2013年9月6日金曜日

再発治療終了のタイミング…判断は難しいです…

患者さんのことを一生懸命考えても医師の間で意見が異なることはよくあります。特に再発治療に関してはエビデンスが乏しいこともあり、症例ごとに治療法の選択や治療をいつまで継続するかの判断は異なります。

再発患者さんの状態が悪化して治療変更を繰り返していく場合、積極的治療を中止する判断基準はどこにあるのか今でも私には正確にはわかりません。日本でもHortobagyiのアルゴリズムを基本に考えている施設が多いと思いますが、再発に対する化学療法を何レジメン行なうかについては施設、医師によって多少異なるようです。また、次々に新しい治療が使用できるようになったこともあり、実際はレジメン数では決めきれないように思います。私の患者さんの中にも全てのホルモン療法をやりつくし、抗がん剤を点滴で5レジメン、内服の抗がん剤を5種類投与しながら15年経過している方もいらっしゃいます。

一方、他に抗がん剤の治療選択肢があっても、これ以上の積極的治療はやめた方が良いと考える場合もあります。例えば全身状態が悪すぎて抗がん剤に耐えられない状況になってしまっている場合は、仮にその治療が少し奏効していたとしても抗がん剤を継続することは患者さんのためにはならないと私は考えています。この判断を見誤ると、患者さんのための治療ではなく、医師の自己満足の治療になってしまう可能性があります。私たちが治療をしている対象は画像上のがんの大きさや腫瘍マーカーの値などではなく、患者さん自身だからです。

私も今までの乳腺外科医としての経験の中で、亡くなる直前まで抗がん剤を投与していた患者さんをたくさん見てきました。昔はそれもしかたのないこととして考えられていましたが、今はそのような治療方針を立てたことは自分たちの誤りだと考えるようにしています。ただ実際はこの判断が非常に難しいのです…。

ある患者さんは、脳転移で放射線治療を繰り返したのですがすぐに再発してしまい、大変厳しい状態にありました。それまでに強力な抗がん剤はすでに2レジメン行なっていました。他に未使用の抗がん剤はありましたが、脳転移は抗がん剤が非常に効きにくい再発部位のため、患者さん、ご家族と相談し、結局それ以上の積極的治療はせずに緩和治療を選択したのです。病状から余命は短いと思いましたが、まったくの無治療で6ヶ月間、穏やかに過ごすことができました。

患者さんができるだけ長く、穏やかに生活できるようにするためには、いつまでどのような治療を行なえばいいのか、私はこれからもずっと悩み続けると思います。

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