2012年1月19日木曜日

ラジオ波焼灼療法(RFA)に対する考え方

ラジオ波焼灼療法(RFA)などのNon-surgical ablation(メスを入れないでがんを焼く方法)は、乳がん患者さんにとってとても魅力的です。誰しも大切な乳房にはメスを入れたくないはずですから。しかし、これはまだ研究段階の治療法であるということを十分に説明しない医師がいまだに残念ながらいるようです…。

将来的には、”限局した早期乳がん”に対する診断・治療は以下のような流れになるのではないかと個人的には思っています。

①MRなどによって病変が限局していることを確認する
②病理組織診断(マンモトームなどによる)でがんの性質(ホルモンレセプターやHER2、Ki-67など)を調べる
③センチネルリンパ節生検を行なってリンパ節転移の有無を調べる
④ablation(臨床試験で有用性が確立された方法)を行なう
⑤全乳房照射を併用する
⑥②③の結果を踏まえて必要な補助療法(ホルモン療法や化学療法)を行なう

しかし残念ながら今の段階では④の「有用性が確立されたablation」というものがありません。以前ここで書いたように、2001年にFDAで臨床試験が最初に認可されたのは、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)のみでした(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.com/2009/11/mr.html)。現在FUS後に放射線治療を加えて非切除とする臨床試験中(BC004)で非常に期待している治療法ではありますが、最終結果はもう少しかかるのかもしれません。ましてや日本国内で多く行なわれているRFAはまだ臨床試験が不十分な段階です。にもかかわらず、臨床試験以外のRFAがなし崩し的に行なわれていた時期があり(今もまだあるようです)、適応を守らないRFAによって局所再発や合併症などの不利益を受けた患者さんが他の施設に流れているということが問題になり、2010年に日本乳癌学会が「対象患者を限定し、臨床試験として実施するように」と会員に通知する事態になりました。

2011年版の乳癌診療ガイドラインにも
CQ「Non-surgical ablationは早期乳癌の標準的な局所療法として勧められるか」に対して、
<推奨グレードC2> Non-surgical ablationが乳房温存術と同等の局所療法効果を有するとの根拠はなく、基本的に勧められない
となっています。


このような状況ですので、「切らずに乳がんを治せる」と宣伝することは正しい行為ではありません。たとえRFAの経験が豊富な施設であったとしても、きちんと臨床試験段階の治療であること、それに伴う利益と不利益を正しく説明するべきだと考えます。症例を増やしたいがために、都合の悪い情報を隠してこの治療を勧めるなどということは、起こりうる最悪な状況を想定せずにプラス面のみ強調してリスクに対する十分な説明と備えを怠った結果、大きな事故につながった某電力会社と同じです。

臨床試験に参加しているほとんどの医師はきちんとした説明をしているはずです(臨床試験ですので)。この治療が正しく発展、普及するためにも患者さんに正確な情報提供を行なうということをablationを勧める全ての医師は是非守って欲しいと思います。

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