先日の金曜日に私たちの病院会議室において、乳腺センターとC社共催による第1回の”東区乳腺疾患セミナー”が開催されました。
この会は、定例で毎月行なっている、乳腺術後症例検討会の特別バージョンとして、以前から企画していたものです。今回は特別講演の演者として、元G病院で乳腺細胞診の第1人者としてご活躍され、現在もさまざまな学会や研究会などでご多忙な毎日をすごされていらっしゃるI先生をお招きしました。
I先生は、私やG先生がG病院で研修したときに大変お世話になった先生です。いつも緊急で細胞診をした患者さんの検体を夕方に持っていっても嫌な顔一つ見せずにすぐに染色をして診て下さったり、毎週夜に細胞診の勉強会(数枚のプレパラートを用意していただいて、研修医が見て診断するテストなど)を開いて下さいました。I先生はとても熱心に教えて下さるので、終わるのが夜の10時過ぎになることもよくありました。乳腺外科医としての細胞診検体の作り方や依頼書の書き方などについても御指導いただき、その教えは札幌に戻ってもずっと忘れずに守っています。
今回の講演会には、私たちと同じようにI先生にお世話になったことのある市内の先生方や技師さんたちに広く声をおかけしましたので、88人もの方に集まっていただくことができ、大盛況でした。I先生のお話も、乳腺細胞診の基礎から誤診を防ぐためのコツなど今後の日常診療に役立つお話をして下さり、期待通りの内容でした。私たちの施設の病理医や細胞診断士もこのご講演内容はもちろん、講演前に病理検査室で行なわれた症例カンファレンスでI先生のアドバイスをいただいて、とても勉強になったことと思います。
I先生のご講演後に、いつもの術後検討の症例も用意していたのですが、予想通りフロアから何人も質問があったために時間がなくなり次回に先送りになりました。しかしそれだけ価値のあるご講演だったと思います。
司会をしていた私だけがダメダメで申し訳なかったのですが、大変盛り上がった講演会で良かったです。講演会終了後には、私たちの施設の乳腺外科医、病理医、細胞診断士、超音波技師、釧路の関連病院の検査技師、そしてI先生の10人ですすきのに移動して懇親会を行いました。始まったのが21時過ぎでしたのであまり時間はありませんでしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。
今回は講演会ということで来ていただきましたが、今度はゆっくり時間をかけて病理医と細胞診断士に細胞診断の指導をしていただければと思っています。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2015年5月18日月曜日
7/19はさっぽろホコテンでピンクリボンロード!
先週の水曜日にピンリリボン in SAPPOROの理事会が某ホテルの和食処で行なわれました。
昨年度の会計報告と今年度の活動予定などを話し合ったのですが、今年度もさまざまな活動を行うことになりそうです。田中賢介選手も日本ハムファイターズに戻ってきてくれましたので、またアウトの数に応じて無料乳がん検診をプレゼントという企画が復活します。まだ受け付けていますので、最近乳がん検診を受けていないという40才以上の方はこの機会に応募してみて下さい(ピンクリボン in SAPPOROのHP http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/の中にある”田中賢介 ピンクリボンプロジェクト”のバナーをクリックして下さい)。なお、このプロジェクトには年齢制限はありませんが、マンモグラフィ検診の有効性のエビデンスがあるのは40才以上ですので、40才未満の方は有効性(家族歴があるなど)と不利益(被曝、痛みなど)をよくご検討した上でご応募願います。

そして今年もまた夏(例年より早い7/19です)に大通のさっぽろホコテン(中央区南1西3)で”ピンクリボンロード”が行なわれます。詳細は上記のHPに記載がありますが、今年も私たちの施設でブースを出す予定です。きっとまたG先生が超音波検査の乳房モデルを作ってくれると思いますので、是非本物の超音波検査の器械を使ってしこりを探してみて下さい(写真は昨年のブースの様子です)。

ここのところ、乳癌学会や院内で開催される講演会、某製薬会社の社内学習会の準備などに追われてすっかりブログがご無沙汰になっていました。今日も超音波技師さんの学会発表の演題を探すためにパソコンの患者台帳を見すぎて眼痛がひどくなっていましたが、なんとか更新することができました(汗)。これからも無理せずマイペースで更新していきます。
