2009年7月10日金曜日

北海道乳腺診断フォーラム

年1回行なわれる、北海道乳腺診断フォーラムに参加してきました。

症例検討は3例。

症例1 多形性(ギザギザしたガラスを割ったような)石灰化の集簇が新たに出現した症例…一見、コメド(壊死)型の非浸潤癌に見えますが、多形性でも丸みを帯びているのがミソ。mucocele-like tumor(MLT)という良性病変でした。同じような石灰化でMLTだった患者さんを何人か経験しているので予想の範囲内でした。

症例2 境界が明瞭な腫瘍…線維腺腫などの良性腫瘍に見えますが、どれも少しずつ所見が合わない。悪性にしても典型的な充実腺管癌や粘液癌とも違う…。結局、特殊型の髄様癌という癌でした。北海道におけるMRI診断の第1人者の放射線科Drが、MRIで髄様癌を鑑別に挙げたのにはさすが!と思いました。

症例3 乳癌術後の対側乳房に多発する境界明瞭な腫瘤が出現した症例…これは同じような症例を2例経験しているのですぐにわかりました。わずかに浸潤部分を伴っていますが、基本的に多発する腫瘤自体は嚢胞内癌が連続したものでした。

いずれも良悪の診断が難しかった症例でしたが、これらのような症例の存在を知っているかいないかは、誤診を防ぐ意味でもとても重要なことです。このような症例検討会に参加する意味はここにあります。いかに多くの鑑別診断が頭に浮かぶか、が日常診療ではとても大切なんです。

その後は、国立がんセンターの病理Drの講演がありました。St.Gallen 2009の変更点についてやHER2についての詳しいお話などを伺いました。乳腺外科医にとっては大変興味ある内容でしたが、画像診断を主に仕事としている放射線技師や超音波技師には、少し難しかったかもしれません。

以前は年2回、このフォーラムを行なっていましたが、2年前くらいから諸事情で年1回になってしまいました。けっこうためになる研究会なので、ちょっと残念です。大学の同期で乳腺外科医が4人いるので、合同の症例検討会を行なうのも良いかもしれない、と考えています。

4 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

そのようなフォーラムがあったのですね。ためになってよかったです。^^拝聴してみたいです。最近は一般市民向けの講演会もさかんですよね。それだけ関心が高いのですよね。検診受診につながっていくといいですよね。^^kimikomew

hidechin さんのコメント...

kimikomew3824さんへ
今回のフォーラムは医師と技師向けのものですが看護師さんの勉強にもなると思います。一般市民向けの講演会はさかんですよね。少しでも一般市民の方々に乳がん検診にたいして興味をもってもらえるような努力はしていきたいですよね。

kimity0115 さんのコメント...

とても意義があるフォーラムですね。

患者によって、ひとつとして同じ症例はないですものね。
判断するのは経験しかないですものね。

先生方も毎日忙しい中、このような症例検討会に参加していただいて、一つでも多くの判断に悩む症例を勉強していただいているその姿勢に患者も安心して信頼することができますよ^^

私達もできることしていかねければ!って思います!

hidechin さんのコメント...

kimity0115さんへ
乳腺疾患の診断は本当に難しいです。経験を積めば積むほど難しいということを実感します。
さまざまな症例を持ち寄って、お互いに知識を共有する機会は、医師にとっても技師にとってもとても大切だと思います。
そういう積み重ねが患者さんにとってのよりよい診療に繫がると信じています。