2014年10月17日金曜日

新たなHER2陽性乳がん治療薬が開発中!

トラスツズマブ(ハーセプチン®)の登場以降、飛躍的に予後の改善が見られたHER2陽性乳がんですが、その後もラパチニブ(タイケルブ®)、ペルツズマブ(パージェタ®)やT-DM1(カドサイラ®)などの薬剤が登場しています。

そして先日の日本癌治療学会の招待講演を行なったスタンフォード大学のMark D.Pegram氏によると、さらに新しい機序によるHER2陽性乳がんの治療薬が開発中とのことです。

①Fc最適化抗体(Fc engineered antibody): MGAH22(Margetuximab)
詳しい作用機序は難しすぎるので省きますが、抗体のFc領域を修飾しADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity:抗体依存性細胞傷害)活性を強めることによって抗がん作用を呈するようです。これはHER2が低発現(1+や2+)でも効果がみられるということで今までにない抗HER2薬として期待できそうです。
第I相試験の結果はASCO 2014で発表されましたが、MGAH22は乳がんをはじめ大腸がん、胃・食道がんなど多くのがんで効果(PR)を示しているそうです。有害事象は、インフュージョンリアクションが最も多かったようですが、いずれの副作用も軽度から中等度でした。現在MGAH22はすでに第II相試験も進行中とのことです。

②抗CD137作動性抗体
CD137はヒトのNK細胞(腫瘍細胞などを直接攻撃するリンパ球の一種)に存在し、HER2陽性乳がん細胞にトラスツズマブが結合することで高発現します。抗CD137作動性抗体は、CD137を刺激することによってNK細胞のがん細胞に対する攻撃を促しADCCを増強します。
この薬剤はまだ実験段階ですが、有意にHER2陽性細胞の増殖を抑制したため、来年あたり臨床試験が開始されそうな見通しです。

③抗CD47抗体:Hu5F9-G4
これも作用機序の説明は難しいので割愛しますが、マクロファージ(白血球の一種で死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの 異物を捕食する大型の細胞)のがん細胞貪食を促し抗腫瘍効果を発揮するそうです。Hu5F9-G4については第I相用量決定試験がごく最近始まったとのことです。

HER2やそのファミリーであるHER1、HER3などに直接作用するだけではなく、他の機序を利用した治療法の開発が世界では行なわれているのですね。研究者のみなさん、製薬企業の先読みした地道な努力には頭が下がる思いです。患者さんの治療に少しでも貢献するような安全な新薬の登場を期待したいものです。

6 件のコメント:

misato さんのコメント...

はじめましてm(__)m
2009.9.9告知
2009.10.30手術右全摘 ステージ1
2009.11〜リュープリン2年間
子宮内膜症のためリュープリンのみで始めました。
その終わりかけた
2011.7〜ガイドライン変更によりノルバデックス開始
現在3年3ヶ月ノルバデックス→フェアストンです。
副作用があるなら、主治医から術後もう5年経ってるのでホルモン治療をやめてもいいんじゃないかと言われました。
薬は5年飲んで効果を発揮するものだと考えていました。
術後5年でホルモン治療を5年と考えていいのでしょうか?
飲み薬をあと2年残してやめるのが不安です。

hidechin さんのコメント...

>misatoさん
はじめまして。
misatoさんのようなホルモン治療の経過のエビデンスは十分ではありませんので、リュープリン単剤+タモキシフェン(またはフェアストン)合計で5年で良いのか後者を5年継続した方が良いのかの正確なお答えはできません。ただ副作用が許容されるなら私であれば後者をお勧めします。タモキシフェンは以前2年間内服という時代もありましたので5年飲まなければ効果が発揮しないわけではありません。2年と5年を比べると5年の方が成績が良かったので推奨投与期間が5年になった(今はハイリスクには10年の方が良いとも言われています)ということなのです。
misatoさんの場合はハイリスクではなさそうですので、あとは副作用との兼ね合いで決めるということになります。主治医の先生はその点を考慮してやめても良いのではないかとおっしゃったのではないでしょうか?ただmisatoさん自身が副作用は許容範囲内と考えていて、やめる不安の法が強いのであればその旨伝えてみるのが良いのではないかと私は思います。以上です。

misato さんのコメント...

先生、
早速のお返事ありがとうございます。
リュープリンの年数を入れないで、
ノルバデックスもしくは、フェアストンを5年と考える方が再発率が低くなるということですね。
合わせて5年と考えるなら、もう、やめてもいいかなと思ったりもしたのですが・・・
5年が標準治療ならば、あと2年頑張りたいです。
お忙しいところ申し訳ありませんがもうひとつ質問です。
今のひどい倦怠感が副作用であれば薬をやめて、どのくらいで元に戻るのでしょうか?
一旦3ヶ月止めてみて、副作用なのか、やめても変わらないのかみましょうか。と言うことになりました。
薬が抜けるのに、時間がかかるんじゃないかと思うのですが・・・

hidechin さんのコメント...

>misatoさん
ノルバデックスもしくはフェアストンを5年と考える方が再発リスクが低くなるとは言っていませんよ。この点はわからないと言っているんです。わからない以上、副作用が許容されるなら5年投与した方が良いのではないかと私は考えるということです。
倦怠感が休薬後どのくらいで良くなるかは個人差が大きいと思います。なぜなら心理的な要因も大きいことがあるからです。3ヶ月もあればだいたいは改善するとは思いますが…(副作用である場合なもちろん、心理的なものであっても副作用じゃないかという思い込みが強ければやめただけでよくなります)。判断はなかなか難しいことはあります。以上です。

misato さんのコメント...

お返事ありがとうございます。
すみません。
リュープリン2年+ノルバデックス3年のエビデンスはないってことでしたね。勘違いです。

この前は3ヶ月と言われてましたが、先日、乳腺外科で1ヶ月やめてみて、副作用かどうか確認しようって言われました。
とりあえず、1ヶ月様子みることに・・・
1ヶ月で薬が抜ければいいのですが・・・個人差があるとのことですね。
どうにか、あと2年がんばりたいです。あとで、あの時しなかったから・・・なんて思いたくないし・・・
イヤ、悪いほうに考えないで、毎日1日1日を大事に楽しく生きていきたいと思います。
お忙しいところありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>misatoさん
最良の結論が出ることをお祈りしています。
それではお大事に。