今日、マンモグラフィの読影をしていたら、ひと目で乳癌とわかる3cmくらいのしこりが…。
触診は別の医師がしていますが、明らかなしこりが触れていました。
こんなしこりを患者さん自身が自覚していないはずはないので、”しこりを触れたから乳癌かもしれないので乳がん検診を受けに来ました”っていうパターンだと思いますが、本当はあまり望ましくないのです。
前にも書きましたが、検診は無症状の人が受けるものです。自覚症状があって、それが心配な場合には、外科外来に受診するのが正しいのです。
検診ではマンモグラフィは1方向(通常は2方向)なので不十分だし、エコー(超音波)検査やしこりがあれば細胞診も必要です。検診として来院した場合には、すぐにそれらの検査ができない場合もあります。
しつこいようですが、症状のある時は、検診ではなく、外科(乳腺)外来に”受診”しましょう。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2009年3月16日月曜日
2009年3月13日金曜日
乳癌の治療最新情報2”ゾメタ”
ゾメタは、乳癌の骨転移の治療薬です。破骨細胞の働きを抑えて、骨を溶けにくくする作用を持っています。骨粗鬆症の治療薬と同じ種類の薬で強力な作用を持っています。
もともとは、前の世代のアレディアのころから、溶骨性(骨を溶かすタイプ)骨転移による”高カルシウム血症”が適応でした。
しかし、ゾメタになってから、骨折予防や疼痛軽減効果が効能として認められたため、”骨転移”そのものに適応が拡大されました。
発売当初は、癌自体に対する効果は効能にはありませんでしたが、最近注目すべき効果が報告されてきています。
難しい理論は省略して、簡単にその例をあげてみます。
①骨折の予防や疼痛軽減効果だけではなく、骨転移した癌細胞に対して直接の治療効果がある。
②他の臓器転移に対しても治療効果がある(びっくりです!)。
③閉経前のホルモン感受性乳癌に対して、ゾメタを6ヶ月に一度併用すると、骨粗鬆症予防効果だけでなく、生存率も改善する(再発予防効果がある)。
④トリプルネガティブ乳癌にも治療効果がある。
などです。
これからは、骨転移の有無にかかわらず、再発治療でも再発予防でも抗癌剤やホルモン剤と併用するのが当たり前になっていくのかもしれません。
もともとは、前の世代のアレディアのころから、溶骨性(骨を溶かすタイプ)骨転移による”高カルシウム血症”が適応でした。
しかし、ゾメタになってから、骨折予防や疼痛軽減効果が効能として認められたため、”骨転移”そのものに適応が拡大されました。
発売当初は、癌自体に対する効果は効能にはありませんでしたが、最近注目すべき効果が報告されてきています。
難しい理論は省略して、簡単にその例をあげてみます。
①骨折の予防や疼痛軽減効果だけではなく、骨転移した癌細胞に対して直接の治療効果がある。
②他の臓器転移に対しても治療効果がある(びっくりです!)。
③閉経前のホルモン感受性乳癌に対して、ゾメタを6ヶ月に一度併用すると、骨粗鬆症予防効果だけでなく、生存率も改善する(再発予防効果がある)。
④トリプルネガティブ乳癌にも治療効果がある。
などです。
これからは、骨転移の有無にかかわらず、再発治療でも再発予防でも抗癌剤やホルモン剤と併用するのが当たり前になっていくのかもしれません。
2009年3月10日火曜日
トリプル・ネガティブ(TN)乳癌の治療〜今後の展望
この前、TN乳癌は治療に難渋すると書きました。
TNは、術前の化学療法では他のタイプに比べて癌細胞が完全消失する率が高いのに、再発すると、現在標準的に使用されている抗癌剤が効きにくいという特徴を持っています。
ちょっと変わりもののタイプなので、普通じゃない抗癌剤の効果があるかもしれない、と思ったのかどうかは知りませんが、昔よく使っていた抗癌剤や他の臓器の癌に用いる抗癌剤、そして最近注目されている分子標的薬の臨床研究が行なわれています。
①TNによく見られる、BRCA1(癌抑制遺伝子)機能不全によるDNA修復機能低下を逆手に取った治療(DNAを傷つける薬剤)
1)マイトマイシン…昔、日本ではよくCMcF療法として乳癌の補助療法に使われていましたが、効果はCEFに比べて劣るので今はあまり使われなくなった薬剤。
2)シスプラチン、カルボプラチン…肺癌の標準的な治療薬。乳癌には保険適応はありません。
その他、ブレオマイシン、エトポシドなど。
②分子標的薬(癌細胞膜に多く発現する、細胞増殖に関与する蛋白質やそこから細胞内への伝達経路を選択的に阻害する薬剤)
1)EGFR阻害剤…cetuximab、gefitinib
2)c-KIT阻害剤…imatinib