昨年度の会計報告と今年度の活動予定などを話し合ったのですが、今年度もさまざまな活動を行うことになりそうです。田中賢介選手も日本ハムファイターズに戻ってきてくれましたので、またアウトの数に応じて無料乳がん検診をプレゼントという企画が復活します。まだ受け付けていますので、最近乳がん検診を受けていないという40才以上の方はこの機会に応募してみて下さい(ピンクリボン in SAPPOROのHP http://pinkribbonsapporo.web.fc2.com/の中にある”田中賢介 ピンクリボンプロジェクト”のバナーをクリックして下さい)。なお、このプロジェクトには年齢制限はありませんが、マンモグラフィ検診の有効性のエビデンスがあるのは40才以上ですので、40才未満の方は有効性(家族歴があるなど)と不利益(被曝、痛みなど)をよくご検討した上でご応募願います。

そして今年もまた夏(例年より早い7/19です)に大通のさっぽろホコテン(中央区南1西3)で”ピンクリボンロード”が行なわれます。詳細は上記のHPに記載がありますが、今年も私たちの施設でブースを出す予定です。きっとまたG先生が超音波検査の乳房モデルを作ってくれると思いますので、是非本物の超音波検査の器械を使ってしこりを探してみて下さい(写真は昨年のブースの様子です)。

ここのところ、乳癌学会や院内で開催される講演会、某製薬会社の社内学習会の準備などに追われてすっかりブログがご無沙汰になっていました。今日も超音波技師さんの学会発表の演題を探すためにパソコンの患者台帳を見すぎて眼痛がひどくなっていましたが、なんとか更新することができました(汗)。これからも無理せずマイペースで更新していきます。
2015年5月11日月曜日
夕食事の赤ワイン1杯で糖尿病患者の脂質・糖代謝が改善!
昔から少量の赤ワインは健康に良いとされてきましたが、今回夕食事の1杯の赤ワインが、糖尿病患者の脂質・糖代謝を改善するという研究結果が欧州肥満学会(ECO2015,5月6~9日,チェコ共和国・プラハ)で報告されました。
概要は以下の通りです。
臨床試験名:
CArdiovaSCulAr Diabetes & Ethanol(CASCADE)試験(ランダム化比較試験)
発表者:
イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのIris Shai氏ら
対象:
良好にコントロールされた飲酒習慣のない成人の糖尿病患者224例
方法:
対象者を①赤ワイン②白ワイン③ミネラルウオーターのいずれかを2年間,毎夕食時に150mL摂取する群にランダムに割り付けた。いずれの群も食事はカロリー制限なしの地中海食とし,栄養士によるグループセッションを試験開始後3カ月間は1カ月ごと,その後は3カ月ごとに実施。複数の食事評価ツールを用いて食事内容を評価し,ワインの摂取についても厳格にフォローした。ワインは同じ種類が無料提供された。
結果:
試験遵守率は1年後94%,2年後87%だった。
ミネラルウオーター群に比べ赤ワイン群ではHDL-コレステロール(HDL-C)およびアポリポ蛋白(apo)A1がわずかに上昇し,総コレステロール(TC)/HDL-C比,トリグリセライド/HDL-C比,apoB100/apoA1比が減少した(全てP<0.05)。また,赤・白ワイン群ではミネラルウオーター群に比べ糖代謝がわずかに改善し,特に赤ワインによる改善効果が大きかった。
さらに,赤・白ワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果は,アルコールの分解が早いことに関連する遺伝子変異を有する患者(ADH1B*2キャリア)に比べ,アルコールの分解が遅い患者(野生型ADH1B*1)で優れていた。
なお,ワインの摂取は薬物治療の内容や血圧および肝機能マーカーに影響しなかった。
結論:
・赤・白ワインはいずれもミネラルウオーターに比べてわずかに糖代謝を改善。また,赤ワインを摂取した患者では脂質プロファイルも有意に改善した。
・健康的な食事に加えて少量のワイン,特に赤ワインを摂取することは安全で心血管・代謝リスクを軽減できる。
・アルコールの分解能に関連する遺伝的素因の違いによってワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果に差が認められたという結果はアルコールが一定の役割を果たしていることを支持している。
・白ワインよりも赤ワインの方が心血管・代謝プロファイルの改善に優れていたことから,赤ワインに含まれるアルコール以外のなんらかの成分が寄与した可能性もある。
赤ワイン好きの私にはなんともうれしい報告です(笑)。ただ、グラス1杯以上(例えばボトル1本…)、毎日飲んだ場合にどのような結果をもたらすかは不明です(汗)。E先生、お互いに気をつけましょう(笑)
なお、アルコールの過量摂取は、乳がんの発症率を上げるとされていることも併せて記しておきます(どのくらい以上ならリスクになるのか、また乳がん患者の再発リスクも上げるのかについては不明な点もあります)。なにごとも控えめくらいが無難なんでしょうね!
