2010年1月7日木曜日

抗癌剤の副作用6 腫瘍崩壊症候群

腫瘍崩壊症候群は、抗癌剤治療などによる急激かつ大量の細胞死によって、大量の核酸、カリウムイオン、リン酸が血中に流出し、高尿酸血症などを引き起こす状態のことを言います。核酸の代謝により高尿酸血症が悪化すると急性腎不全を引き起こし、致死的な結果をもたらすこともあると言われています。

この症候群は、血液系の悪性腫瘍(急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、マントルリンパ腫)や神経芽細胞腫、横紋筋肉腫といった、細胞数が非常に多く、増殖の速い腫瘍に多くみられます。

乳癌で引き起こされることはまれで、私には経験がありませんが、増殖スピードが速いトリプルネガティブ乳癌や分化度の低い化生癌などでは起こりうる副作用です。特に最近では術前化学療法が盛んに行なわれています。術後の補助療法とは異なって、癌細胞の多い状態で投与するため注意が必要かもしれません。

このような状態が起きた時、以前は、高尿酸、高カリウムを改善するため大量の点滴を行っていました。しかし、大量の水分負荷は心臓に負担をかけ、心不全を起こす危険性があります。また、通常の高尿酸血症の薬では即効性がなく、効果も不十分でした。

最近国内で認可された、ラスブリカーゼ(商品名 ”ラスリテック” サノフィ・アベンティス社)という尿酸酸化酵素製剤は、この腫瘍崩壊症候群による高尿酸血症を水分負荷をかけることなく予防・治療できる注射薬です。2003年以降ASCOガイドラインで認められていた製剤で、ようやく国内で使用可能になりました。ただ、異種蛋白の遺伝子組換え製剤ですから、アナフィラキシーを起こす可能性がありますので注意が必要です。

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