スイス・ロシュ社は、治療歴のあるHER2陰性の進行性乳がん女性を対象としたAvastinとさまざまな化学療法の併用を検討した第III相臨床試験(RIBBON-2試験)において、Avastinと化学療法の併用群では化学療法単独に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間の延長が認められたことを発表しました。
Avastin(bevacizumab)は、VEGFという、腫瘍血管新生に関与するレセプターをターゲットとした分子標的薬(ハーセプチンやラパチニブと同じような作用)です。癌は転移・増殖するときには必ず周囲に血管を増やします。これは癌が大きくなるための栄養分をもらうために必要なのです。これを阻害することによって増殖を抑えてやろう、という目的で開発された薬剤です。Avastinはすでに進行・再発大腸癌に対して保険適応が認められており、今回はその効果が乳癌においても発揮されることが証明されたということです。
RIBBON-2試験は、多国籍多施設共同プラセボ(偽薬)対照無作為化二重盲検比較試験で、転移性HER2陰性乳癌の治療歴のある684名の患者さんが登録されています。試験では、主治医が選択した化学療法(「Taxanes:paclitaxel、protein-bound paclitaxelまたはdocetaxel」「Gemcitabine」「Capecitabine」「Vinorelbine」)とAvastinまたはプラセボの併用を評価しました。
今回の発表によるとAvastin群で無増悪生存期間(PFS)が有意に延長したという結果だったそうです。下記の通り、RIBBON-1試験で1st line(再発に対する初回治療症例)での効果が証明されたのに続いて、今回の臨床試験によって2nd line(既治療症例)でも有効であることが示されたというわけです。
詳細な試験成績は近く開催される医学会で発表される予定とのことです。この結果が日本でも認められ、承認されれば、新たな治療手段が増えることになります。早く承認されることを期待したいものです。
<参考 これまでに発表された乳癌治療におけるAvastinの主な臨床試験>
・E2100試験:2007年3月の転移性乳癌に対するAvastinの欧州承認の基となった臨床試験。paclitaxel単独に比べAvastinとpaclitaxelを併用した場合、がんの進行のない生存期間(無増悪生存期間)が2倍にまで延長する可能性があることが示された(対象は1st line)。
・AVADO試験:docetaxel単独に比べAvastinとdocetaxelを併用した場合、無増悪生存期間と奏効率(腫瘍縮小)が有意に改善された(対象は1st line)。
・RIBBON-1試験:転移性HER-2陰性乳がんの1st lineとして、taxaneベース、anthracyclineベース、またはXeloda(capecitabine)化学療法のいずれかとAvastin(bevacizumab)併用を検討した第Ⅲ相二重盲検試験。Avastin群で無増悪生存期間の有意な延長が確認された。
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