概要は以下の通りです。
臨床試験名:
CArdiovaSCulAr Diabetes & Ethanol(CASCADE)試験(ランダム化比較試験)
発表者:
イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのIris Shai氏ら
対象:
良好にコントロールされた飲酒習慣のない成人の糖尿病患者224例
方法:
対象者を①赤ワイン②白ワイン③ミネラルウオーターのいずれかを2年間,毎夕食時に150mL摂取する群にランダムに割り付けた。いずれの群も食事はカロリー制限なしの地中海食とし,栄養士によるグループセッションを試験開始後3カ月間は1カ月ごと,その後は3カ月ごとに実施。複数の食事評価ツールを用いて食事内容を評価し,ワインの摂取についても厳格にフォローした。ワインは同じ種類が無料提供された。
結果:
試験遵守率は1年後94%,2年後87%だった。
ミネラルウオーター群に比べ赤ワイン群ではHDL-コレステロール(HDL-C)およびアポリポ蛋白(apo)A1がわずかに上昇し,総コレステロール(TC)/HDL-C比,トリグリセライド/HDL-C比,apoB100/apoA1比が減少した(全てP<0.05)。また,赤・白ワイン群ではミネラルウオーター群に比べ糖代謝がわずかに改善し,特に赤ワインによる改善効果が大きかった。
さらに,赤・白ワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果は,アルコールの分解が早いことに関連する遺伝子変異を有する患者(ADH1B*2キャリア)に比べ,アルコールの分解が遅い患者(野生型ADH1B*1)で優れていた。
なお,ワインの摂取は薬物治療の内容や血圧および肝機能マーカーに影響しなかった。
結論:
・赤・白ワインはいずれもミネラルウオーターに比べてわずかに糖代謝を改善。また,赤ワインを摂取した患者では脂質プロファイルも有意に改善した。
・健康的な食事に加えて少量のワイン,特に赤ワインを摂取することは安全で心血管・代謝リスクを軽減できる。
・アルコールの分解能に関連する遺伝的素因の違いによってワインによる血糖コントロールのパラメータ改善効果に差が認められたという結果はアルコールが一定の役割を果たしていることを支持している。
・白ワインよりも赤ワインの方が心血管・代謝プロファイルの改善に優れていたことから,赤ワインに含まれるアルコール以外のなんらかの成分が寄与した可能性もある。
赤ワイン好きの私にはなんともうれしい報告です(笑)。ただ、グラス1杯以上(例えばボトル1本…)、毎日飲んだ場合にどのような結果をもたらすかは不明です(汗)。E先生、お互いに気をつけましょう(笑)
なお、アルコールの過量摂取は、乳がんの発症率を上げるとされていることも併せて記しておきます(どのくらい以上ならリスクになるのか、また乳がん患者の再発リスクも上げるのかについては不明な点もあります)。なにごとも控えめくらいが無難なんでしょうね!
2015年4月22日水曜日
乳腺術後症例検討会 39 ”乳房再建のお話”
今日は定例の症例検討会が行なわれました。
今回は、まずN先生による乳房再建のミニ講演がありました。症例検討会は、主に画像診断と病理の対比を行なって、乳腺疾患の診断技術や知識を研鑽する場ですので、乳房再建の話題は直接は関係ないのですが、最近一次再建を行なう症例が増えてきたこともあり、乳腺疾患に関する一般的な知識を拡げるという目的でN先生に依頼されたようです。
講演の内容は、乳房再建の種類や適応、当院で行なっている一次再建の術式、その後の流れ、そして合併症などについての一般的な内容をわかりやすく解説してくれました。
症例検討は2例でした。1例目は画像診断で選択肢に挙げるのが難しかった乳腺原発悪性リンパ腫の症例でした。いつもいつも悪性リンパ腫は忘れたころにやってくるので、病理検査前に疑うことができた症例は今までほとんどありません。これが悪性リンパ腫の特徴だというものがないのが悪性リンパ腫の特徴です。でもほとんどの症例では悪性を否定できない画像所見を呈するので、良性として経過観察してしまうことは今までのところはなかったと思います。
2例目は、検診マンモグラフィで左乳房に良性を疑う腫瘤を指摘されて精査になった症例でした。精査の結果、左は粘液を貯留した良性の嚢胞でしたが、超音波検査で偶然右乳腺内に乳管拡張集合像を指摘し、針生検の結果、非浸潤がんの診断となりました。やぶにらみで乳がんを発見できたケースでしたが、この手のタイプの非浸潤がんはマンモグラフィで指摘することはなかなか難しいと思います。
