2010年1月6日水曜日

アルコールと乳癌罹患の関係

昨年末、アルコール摂取と乳癌罹患に関する、厚生労働省研究班によるコホート研究(JPHC Study)の報告がありました。

新聞でも取り上げられていたのでご存知の方も多いと思います。欧米では以前からアルコールは乳癌の発生を促すのではないかと言われていましたが、無関係とする報告もあり、少なくとも日本人における検証は十分になされていませんでした。

今回、国立がんセンター予防研究部から発表された報告は、新聞報道だけからは、飲酒量と乳癌発生率の関係を論じるのに食生活や肥満度の評価がされていないのではないかと感じました。

つまり、”飲酒する女性は、おつまみなどで高脂肪食を摂取しやすく、肥満にもなりやすい傾向があるので、アルコール自体ではなく、これら(高脂肪食、肥満)が発生率を高めた要因ではないか?”という疑問です。

しかし、予防研究部のHPに掲載されている報告の要旨(http://epi.ncc.go.jp/jp/jphc/alcohol_bc/)を読んでみると、

”尚、分析にあたっては、乳がんに関連する飲酒以外の要因(年齢、体重、喫煙、初潮年齢、妊娠回数、閉経年齢など)が結果に影響しないよう考慮しました”

と書いてありますので、少なくとも肥満度についての影響は考えなくて良さそうです。食生活については、何度も書いているように、長期間の正確な摂取量を調査するのは困難ですので、今回の検討では評価していないようです。

以上から、今回発表された、

”アルコール摂取量が多い人(およそビールで大瓶1本、日本酒で1合、ワインで2杯、ウイスキーでダブル1杯以上)は、全く飲まない人に比べると、およそ1.75倍の乳癌発生リスクがある”

という結果は、それなりに信憑性が高いデータではないかと思います。ただ、上記の量以下の飲酒量の女性では、まったく飲まない女性とほぼ同じリスク(1.06倍)ですので、適量のアルコールであれば、あまり心配しなくて良いのかもしれません。

アルコールが乳癌発生を促す原因としては、エタノールの分解産物である、アセトアルデヒドの影響が示唆されていますが、確かなことはわかっていません。今後の解明が待たれます。

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