2011年1月23日日曜日

抗癌剤の副作用14 薬剤漏出性皮膚障害


先日も書きましたが、私たちが抗がん剤を使用するのに非常に神経を使う理由の一つがこの副作用(合併症)です。抗がん剤は基本的には通常の組織には有害ですので、点滴漏れを起こすと重い障害を引き起こすことがあります。ですから抗がん剤の投与中には、頻回に点滴の落ち具合いや挿入部位に腫れがないかをチェックしたり、安全のためにCVポートを挿入したりするのです。

しかし、十分に注意していても施行する側も人間ですし、点滴される側も様々な条件を持った患者さんたちですので、このような合併症を起こしてしまうことはあり得ます。

薬剤漏出の原因は、
①不適切・不十分な血管確保
②患者さんの体動による留置針の逸脱
③血管の脆弱性(高齢など)
④CVポートの破損や閉塞状態での圧入
などです。大部分は十分注意すれば防げるのですが、それでも起きてしまうことがあります。

薬剤が漏出した場合に、皮膚や軟部組織の障害を起こすかどうか、そしてその程度がどのくらいかは漏出した薬剤の種類と量によって異なります。抗がん剤は皮膚障害を起こすリスク別に、少量でも炎症を起こし壊死をきたしやすいビシカントドラッグ(アドリアマイシンやエピルビシン、マイトマイシン、ナベルビンなど)と多量に漏れると炎症を起こすイリタントドラッグ(ドセタキセル、パクリタキセル、、ジェムザール、5FUなど)、漏れても炎症を起こしにくいノンビシカントドラッグ(メソトレキセートなど)に分けられます。

抗がん剤が漏れた場合の症状は、以下のとおりです。
漏出直後:無症状あるいは、軽い発赤・腫れ・痛みの皮膚症状が出現
数時間~数日後:水泡→潰瘍→壊死形成へと移行
→さらに重症化すると瘢痕(はんこん)形成、ケロイド化し、漏出部位によっては運動制限をきたして外科的処置(手術)が必要になる

万が一ビシカントドラッグや多量のイリタントドラッグが漏れた場合には迅速な処置が必要となります。当院で行なっている手順は以下の通りです。

①直ちに抗がん剤の投与を中止。ラインは抜去せず薬剤名・量を確認し、 シリンジで出来るだけ同一ラインより薬液を吸引除去する。
②漏出が大量であれば、外科的処置を検討する。
③ 漏出部位は圧迫しない。保冷することの効果のエビデンスはない。ただしナベルビンは患部を保温すると良いと言われている。
④ ステロイド剤の局所注射
⑤ステロイド軟膏外用(症状消失まで)。アクリノール湿布は急性期の冷却効果のみしかなく、皮膚障害予防のエビデンスはない。
⑥翌日には外来受診をしていただき、患部の観察を行なう(できれば漏出直後から写真を撮影しておいて経過を見るのが望ましい)。

写真は漏出範囲のマーキングをしてステロイドの局所注射をしたところです。ジェムザールが漏出しましたが障害は発生しませんでした。

患者さんとして注意すべきことは、点滴中は必要以上に動かないこと(特に点滴している部位に気をつける)、もし痛みや腫れ、違和感があった場合はすぐに看護師に言うことです。対処が早ければ大事に至らない可能性が高くなりますから。

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