来月は、外部から細胞診のスペシャリストであるI先生をお招きして講演していただく予定にしています。G病院で研修中に私やG先生も大変お世話になった先生です。お話もとても面白いので今から楽しみにしています。
今回は、まずN先生による乳房再建のミニ講演がありました。症例検討会は、主に画像診断と病理の対比を行なって、乳腺疾患の診断技術や知識を研鑽する場ですので、乳房再建の話題は直接は関係ないのですが、最近一次再建を行なう症例が増えてきたこともあり、乳腺疾患に関する一般的な知識を拡げるという目的でN先生に依頼されたようです。
講演の内容は、乳房再建の種類や適応、当院で行なっている一次再建の術式、その後の流れ、そして合併症などについての一般的な内容をわかりやすく解説してくれました。
症例検討は2例でした。1例目は画像診断で選択肢に挙げるのが難しかった乳腺原発悪性リンパ腫の症例でした。いつもいつも悪性リンパ腫は忘れたころにやってくるので、病理検査前に疑うことができた症例は今までほとんどありません。これが悪性リンパ腫の特徴だというものがないのが悪性リンパ腫の特徴です。でもほとんどの症例では悪性を否定できない画像所見を呈するので、良性として経過観察してしまうことは今までのところはなかったと思います。
2例目は、検診マンモグラフィで左乳房に良性を疑う腫瘤を指摘されて精査になった症例でした。精査の結果、左は粘液を貯留した良性の嚢胞でしたが、超音波検査で偶然右乳腺内に乳管拡張集合像を指摘し、針生検の結果、非浸潤がんの診断となりました。やぶにらみで乳がんを発見できたケースでしたが、この手のタイプの非浸潤がんはマンモグラフィで指摘することはなかなか難しいと思います。
来月は、外部から細胞診のスペシャリストであるI先生をお招きして講演していただく予定にしています。G病院で研修中に私やG先生も大変お世話になった先生です。お話もとても面白いので今から楽しみにしています。
2015年4月21日火曜日
第12回 With You Hokkaido 打ち合わせ
今日、With You Hokkaidoの打ち合わせが札幌医大で行なわれました。
12回目を迎えるWith You Hokkaidoですが、前回好評だったパネルディスカッションが今回も行なわれそうです。講演の内容は、ここ数年トピックだった件に関するものと、乳がんと診断された方にとってはみな多少なりとも関わりのあることに関するものです。パネルディスカッションも講演に関する内容になりそうです。また、今回は患者会に関する紹介なども考えています。もちろん、グループワークも行なわれます。
詳細は正式に決まってから報告しますが、今年は8/29の土曜日、いつもの札幌医大研究棟1F大講堂で行なわれます。是非予定を空けてご参加下さい。
*最初の投稿では、日程が8/28になっていましたが、8/29の誤りでした。すみません(汗)。
12回目を迎えるWith You Hokkaidoですが、前回好評だったパネルディスカッションが今回も行なわれそうです。講演の内容は、ここ数年トピックだった件に関するものと、乳がんと診断された方にとってはみな多少なりとも関わりのあることに関するものです。パネルディスカッションも講演に関する内容になりそうです。また、今回は患者会に関する紹介なども考えています。もちろん、グループワークも行なわれます。
詳細は正式に決まってから報告しますが、今年は8/29の土曜日、いつもの札幌医大研究棟1F大講堂で行なわれます。是非予定を空けてご参加下さい。
*最初の投稿では、日程が8/28になっていましたが、8/29の誤りでした。すみません(汗)。
2015年4月18日土曜日
乳腺を語る会2
今晩はDS社で”乳腺を語る会”が行なわれました。今回は私とG先生、そして後期研修医のN先生と一緒に参加しました。
症例は3例でしたが、今回も非常に興味深い症例でした。日頃私たちの施設でも迷うような症例でしたので、他の施設での考え方は参考になりました。それにしても効くと思ったはずの治療が効果がなかった場合に非常に困るのはどこでも同じであることがあらためてよくわかりました。私たちが頭を悩ませるような症例は、他の施設でも困っているのですね…。
例えばHER2陽性の進行乳がん。普通は抗HER2薬がかなり有効なはずですが、まったく効かない場合にどうするか?手術のタイミングは?