3)multikinase inhibitor…lapatinib、pertuzumab、sunitinib、dasatinib
4)VEGFR阻害剤…bevacizumab
なんだか難しい話になってしまいましたが、これらのうちのいくつか(またはその組み合わせ)で臨床試験が進んでいます。
個人的には、少なくともシスプラチンやカルボプラチン、bevacizumabは、良い結果が出そうな印象を持っています。
早くTNに効果的な治療法が、保険適応になって使用できるようになれば良いですね。
TNは、術前の化学療法では他のタイプに比べて癌細胞が完全消失する率が高いのに、再発すると、現在標準的に使用されている抗癌剤が効きにくいという特徴を持っています。
ちょっと変わりもののタイプなので、普通じゃない抗癌剤の効果があるかもしれない、と思ったのかどうかは知りませんが、昔よく使っていた抗癌剤や他の臓器の癌に用いる抗癌剤、そして最近注目されている分子標的薬の臨床研究が行なわれています。
①TNによく見られる、BRCA1(癌抑制遺伝子)機能不全によるDNA修復機能低下を逆手に取った治療(DNAを傷つける薬剤)
1)マイトマイシン…昔、日本ではよくCMcF療法として乳癌の補助療法に使われていましたが、効果はCEFに比べて劣るので今はあまり使われなくなった薬剤。
2)シスプラチン、カルボプラチン…肺癌の標準的な治療薬。乳癌には保険適応はありません。
その他、ブレオマイシン、エトポシドなど。
②分子標的薬(癌細胞膜に多く発現する、細胞増殖に関与する蛋白質やそこから細胞内への伝達経路を選択的に阻害する薬剤)
1)EGFR阻害剤…cetuximab、gefitinib
2)c-KIT阻害剤…imatinib
3)multikinase inhibitor…lapatinib、pertuzumab、sunitinib、dasatinib
4)VEGFR阻害剤…bevacizumab
なんだか難しい話になってしまいましたが、これらのうちのいくつか(またはその組み合わせ)で臨床試験が進んでいます。
個人的には、少なくともシスプラチンやカルボプラチン、bevacizumabは、良い結果が出そうな印象を持っています。
早くTNに効果的な治療法が、保険適応になって使用できるようになれば良いですね。
2009年3月8日日曜日
今日の乳がん検診で
やはり、この前のたけしの番組を見ていた患者さんはけっこういたようです。
”あの番組を見て、怖くなったので受診しました”
という患者さんの言葉にちょっと複雑な気分でした。
受診のきっかけになったというのは喜ばしいことなんですが…。
”あの番組を見て、怖くなったので受診しました”
という患者さんの言葉にちょっと複雑な気分でした。
受診のきっかけになったというのは喜ばしいことなんですが…。
2009年3月7日土曜日
諦めなかったから起きた、乳癌再発治療の奇跡
”トリプル・ネガティブ(TN)乳癌”というタイプの乳癌が最近注目されています。
これは、ホルモン受容体(ERとPgR)もHER2受容体も陰性の乳癌です。そのため、ホルモン療法もトラスツヅマブ(ハーセプチン)も効果がありません。他のタイプに比べると再発しやすく、治療に抵抗性で難渋することが多いのです。
一般的な抗癌剤もあまり有効でないことが多く、TN乳癌に対しての標準的な化学療法のプロトコール(治療スケジュール)がまだ決まっていません。
ですから、再発患者さんが、TNだった場合は、特別な方法が決まっていないので、一般の乳癌再発治療に標準的と言われている治療法から順番に試すことになります。例えば、FEC療法、タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル)、ナベルビン、5FU系の経口抗癌剤などです。
それでも、すべて効かなかったら…、けっこうこれは厳しいです。
でもあきらめないで治療すれば、時に奇跡も起きるのです。
今回はそんな患者さんに、MM療法という治療を行ないました。
有効性が10-20%と報告されていれば、奇跡ではないと思うかもしれませんが、他のすべての抗癌剤が効かない中での出来事ですから、患者さんはもちろん、治療者側の私たちも大喜びでした。
治療を変えるたびに、期待しては裏切られ…、また期待しては副作用だけ…。いつも頑張っている患者さんに申し訳ないと思いながら、なんとか次こそは効いて欲しいと願った結果、初めて著明な効果が見られました。できるだけ長く効果が持続することを祈りながら、いまも治療をしています。
なかなか良い治療がなくても、ねばって、ねばっているうちに、新しい治療法ができるかもしれない…、そんな期待を持ちながら、あきらめずに治療するのが私の基本方針です。もちろん、患者さんの考え方、生き方が最優先なのは言うまでもありません。
