2012年5月30日水曜日

乳腺術後症例検討会 19 ”毛芽腫&キューバの医療”

今日は定例の症例検討会が行なわれました。

1例目は血性乳頭分泌で受診され、分泌物細胞診がClassⅡ(良性)、穿刺吸引細胞診がClassⅣ(悪性疑い)、乳管腺葉区域切除術で微小浸潤がんと診断された症例、2例目は、大きな境界明瞭な腫瘍で超音波検査では嚢胞内がんのように見え、細胞診でも悪性を強く疑った毛芽腫(毛根の細胞由来の良性腫瘍)の症例、3例目は比較的急速に増大し、MRでは悪性のパターンを呈した乳腺症型線維腺腫、4例目は比較的小さな境界明瞭な腫瘤で検診発見された充実腺管がんの4症例でした。

2例目は細胞診を見直しても皮膚由来の腫瘍であることを考えなければ悪性と診断せざるを得ない症例でした。乳房の厚みのほとんどを腫瘍が占めており、乳腺発生の腫瘍であることを疑いもしなかったため、この病理結果には大変驚きました。乳房に発生して乳がんとの鑑別が困難だったという報告は聞いたことがないので非常に珍しい腫瘍だったと思います(毛芽腫は顔や頭に多いと言われています)。

症例検討のあと、関連病院のH医師が先日医療交流でキューバを訪問してきた写真のスライドを見せていただきました。キューバは医療システムが進んでいるという話を聞いていましたが、実際の病院内の設備は非常に古く、レントゲン写真は何十年も昔のような現像機を使用しており、外に出てフィルムを手で振って乾かしていたのには一同びっくりでした。ただ、予防接種の積極的普及によって乳児死亡率は激減し、医大の数も急速に増加しているそうです。平均寿命は77才(何年の統計かは不明)とのことで、必ずしも最新医療設備や治療の普及が寿命を延ばすことにつながるわけではないのだと感じました。

2012年のWHOの統計による平均寿命は、日本が83才で1位、米国は79才で29位、キューバは78才で35位ですので、先進国の代表である米国とレントゲンフィルムを人力で乾燥させるキューバの寿命はほとんど変わらないということになります。医療の進歩が寿命の延長に直結していないのか、医療以外の生活の変化(飽食、運動不足、化学物質の摂取過剰、晩婚、少子化など)によって結果的にプラスマイナス0になっているのか、非常に興味深いところですね。

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