手術不能と判断された進行乳がんで、治療でほとんど腫瘍が消えた場合に局所治療をどうするか?手術をするか?腋窩は郭清するのか?放射線治療は併用するのか?
針生検で鑑別困難と診断された場合に、次の手段はどうするのか?
答えは一つではないかもしれません。エビデンスが十分ではない領域は、実際の臨床の中ではたくさんあります。このような研究会の中で方向性を見いだし、今後の治療に生かすことができればと思いました。
次回は是非私たちの施設の症例を持っていこうと思っています。飲み会に参加できなかったのは残念でしたが、今度は参加したいと思っています。
症例は3例でしたが、今回も非常に興味深い症例でした。日頃私たちの施設でも迷うような症例でしたので、他の施設での考え方は参考になりました。それにしても効くと思ったはずの治療が効果がなかった場合に非常に困るのはどこでも同じであることがあらためてよくわかりました。私たちが頭を悩ませるような症例は、他の施設でも困っているのですね…。
例えばHER2陽性の進行乳がん。普通は抗HER2薬がかなり有効なはずですが、まったく効かない場合にどうするか?手術のタイミングは?
手術不能と判断された進行乳がんで、治療でほとんど腫瘍が消えた場合に局所治療をどうするか?手術をするか?腋窩は郭清するのか?放射線治療は併用するのか?
針生検で鑑別困難と診断された場合に、次の手段はどうするのか?
答えは一つではないかもしれません。エビデンスが十分ではない領域は、実際の臨床の中ではたくさんあります。このような研究会の中で方向性を見いだし、今後の治療に生かすことができればと思いました。
次回は是非私たちの施設の症例を持っていこうと思っています。飲み会に参加できなかったのは残念でしたが、今度は参加したいと思っています。
2015年4月15日水曜日
魚油サプリが化学療法の効果を減弱させる可能性
マウスを用いた研究では、魚油に含まれる16:4(n-3)という脂肪酸が、微量でも化学療法剤への抵抗性を惹起するということが以前からわかっていましたが、今回人体においても同様の可能性があることを示す結果をオランダ・Netherlands Cancer InstituteのEmile E. Voest氏らが,JAMA Oncol(2015年4月2日オンライン版 http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2212208)で報告しました。
概要は以下の通りです。
対象:
①University Medical Center Utrechtでの積極的がん治療歴があり,2011年11月に同センターの腫瘍外来を受診した患者400例
②健康なボランティア50例
方法:
①サプリメント使用状況に関する質問票を配布し記入
②30例に魚油、20例に魚を摂取させて16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度を測定。
結果:
①118例(30%)から回答を得た。EPAやDHAといったn-3脂肪酸含有サプリメントを常用していたのは118例中13例(11%)であった。
②まず6銘柄の魚油サプリメントと4種の魚(ニシン,サバ,マグロ,サケ)の16:4(n-3)含有量を測定。サプリメントは6銘柄とも相当量(0.2~5.7μM)の16:4(n-3)脂肪酸を含んでおり,マウスの実験では,シスプラチンに対する抵抗性を惹起するには,1μLの魚油を添加するだけで十分であった。また,4種の魚のうちニシンとサバは,マグロとサケに比べ16:4(n-3)を高度に含有していた。
健康ボランティア30例に魚油を,20例に魚を,それぞれ摂取させ,摂取後の脂肪酸の血中濃度を測定した。その結果,1日推奨摂取量である10mLの魚油を摂取後,16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度は著明に上昇し,摂取前値に低下するのに8時間を要した。また,摂取量を50mLに増やした場合,血中濃度の上昇時間も延長された。魚を摂取させた群では,ニシンやサバで血中16:4(n-3)脂肪酸濃度が著明に上昇し,マグロ摂取では影響は見られず,サケでは短時間の弱い上昇を示した。
結論:
がん化学療法を受けた患者へのサプリメント摂取に関する質問票調査と,健康ボランティアを対象とした魚油サプリメントまたは魚摂取試験の結果,魚油サプリメントや特定の魚にはがん化学療法の効果を減じる脂肪酸が含まれており,魚油の摂取後,同脂肪酸の血中濃度の上昇が長時間続くため、化学療法中の魚油摂取が治療に悪影響を与える可能性がある。
