2009年8月28日金曜日

骨転移1 骨転移による癌性疼痛〜メタストロン注の適応の難しさ

骨転移によって起きる強い疼痛に対する治療の進歩は目覚ましいものがあります。現在行なわれている主な治療を以下に示します。

①鎮痛薬…消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、医療用麻薬(モルヒネ)、鎮痛補助薬(抗うつ薬など)
→痛みそのものを抑える治療です。
②放射線治療(外照射)…最も即効性があります。骨折の予防にもなります。しかし、同一部位に繰り返し行なうことはできません。
③ビスフォスフォネート療法…ゾメタに代表される薬剤で、疼痛軽減、骨折の予防、高Ca血症の治療のほか、癌自体に対する抗腫瘍効果もあると言われています(既述)。

そして2007.10から使用可能になった治療が、メタストロン注(塩化ストロンチウム)です。

メタストロン注は、骨シンチのときに使うような核種と言われる放射性物質を注射して行なう内照射という放射線治療の一つです。1回の静脈注射ですみますので外来での投与が可能です。
疼痛緩和に有効で、外照射と異なり繰り返し行なえる利点があります(3ヶ月以上あける必要があります)。

副作用は、一時的な疼痛の増強(投与後2-5日)、骨髄抑制が主で、ホルモン療法との併用は可能ですが、抗がん剤との併用はできません。

対象患者さんは、骨シンチグラフィで多発性の骨転移を認め、なおかつ鎮痛薬で十分に疼痛がコントロールされない、通常の外照射が行なえない(体位がとれない、頻回の通院が困難など)などです。

大変期待している治療なのですが、残念ながら今のところまだこの治療の恩恵を受けた患者さんは当院ではあまりいません。

なぜなら、この治療の適応基準に”白血球数3000以上、好中球数1500以上、血小板数7.5万以上、ヘモグロビン9.0以上”というのがあるからです。乳癌の再発治療を長く受けている患者さんでメタストロン注を使用したいと考えるような方は、すでに何度も化学療法を受けており、外照射もしている場合がほとんどです。当然、骨髄機能は低下していることが多いのです。ですから、いざ使いたいと思ってもこの基準で断られてしまうケースがあるのです。まだ、使用経験が十分でないこともありますので慎重に行なわざるを得ないのは理解できますが、残念です。

疼痛自体はかなり麻薬と外照射でコントロールできるので、どうしてもメタストロン注は後回しになってしまいます。そしていざ使いたいと思うときには、骨髄機能が基準を満たさない…。この治療の位置づけがなかなか定まりません。タイミングが難しいです。

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