が上回るかもしれないのですね。。
私は閉経前、30代、未婚の為、これから結婚や出産がもし、あるなら?と考えたり、そもそも全摘後の身体で結婚なんて考えるのはナンセンスなのでは。。
とも思い、薬を飲むことに決めました。
主治医の先生も、強くは勧めないが、飲むほうがよりベストだとおっしゃられたことと先生の奥様になら、勧めるか、との私の問に、勧める。とのこともあり、決心しました。

主治医の先生は
私が若いこと(乳癌患者としては)
微妙に遺伝性を疑っていること(私には、母と祖母以外の女性親族がいません)
から、お薬を勧められた、とのことです。
遺伝性に関しては調べていないのですが。。

hidechin先生の、ご意見、お考えをお聞かせいただけて、本当に感謝しております。
ありがとうございました。
今のところ、副作用もなく、始めたばかりですし、身体の調子をみながら、再度、考えていきたいと思います。

本当にありがとうございました。
これからも、先生のご活躍お祈り申し上げます。

匿名 さんのコメント...

初めましてOといいます。2013/12/19の記事にコメント書きました。こちらの記事の内容のコメントではないので、過去記事にかかせていただきました。宜しくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>ミナミさん
遺伝性乳がんの可能性があるということであれば対側乳がんの予防目的としてのタモキシフェンの投与は有益だと思います。ただこれに関しては今までの臨床試験では5年間の投与がほとんどだったと思います。10年間の方が予防効果が高いのかどうかは不明です。ですから乳がん術後補助療法に関する今回のASCOの発表の主旨とは別のものとして考えなければなりません。何年飲むかは主治医の先生とよくご相談の上でご判断下さい。
それではお大事に!

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Oさん)
ご質問のお返事は以前の記事の方に書いてあります。

ミナミ さんのコメント...

hidechin先生
こんばんは。
ご丁寧なお返事ありがとうございます。
返信が大変遅くなり申し訳ございません。

詳しく教えていただきまして、本当にありがとうございます。

私の主治医ではないのに、それくらい懇切丁寧なご説明、本当に感謝しております。
やはり、遺伝性乳癌には、対側発生抑制に効果があるのですね。
遺伝子検査をしていない上、家族にも乳癌患者のいない私に、それをすすめるには何か理由が或るのでしょうね。

hidechin先生に色々教えていただけて良かったです。
ありがとうございます。
治療はまだまだ続きますが、先生のブログを参考に勉強させて頂きたいと思います。
本当にありがとうございました。

先生が以前書かれていた大阪での乳癌カンファレンス?の一般向けの講演会に行こうと思っています。

この度は本当にありがとうございました

これからも、先生のご活躍お祈り申し上げます

hidechin さんのコメント...

>ミナミさん
大阪のは乳癌学会でしょうか?一般向けの講演会は貴重な機会ですので是非ご参加下さい。
それではお大事に!

ミナミ さんのコメント...

hidechin先生
こんばんは。
お返事ありがとうございます。
そうです!!
乳がん学会です。
7/12の土曜日夕方の講演会です。
たまたま見ていたフリーペーパーで見つけて応募致しました。

実は、私の主治医の先生が司会をすることと、遺伝性乳がんについての公演みたいですので、すごく、興味があります。
しっかり勉強してこようと思います。

こちらの記事に関係のないコメントをしてしまいまして、大変申し訳ございませんでした。

先生も、これからも、お身体にご自愛されてくださいませ。

これからも、ブログを楽しみにしております。
ありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>ミナミさん
ありがとうございます。
講演会、役に立つ情報が得られると良いですね。それでは。

匿名 さんのコメント...

hidechin先生。
やまと申します。術後、2年目、ノルバデックスを服用中です。CYP2D6遺伝子検査の結果が低活性でしたので、主治医の先生にお願いして一日40mgで服用しております。今のところ副作用の自覚はありません。ノルバデックスの副作用で一番気にしていたのは、子宮体がんに若干かかりやすくなるということでした。現在、普通の倍量で飲んでいますので不安を感じてはおります。
元々、子宮線筋症を煩っており、黄体ホルモンをしみこませたリング ミレーナを使用しています。
婦人科の先生も、乳がんの先生も、ミレーナの乳がんに対する影響については詳しくないようです。ネットで調べますと、子宮内膜を薄くするので、ノルバデックスの子宮体がんの発生率を抑えると あるいは、乳がんの術後にも使えるという記事と乳がん患者には使えないという記事があります。今後どうするかは、自分で決めなければいけないと思っています。もし、ご存じでしたら、教えていただければ有り難いと思います。
よろしく、お願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(やまさん)
はじめまして。
ミレーナは子宮内膜ポリープを予防する効果はあるようですので子宮体がんの発生を抑制するのではないかと期待されているようですが十分なエビデンスはありません。また、逆に子宮体がんの発生率を上げる可能性についても十分なデータがあるわけではないようです(私はこの薬剤を使用した患者さんを経験したことはありませんのでなんとも言えませんが)。
申し訳ありませんがこれ以上のことは言えませんので婦人科と乳腺外科の主治医とよくご相談の上でご判断下さい。

匿名 さんのコメント...

hidechin先生
やまです。お忙しいのに、お返事ありがとうございます。
今、ノルバデックスを倍量で飲んでおりますが、ノルバデックスは子宮内膜の増殖作用があるとか。ノルバデックスは肝臓で代謝されて効果を発揮するとのことですが、子宮に対しても同じなのだろうか。だとすれば、低代謝型なので、代謝されずに外に出てしまうのだろうからあまり心配しなくてもいいのかしらとぐるぐる考えています。線筋症が酷くなると痛いし、そのまま使い続けらるなら有り難いのですが。ごく少量ですが、血中へレボノルゲストレルが移行するようです。ミレーナで乳癌の発症率が上がったという話しはなさそうなので、使っていても大丈夫なのかなとも思っています。
ありがとうございました。いろいろな要素があって、主治医の先生方は、はっきりとしたアドバイスは難しいようなので、自分でよく考えて返事をすることにします。
乳癌の告知を受けた後、いろいろ不安で、先が心配な時期にこのブログに随分救われました。今も何かと不安のなるとのぞきに来てしまいます。
そのことにつきましても、ありがとうございます。

やま

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(やまさん)
そうですね。わからない部分はありますので主治医の先生もお答えしにくいのだと思います。私が外来で聞かれてもきちんとしたお返事はできません。
こんなブログでも少しでもお役に立てたならうれしいです。それではお大事に!