乳癌治療の進歩は速いです。これからも治療はドラマチックに変わっていきそうな予感がします。TN乳癌も近いうちに怖いタイプではなくなるのかもしれませんね。
これは、ホルモン受容体(ERとPgR)もHER2受容体も陰性の乳癌です。そのため、ホルモン療法もトラスツヅマブ(ハーセプチン)も効果がありません。他のタイプに比べると再発しやすく、治療に抵抗性で難渋することが多いのです。
一般的な抗癌剤もあまり有効でないことが多く、TN乳癌に対しての標準的な化学療法のプロトコール(治療スケジュール)がまだ決まっていません。
ですから、再発患者さんが、TNだった場合は、特別な方法が決まっていないので、一般の乳癌再発治療に標準的と言われている治療法から順番に試すことになります。例えば、FEC療法、タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル)、ナベルビン、5FU系の経口抗癌剤などです。
それでも、すべて効かなかったら…、けっこうこれは厳しいです。
でもあきらめないで治療すれば、時に奇跡も起きるのです。
今回はそんな患者さんに、MM療法という治療を行ないました。
有効性が10-20%と報告されていれば、奇跡ではないと思うかもしれませんが、他のすべての抗癌剤が効かない中での出来事ですから、患者さんはもちろん、治療者側の私たちも大喜びでした。
治療を変えるたびに、期待しては裏切られ…、また期待しては副作用だけ…。いつも頑張っている患者さんに申し訳ないと思いながら、なんとか次こそは効いて欲しいと願った結果、初めて著明な効果が見られました。できるだけ長く効果が持続することを祈りながら、いまも治療をしています。
なかなか良い治療がなくても、ねばって、ねばっているうちに、新しい治療法ができるかもしれない…、そんな期待を持ちながら、あきらめずに治療するのが私の基本方針です。もちろん、患者さんの考え方、生き方が最優先なのは言うまでもありません。
乳癌治療の進歩は速いです。これからも治療はドラマチックに変わっていきそうな予感がします。TN乳癌も近いうちに怖いタイプではなくなるのかもしれませんね。
2009年3月3日火曜日
”最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学”の問題点
”しこりを作らない新しいタイプの乳癌が急増!””この乳癌を早期発見するには?”
なんてことを今テレビで放送しています。
TV番組表を見た時から予想してましたがやっぱり…。なんていうことはない、”非浸潤性乳管癌”の比率が増加しているっていう話です。これがまるですごく怖いことのように報道しています。
”非浸潤性乳管癌”がしこりを作りにくいのは事実です。微細石灰化で見つかることが多く、マンモグラフィが有効です。自覚症状として乳頭分泌で見つかることもあります。最近、私の病院では、マンモグラフィにも写らないタイプの非浸潤性乳管癌がエコーで診断されることもしばしばあります。
つまり、非浸潤性乳管癌は、”まだしこりを作る前のごくごく早期の乳癌”なんです。非浸潤性乳管癌が増加しているのは、マンモグラフィの普及などで、浸潤癌(しこりを作った癌)になる前に早期発見しているから増加しているというだけなんです。
乳がん検診の啓蒙活動はとても重要なことですが、このようは番組の進め方は、一般の人たちに誤解を生じる内容だと思います。おそらく監修しているDrは正しい説明をしているはずですが、TV側が興味を引こうとするあまり、誇大表現の形で放送したものと思います。
医療番組は、不安をあおるだけではなく、正確に伝えてほしいものです。
*3/25 内容を修正しました。
なんてことを今テレビで放送しています。
TV番組表を見た時から予想してましたがやっぱり…。なんていうことはない、”非浸潤性乳管癌”の比率が増加しているっていう話です。これがまるですごく怖いことのように報道しています。
”非浸潤性乳管癌”がしこりを作りにくいのは事実です。微細石灰化で見つかることが多く、マンモグラフィが有効です。自覚症状として乳頭分泌で見つかることもあります。最近、私の病院では、マンモグラフィにも写らないタイプの非浸潤性乳管癌がエコーで診断されることもしばしばあります。
つまり、非浸潤性乳管癌は、”まだしこりを作る前のごくごく早期の乳癌”なんです。非浸潤性乳管癌が増加しているのは、マンモグラフィの普及などで、浸潤癌(しこりを作った癌)になる前に早期発見しているから増加しているというだけなんです。
乳がん検診の啓蒙活動はとても重要なことですが、このようは番組の進め方は、一般の人たちに誤解を生じる内容だと思います。おそらく監修しているDrは正しい説明をしているはずですが、TV側が興味を引こうとするあまり、誇大表現の形で放送したものと思います。
