2014年11月11日火曜日

男性乳がんの特徴と遺伝性乳がん

最近、当院2例目の男性乳がんを経験しました。一般的には全乳がんの1%が男性と言われていますが、実際はもっと少ない印象です。日本乳癌学会による2011年度の年次報告では、男性の比率は0.5%でした。

以前は男性乳がんは予後不良と言われていましたが、実際は病期や年齢をそろえると女性とそれほど変わらないとする報告が多いようです。男性の場合は、そもそも乳がんになると思っていないことやすぐに皮膚や胸壁に浸潤しやすいなどの特徴によって進行してから診断されるケースが多いことが予後不良と言われることにつながったようです。

治療は女性と同様にまずは手術です。乳輪から離れた部位に発生した場合は乳頭・乳輪を残すこともありますが、ほとんどは乳房全摘術が必要になります。腋窩リンパ節に関しては、男性を対象としたセンチネルリンパ節生検のデータはありませんが、実際は男性に対しても行なわれているようで、今のところその成績はあまり問題なさそうです。今回の症例もセンチネルリンパ節生検を行なって転移がなかったため腋窩を温存することができました。15年くらい前に経験した患者さんは腋窩リンパ節転移がありましたので郭清しましたが、今もお元気に通院されています。

術後の補助療法も女性と同様に判断します。ただアロマターゼ阻害剤は、精巣からの男性ホルモンを抑制しなければ効果が期待できないと言われているためホルモン療法はタモキシフェンを使用します。化学療法のレジメンは女性と同様です。

最近、遺伝性乳がんが話題になっていましたが、男性乳がんの方が家系にいる場合は遺伝性乳がんの遺伝子変異を持っている可能性があります。もし家系内に男性乳がんの方がいて自分が乳がんと診断された場合は、遺伝性乳がんのカウンセリングを考慮する必要があります。

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