2011年10月5日水曜日

エポジンのがん化学療法による貧血に対する適応申請却下

2年ほど前にここでも書きましたが(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/11/blog-post_24.html)、がん化学療法による貧血に対して、中外製薬がエポジンという薬剤の保険適応拡大を申請していましたが、残念ながら却下されてしまいました。

通常、化学療法による骨髄のダメージは、まずは白血球に現れ、次に血小板、ということが多く、赤血球が減少する、いわゆる貧血が起きることは乳癌の初期の化学療法ではあまりありません。

ただし再発後、長期にわたって化学療法を繰り返していたり、骨転移で放射線治療を行なっている場合には、貧血が進行してしまう場合があります。ヘモグロビンが7を切ってしまうと輸血を考えなければなりません(放置すると息切れや倦怠感、心不全をおこします)。今までは輸血以外の治療はありませんでした。鉄剤は鉄が足りないわけではないので無効なのです。実際、いま治療中の患者さんの中にも、貧血で輸血をやむを得ず繰り返している患者さんが数人いらっしゃいます。

エポジンは、もともと生体にあるエリスロポエチンという腎臓で作られるホルモンを遺伝子組み換えで製品化した薬剤です。この薬剤は、主に腎機能低下(透析患者さんなど)に伴う貧血に対して保険適応があり、骨髄の赤血球を作るもとになる細胞を刺激して増加させる作用があります。大出血が予想される心臓外科手術などに際して自己血貯血目的で使用されることもあります。今回の申請は、輸血しか手がなかった化学療法中の貧血に対して有効な治療手段になるのではないかと期待していたのです。


今回、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会が、エポジンの化学療法にともなう貧血の効能追加について承認を却下した理由は、副作用リスクが同薬の貧血を改善する有効性を上回ると判断したからだそうです。この副作用の中には、がん患者の生命予後の悪化や、腫瘍増殖の促進というリスクへの懸念が海外で報告されていることが挙げられています。このような副作用が真実なのであれば化学療法の効果を相殺してしまうことになりますのでやむを得ないのかもしれませんが、どのような臨床試験のデータなのかが興味があります。今度中外製薬の方がいらしたら教えていただきたいと思っています。

4 件のコメント:

カノン さんのコメント...

知りませんでした、鉄剤では意味がないって。
抗がん剤での治療をするようになって、白血球も抗がん剤の種類により減る時には減ってしまうのですが、増やす注射をするほどでもなくきました。ただ、一時ちょっと貧血気味だったので、フェロミアとシナールを服用しています。最近、ずっと血液検査も大丈夫だったので、そのおかげかと思っていたのですが・・・
ちなみに、貧血気味だった時でも、赤血球やヘモグロビンは減っていましたが、血小板は参考値を下回ったことは一度もなくて、食欲が落ちた時などにきちんと栄養がとれてないから貧血気味になるのかな、と漠然と思っていました。
ということは、鉄剤の薬をやめて食事などをきちんとしていればいい、ということでしょうか?主治医にも、フェロミアまだ要る?と言われたことがありました。薬はできればあまり飲まない方がいいですよね?

hidechin さんのコメント...

>カノンさん
「鉄剤が無効」と書いたのは、化学療法や放射線治療が原因の貧血の場合です。カノンさんの場合は、鉄剤の内服で改善したようですので女性に多い鉄欠乏性貧血だったのではないでしょうか?(女性は月経量が多いなどでもよく鉄欠乏性貧血になります)

薬は飲む方が良いとか飲まない方が良いとかいうものではなく、飲む必要があれば飲む、飲む必要がなければ飲まない、と考えるべきです。効果がないのにだらだら飲み続けたり、すっかり改善して飲む必要がないのに服用し続けるのはお勧めしません。
ですからカノンさんの場合は、医師から言われたということも考えると貧血が良くなったのであれば一度薬をやめて、鉄分の多い食事をきちんと摂取するということで経過をみてもよいと思いますよ。もちろん、食事以外に鉄欠乏の原因があればまた貧血になることもありますから定期的に検査を受けることが大切です。医師の指示に従って下さいね。

カノン さんのコメント...

早速のお返事ありがとうございます。
一度やめて様子をみてみようかな、とも思っていますが、抗がん剤の副作用で食事がなかなか以前ほどにはとれなくなりまして、数値的には貧血でなくても坂道で息切れするような気がします。それに白血球が下がると赤血球も下がってしまって、「L」のマークがついてしまいますので、様子を見て考えたいとおもいます。
ありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>カノンさん
そうですね。カノンさんの場合は抗がん剤の影響と鉄欠乏が混在しているのかもしれません。
よく主治医の先生とご相談の上で決めて下さいね。お大事に!