乳癌患者さんのセクシャリティの問題は、ほとんどの病院で対応できていないのが現状です。乳癌の術後は、乳房にメスが入ったという美容上の変化と精神的ダメージ、そして痛みが生じます。また、術後の化学療法やホルモン療法によって女性ホルモンの変化が起き、肉体的、精神的な影響を及ぼします。患者さんにとっては、とても重大な問題ですが、外来で患者さんから相談されることはほとんどありません。
なぜならいまだに乳腺外科医は男性が多く、こちらからも患者さん側からも聞きにくい問題ですし、女性医師に対しても、”癌の治療中なのにそんなことを聞いたらいけないんじゃないか”という患者さん側の気持ちもあるからです。また、同じ女性だからこそ、”手術していないあなたに私の気持ちがわかるはずない”と思って、聞くのを敬遠する患者さんもいらっしゃるかもしれません。
私の今までの経験上も、この問題に関して患者さんから聞かれたことは数度しかありません。
1.いつから性生活を始めても良いのですか?
2.性的な刺激を与えるような本を読んだら乳癌の再発を促しますか?
3.先日夫とセックスしたら入り口が切れて出血したんです…
思い出せるのはこの3つのケースだけです。
おそらくいろいろな問題を抱えていたはずですが、今まではその気持ちに応えることができていませんでした。実際、外来で唐突にそういう話をこちらからするのは難しいです。なんとか患者さん側からお話していただけるような雰囲気づくりをしていかなければなりません。やはり、外来の看護師が問診でチェックするようにするのが一番なのですが、そのためには患者さんのプライバシーに十分配慮した場所(できれば個室)が必要だと思います。
このブログで具体的な細かい問題点と解決策を書くことは難しいですので、参考になるHPと本をご紹介します。
<ホームページ>
乳がんJP 乳がんの手術後:幸せな性のアドバイス(http://www.nyugan.jp/after/gender.html)
日本性科学会 カウンセリング室(http://www14.plala.or.jp/jsss/counseling/)
<書籍>
がん患者の<幸せな性> アメリカがん協会編 高橋都+針間克己訳(春秋社) 定価 2000円
*病院に、アストラゼネカ(製薬会社)が作成した”乳がん患者さんとパートナーの幸せな性へのアドバイス”というパンフレットが置いてあるかもしれません。小冊子ですが参考になると思います。
2 件のコメント:
確かに一番相談したいことなのに、一番相談しにくい問題ですよね~・・。
なので私も、アストロゼネガのパンフレット病院で見つけて持ち帰りました。
これって国民性もあるんですかね?
日本人はこういうことに関して、恥ずかしいので相談するには躊躇してしまいがちだけど、欧米では結構オープンなイメージで質問してそうです。
問題の本質から、妊娠を強く希望する正当な理由(?)がある患者さんからの、いつから再会していいのかとか、治療方針を通して、指導を求めて相談する質問とはまた違いますものね。
病気になる前と同じように、普通に性生活を営みたいだけなのに、患者さんにとって、アフターケアが一番必要な事柄なはずなのに・・・
相談したいのに悩んでる患者さんも結構いらっしゃると思います。
もちろん文献などを読んで事足りるケースもあると思いますが・・・
こういうデリケートな問題ほど、人対人で解決しないといけない事柄なんではないかなとも感じてはいますが。。
でも私も主治医は男性ですし、そういう問題で、何らかの切羽つまったような悩みを持つ状況でないかぎり相談はしないと思います。
なんでも話せるような信頼関係を築けていてもやはりなかなか話せる事柄ではないでないですしね。
でも私の場合、たまたま治験に参加しているので、男性の主治医には聞けない分、女性の治験コーディネーターさんに、結構いろいろ相談できる環境なので恵まれてるなと思っています。
心配事があったり、疑問に思ったことがあったので以前、思い切って相談したことがあります。
それでも恥ずかしかった気持はありましたが、とても親切丁寧に答えていただき相談してよかったなと思いました。
こういった問題が気軽に話せるような環境がもっと整えられればいいですね。
患者さんの気持の負担ももっと軽くなると思います。
kimity0115さんへ
そうですね。アメリカの医療には詳しくありませんが、精神科(メンタルクリニックみたいなところ)がかなり大きな役割を果たしているのではないでしょうか。夫婦喧嘩も相談に行くらしいですからね!
日本でももっと気軽に家庭問題を相談できるような家庭医みたいな精神科のクリニック(できれば女医さん)があれば、乳癌術後の性生活の相談もしやすいのかもしれませんね。でも確かに国民性もあると思います。
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