2012年9月3日月曜日

副作用情報

発売後の薬剤の使用で重大な副作用が発生した場合、緊急情報として製薬会社からレターが届きます。本来、安全性に関しては臨床試験で十分に確認されていなければならないのですが、実際問題としては発売後に数多くの症例に投与して初めて判明する重篤な副作用もあります。ですからそういう場合にこのような情報が私たちに届くのです。

以前もある肺がん治療薬(分子標的薬)で間質性肺炎の死亡例が多数発生して問題になりました。製薬会社側としては、長い年月と開発費をかけて発売までこぎつけた薬剤をできるだけ多く売りたいと考えるのは自然なことです。そして私たち医療者側としてもできるだけ効果のある薬剤を患者さんに使用してあげたいと考えます。もちろん、進行・再発がんで苦しんでいる患者さんにとっても効果の高い新薬を待ち望んでいるのは当然です。しかし、それは安全性が担保されている、または副作用のリスクが判明しているというのが前提です。

最近はネットの情報が満ちあふれています。医療情報についても同様です。ここに書く内容も医療関係の情報を元にしているケースがよくあります。その中には副作用情報も含まれています。ただ、このような情報は、当然ですがネット配信される前に製薬会社側としては把握しているはずです(そもそも情報元は製薬会社ですので)。

最近、ある薬剤の重篤な副作用情報が出されました。しかし、私が得た情報は、①ネットからの定期配信される情報②病院の薬剤師からの情報③製薬会社のMR(医薬情報担当者)からのメール(詳細は面談で報告)という順番でした。これはおかしな話です。一番最初に情報を把握している製薬会社側から直接薬剤を使用している医療関係者に情報を提供すべきではないかと私は思います(配信されるネット情報は全ての関係医師が見ているわけではありませんし、そのために私個人のメールアドレスもMRに教えています)。今日、そのMRが見えたのでその旨を伝えました。

一般的に良い情報(○○に対する効果が認められた、××よりも効果があったなど)は、論文になる前からでも提供されますが、悪い情報に関しては提供に時間がかかる傾向があるのかもしれません(十分に因果関係を確認するためかもしれませんが、良い情報に関しては十分なエビデンスのない学会発表レベルのものまで提供されることがあります)。特に新薬の場合は、患者さんの安全性を第一に考えて出来るだけ迅速な副作用に関する情報提供をお願いしたいものです。

4 件のコメント:

temari さんのコメント...

いつも色々と教えていただきありがとうございます。temariです。
抵抗むなしく先月から抗癌剤治療が始まりました。腫瘍マーカーの不安定さに加え胸水の貯留がみられ、さすがにわがままばかり聞き入れてはいただけませんでした。ウイークリータキソールデビューです。白血球値が元々低いので、数値を見ながらの隔ゝ週になっていますが。
アバスチンの併用はないのですが、タキソールの効果のない(なくなった)場合追加することもできるのですか。主治医は効果と副作用を明らかにするためか、まずは単剤での治療を考えていらっしゃるようです。副作用が独特というアバスチンはかなり慎重に始めるお薬なのでしょうか。生存期間に差がない、ということなら私自身もちょっと考えてしまいますが、自分にとってどうなのかはやってみなければわからない、難しいですね。
そして、以前からこちらで情報を教えていただいていましたが、いよいよゾメタからデノスマブに変更になります。カルシウムのサプリメントを飲みながらの治療とのこと、カルシウム剤は保険適応ではないということですね。
どんどん新しい薬や治療法が出来、恩恵にも預かっているのですが、タイムリーに正しく情報を得て自分の治療に活かしていくのは難しいものです。副作用の情報も含め、先生のブログを参考にさせていただいています。これからもよろしくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>temariさん
こんばんは。タキソール(パクリタキセル)を始めたのですね。単剤で始めるか、アバスチンを併用するかは主治医の考え方もあるかと思います。PFS(無増悪生存期間)に関しては併用した方が良いのはデータ的には確かだと思いますが、副作用のことも考えてのことなのだと思います。このあたりは施設によって、または主治医によって多少の違いはあると思います。

もし効果が不十分とわかった時点でアバスチンを併用するという考え方も悪くはないとは思いますが、効かないタキソールをそのまま併用することに違和感を覚えるのも事実です(パクリタキセル単剤で効果が見られたあと、しばらくたってから再投与するのであれば、アバスチンとの併用の効果は期待できるのですが)。ただ、現時点の保険適応上は、アバスチンはパクリタキセルとの併用しか認められていませんのでやむを得ないのです。

アバスチンの副作用についてですが、投与経験が多くないので何とも言えませんが、高血圧はかなりの頻度で起こります。蛋白尿の発生もあります。鼻出血などの出血にも注意が必要です。ただ何ともない人もいますので、やってみないとわからないというのが正直なところです。

デノスマブについては十分な低カルシウム血症の備えが必要です。カルシウム剤とビタミンDは私の施設では保険診療で処方しています。添付文書上もこれらを併用するように記載されていますので保険適応で問題ないのではないかと思いますが…(保険適応を認めないようならデノスマブを認可した厚生労働省に問題があります)。死亡例や重篤な低カルシウム血症発生例をみてみると、比較的急激な低下をきたし、あまり前駆症状(いわゆるテタニーと言われる口唇や指先のしびれから引き続いて起きる手指などのつっぱり)がはっきりしないまま心停止や意識障害を引き起こした例もあるようですし、投与後かなりの日数がたってから発生した症例もあるようですので、当面の間は毎週血液検査を受けたほうが良さそうです。

取り急ぎ以上です。治療の効果が期待通りにいってくれると良いですね。それではお大事に!

temari さんのコメント...

お忙しい中早々のご回答をありがとうございます。幾多のデータや患者の全身状態から最適の治療を選択されていると信じ、都度説明を求めたいと思います。今日三回目の投与を強行しましたが、今後は投与→休薬・血液検査の隔週サイクルで続けていきます。今日はチラとエリブリンの話も出ました。再発となると、治療法や期間が患者によって異なるでしょうし、患者も勉強をしていかなければならないですね。自分の価値観も整理して上手く伝えていきたいです。先生からの情報、参考にさせていただきます。

hidechin さんのコメント...

>temariさん
順調に治療が進むことをお祈りしています。
お大事に!