医療番組は、不安をあおるだけではなく、正確に伝えてほしいものです。
*3/25 内容を修正しました。
2009年3月1日日曜日
さくらパンダ前線キャンペーン
”『余命1ヶ月の花嫁』乳がん検診キャラバン〜さくらパンダ前線キャンペーン”という企画が、TBSの主催で行なわれているというニュースを今朝見ました。
私はまだこの映画を見ていませんし、乳がん検診の啓蒙活動という面と、若年女性に乳癌についてよく理解してもらうきっかけ作りという点では賛成です。
しかし、ここで行なわれているのは”マンモグラフィのみ”の検診です。
ホームページをよく読むと、以前、ブログで私が述べたような、若年者に対するマンモグラフィ検査の限界についての説明は書いてありました。しかし、”エコー検査の有効性の証明はまだ不十分なので、20-30歳代でまず最初にマンモグラフィを受けた方が良い”とも書いています。ここに書いてある説明がどれだけ受診者に正確に理解されているかはちょっと疑問です。
20-30歳代の女性にマンモグラフィ単独検診を私が勧めない理由は、以下の通りです。
①国内外の比較試験で、40才未満のマンモグラフィの有益性は証明されなかった(マンモグラフィ検診で死亡率は低下しない)。
②癌があっても写っていないだけかもしれないのに、検診で”異常なし”と判断されたら、その直後にしこりを発見しても、検診で大丈夫だったから…と思って受診が遅れる可能性がある。
③若年者は特にマンモグラフィで強い痛みを感じやすいので、この時期に検査を受けて、”すごく痛い検査”という印象を持つと、さらに必要性が高くなる40才以上になってから敬遠してしまう人が増える可能性がある。
④妊娠可能年齢のため、妊娠を知らずに受診した場合、被爆の問題が生じる。
したがって、啓蒙活動は重要ですが、私が若年者に一つだけ乳房検査を勧めるなら、やはりエコー検査です。もちろん、乳腺に慣れた検査技師や医師が行なうことが前提ですが…。さらに、もし希望があって、妊娠の可能性がないと判断されれば、痛みを感じる可能性を十分に説明した上でマンモグラフィを併用します。
現在、乳癌の早期発見にエコー検査が有効かどうかの臨床試験が進行中です。早く、良い結果が出ることを願っています。
そして、若いうちから乳癌に関心を持って、有効な検診を多くの女性に受けてもらえるようになれば、日本の乳癌死亡率も低下してくるんじゃないかと信じています。
私はまだこの映画を見ていませんし、乳がん検診の啓蒙活動という面と、若年女性に乳癌についてよく理解してもらうきっかけ作りという点では賛成です。
しかし、ここで行なわれているのは”マンモグラフィのみ”の検診です。
ホームページをよく読むと、以前、ブログで私が述べたような、若年者に対するマンモグラフィ検査の限界についての説明は書いてありました。しかし、”エコー検査の有効性の証明はまだ不十分なので、20-30歳代でまず最初にマンモグラフィを受けた方が良い”とも書いています。ここに書いてある説明がどれだけ受診者に正確に理解されているかはちょっと疑問です。
20-30歳代の女性にマンモグラフィ単独検診を私が勧めない理由は、以下の通りです。
①国内外の比較試験で、40才未満のマンモグラフィの有益性は証明されなかった(マンモグラフィ検診で死亡率は低下しない)。
②癌があっても写っていないだけかもしれないのに、検診で”異常なし”と判断されたら、その直後にしこりを発見しても、検診で大丈夫だったから…と思って受診が遅れる可能性がある。
③若年者は特にマンモグラフィで強い痛みを感じやすいので、この時期に検査を受けて、”すごく痛い検査”という印象を持つと、さらに必要性が高くなる40才以上になってから敬遠してしまう人が増える可能性がある。
④妊娠可能年齢のため、妊娠を知らずに受診した場合、被爆の問題が生じる。
したがって、啓蒙活動は重要ですが、私が若年者に一つだけ乳房検査を勧めるなら、やはりエコー検査です。もちろん、乳腺に慣れた検査技師や医師が行なうことが前提ですが…。さらに、もし希望があって、妊娠の可能性がないと判断されれば、痛みを感じる可能性を十分に説明した上でマンモグラフィを併用します。
現在、乳癌の早期発見にエコー検査が有効かどうかの臨床試験が進行中です。早く、良い結果が出ることを願っています。
そして、若いうちから乳癌に関心を持って、有効な検診を多くの女性に受けてもらえるようになれば、日本の乳癌死亡率も低下してくるんじゃないかと信じています。
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