がん患者さんは、再発や死に対する不安、治療の副作用に対する不安、西洋医学への不信感、ネットでの情報の氾濫などによって、サプリメントに頼るケースは珍しくありません。患者さんがサプリメントの併用を希望した場合、標準治療に対する併用をいっさい認めない施設もありますが、明らかな有害性が報告されてなければ許可する施設もあります。一般の方々の中には、サプリメントや漢方薬、食餌療法などは副作用もなく、安全であると思われている人も多いと思いますが、今回の報告はそれに警鐘を鳴らすものになりそうです。以前ここでも書きましたが、他にも漢方薬やサプリメントなどの代替療法が副作用をきたす可能性については報告されています。
この論文の著者は、「今回の知見に基づき,さらなるデータが得られるまで,がん患者に対し化学療法開始の前日から終了の翌日まで一時的に魚油摂取を中止することを勧める」と述べています。しかし今回の報告は、あくまでも魚油や魚の摂取後の血中濃度を測定した結果を元にマウスの臨床試験の結果から類推したものに過ぎません。実際に魚油の摂取が化学療法剤の効果(生存率など)に悪影響を与えるかどうかについては、前向きの比較試験を行わなければわかりませんが、当面はこの勧告に従う方が無難かもしれませんね。
概要は以下の通りです。
対象:
①University Medical Center Utrechtでの積極的がん治療歴があり,2011年11月に同センターの腫瘍外来を受診した患者400例
②健康なボランティア50例
方法:
①サプリメント使用状況に関する質問票を配布し記入
②30例に魚油、20例に魚を摂取させて16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度を測定。
結果:
①118例(30%)から回答を得た。EPAやDHAといったn-3脂肪酸含有サプリメントを常用していたのは118例中13例(11%)であった。
②まず6銘柄の魚油サプリメントと4種の魚(ニシン,サバ,マグロ,サケ)の16:4(n-3)含有量を測定。サプリメントは6銘柄とも相当量(0.2~5.7μM)の16:4(n-3)脂肪酸を含んでおり,マウスの実験では,シスプラチンに対する抵抗性を惹起するには,1μLの魚油を添加するだけで十分であった。また,4種の魚のうちニシンとサバは,マグロとサケに比べ16:4(n-3)を高度に含有していた。
健康ボランティア30例に魚油を,20例に魚を,それぞれ摂取させ,摂取後の脂肪酸の血中濃度を測定した。その結果,1日推奨摂取量である10mLの魚油を摂取後,16:4(n-3)脂肪酸の血中濃度は著明に上昇し,摂取前値に低下するのに8時間を要した。また,摂取量を50mLに増やした場合,血中濃度の上昇時間も延長された。魚を摂取させた群では,ニシンやサバで血中16:4(n-3)脂肪酸濃度が著明に上昇し,マグロ摂取では影響は見られず,サケでは短時間の弱い上昇を示した。
結論:
がん化学療法を受けた患者へのサプリメント摂取に関する質問票調査と,健康ボランティアを対象とした魚油サプリメントまたは魚摂取試験の結果,魚油サプリメントや特定の魚にはがん化学療法の効果を減じる脂肪酸が含まれており,魚油の摂取後,同脂肪酸の血中濃度の上昇が長時間続くため、化学療法中の魚油摂取が治療に悪影響を与える可能性がある。
がん患者さんは、再発や死に対する不安、治療の副作用に対する不安、西洋医学への不信感、ネットでの情報の氾濫などによって、サプリメントに頼るケースは珍しくありません。患者さんがサプリメントの併用を希望した場合、標準治療に対する併用をいっさい認めない施設もありますが、明らかな有害性が報告されてなければ許可する施設もあります。一般の方々の中には、サプリメントや漢方薬、食餌療法などは副作用もなく、安全であると思われている人も多いと思いますが、今回の報告はそれに警鐘を鳴らすものになりそうです。以前ここでも書きましたが、他にも漢方薬やサプリメントなどの代替療法が副作用をきたす可能性については報告されています。
この論文の著者は、「今回の知見に基づき,さらなるデータが得られるまで,がん患者に対し化学療法開始の前日から終了の翌日まで一時的に魚油摂取を中止することを勧める」と述べています。しかし今回の報告は、あくまでも魚油や魚の摂取後の血中濃度を測定した結果を元にマウスの臨床試験の結果から類推したものに過ぎません。実際に魚油の摂取が化学療法剤の効果(生存率など)に悪影響を与えるかどうかについては、前向きの比較試験を行わなければわかりませんが、当面はこの勧告に従う方が無難かもしれませんね。
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