2009.12.8のJAMA(online版)に、”Soy Food intake and Breast Cancer Survival”という中国のXiao Ou Shu先生の論文が載っています(私のブログを読んでくれている製薬会社の方にいただきました)。以前書いたように、大豆に含まれるイソフラボンは植物エストロゲンの一種で、構造はエストロゲンに似ていますが、乳癌に対してはタモキシフェンと同じようにヒトのエストロゲンの働きを妨げるのではないかと推測されており、乳癌の発生や再発の予防効果があるのではないかと言われています。
今回のXiao Ou Shu先生の報告によると、上海の20-75歳の5042人の乳癌患者さんのコホート研究において、平均観察期間3.9年の時点で大豆タンパク摂取量が多い患者さん(15.31g/day以上)は、少ない患者さん(5.31g/day以下)に比べると生存率(HR=0.71…危険度が29%減少するという意味)と再発率(HR=0.68…危険度が32%減少するという意味)が有意に良かったということです。
あくまでも1施設の報告ですので、これが正しいかどうかは断定できませんし、何度も述べているようにこのような疫学研究は非常にバイアスがかかりやすいので、今後逆の結果が出ることもあるかもしれません。例えばこの研究では、乳癌の診断時に食生活の聞き取り調査を行なっていますが、その後もまったく同じ食生活を送ったかどうかはわからないのです。
また、厚生労働省研究班(倉橋典絵:国立がんセンター予防研究所)が今年の3月に発表した研究では、イソフラボンの過剰摂取は、肝癌の発生率を3-4倍高めるとのことです。これもあくまでも1施設の研究報告ではありますが、エストロゲンには肝癌発生の抑制効果があると言われていますので、理論的にはありうることです。肝癌のほとんどは、B型、C型肝炎ウイルスの持続感染をベースとして発症してきますので、これらによる慢性肝炎や肝硬変のある患者さんは念のため注意した方がよさそうです。
いずれにしても、このような食品やサプリメントについては、まだまだわからないことも多いので、過剰摂取も過少摂取もしないように、バランスよく食べるのがやはり一番良いのではないかと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