2010年1月13日水曜日

荻野吟子と女性乳腺外科医

荻野吟子という女性をご存知ですか?

荻野吟子(1851年 - 1913年)は、日本で最初の女性の医師です。

吟子は16歳のときに結婚。しかし19歳で夫に淋病をうつされ、順天堂医院に入院。、男性の医師たちに囲まれて診察を受けた屈辱的な経験から、女医を目指した人です。当時は女性が医師になるという制度がなく、数々の差別と困難に遭いましたが、長年にわたる努力と優秀な成績によって女性医師第1号となったのです。医師免許取得後、産婦人科を開業し、多くの女性患者さんたちの診療にあたりました。そしてその後の女性達が医師を目指せるように、道筋を作った偉大な女性です。

私が荻野吟子の存在を知ったのは、大学時代によく読んでいた渡辺淳一の小説の一つ、”花埋み”を読んだことがきっかけでした。もし興味のある方は新潮文庫から出版されていますので読んでみて下さい。

さて…なぜこんな話を書いたかというと、ふと日本で初めての乳腺外科医は誰なのか?という疑問がわいたからです。

これは調べるのは困難です。なぜなら、”乳腺外科”という科が標榜できるようになったのはつい最近だからです。以前は、乳腺だけ診療している外科医というのはきわめてまれでした。癌専門病院でさえ、10数年前まで乳腺グループに所属していても他の手術にも入っていたのです。何をもって最初の女性乳腺外科医と言うかによって答えは変わってきます。

最初に乳癌の手術をした女性外科医? 誰かは存じませんが、その後乳癌を専門にしていたかは不明です。
最初に乳腺だけを診るようになった女性外科医? たぶんどこにも資料はないのではないでしょうか?
最初に乳腺専門医を取得した女性外科医? おそらく複数いるはずです。

というわけで結局不明です。どなたかご存知であれば教えて下さい。もしかしたら、非常に博学なK先生ならご存知かもしれません。今度学会でお会いしたときにでも伺ってみます。

現在においても、乳腺専門医を取得するためには、外科系の場合は外科専門医を持っていなければなりません。ですから一般外科を何年も研修する必要があります。

体力的に男性に比べてハンディがあり(まったく同等の方もいらっしゃいますが…)、結婚・出産・育児で仕事に制限が出てしまう可能性のある女性にとって、外科医を続けるということはかなり大変なことです。ですから、女医さんが外科専門医を取得して、さらに乳腺外科医になった、というだけで、私は頭が下がります。

私の病院でもそうですが、外科医になりたいと思って外科に入っても、病院や科にそういうハンディを支えてあげるだけの余力がないために、結局外科医を断念せざるを得ないケースがけっこうあるのが実情です。

乳がん検診をしていると、特に若い女性からは、
”乳がん検診はやっぱり恥ずかしいです。女医さんだとかかりやすいんですけどね…。”
という意見をよく耳にします。

荻野吟子の時代とは比べようもありませんが、こういう要望を持っている女性は多いはずです。志を持った女性外科医が乳腺専門医まで到達できるような外科の体制づくりを考えていかなければならないと感じています。

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