2014年12月4日木曜日

中間期乳がんをなくすことは可能か?

現行の乳がん検診は2年に1回の視触診とマンモグラフィということになっていますが、きちんと定期的に検診を受けていたのにその間でしこりを自覚して受診されることが稀にあります。このようにして発見された乳がんを”中間期乳がん”と言います。どうしてこのようなことが起きるのかについては以前ここでも書きました(http://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2010/04/100.html)。

明らかな見落としは別として、やむを得ないケースというのは時にあります。中間期乳がんに遭遇すると、非常に心が痛み、すぐに前回の検査所見を確認します。最近経験したケースでも前回のマンモグラフィを確認しましたが、やはりその目で見てもまったく病変を指摘することはできませんでした。この方は40才台で、乳腺濃度も高めの方でしたので、超音波検査を併用していたらもしかしたら病変を指摘できたかもしれません。そういう意味では、現在行なわれているJ-STARTの臨床試験結果が待たれるところです。

また数年前に、やはり検診マンモグラフィで異常がなかった(厳密に言うと石灰化はわずかにありましたが異常と取るだけの所見がありませんでした)方が、1年も経たないうちに無料クーポンが届いたので検診を受けたケースがありました。普通なら、こんな短期間で検診を受けるのはあまり意味がないと考えるところですが、この方はその短期間のうちに石灰化が明らかに増加していて、結果的に乳がん(浸潤がん)と診断されたのです。たまたま来たクーポンで救われたケースでした。もしクーポンが来なかったらおそらく中間期乳がんとして診断されていたのではないかと思います。

こう考えると検診で全ての乳がんを早期発見するのは簡単ではないことがわかると思います。それをカバーするために自分でできることは、定期的な自己検診くらいしかありません。あとはエビデンスはありませんが、自己負担で超音波検査の併用、マンモグラフィを間の年にも受ける、などでしょうか。MRや乳腺専用のPET(PEM)なども有用かもしれませんが、費用や所要時間などの点で一般用の検診としては問題がありそうです。

今以上に精度の高い検診システムが開発されて、中間期乳がんがなくなるような時代が来ることを願っています。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつも興味深く拝見しています。
私は乳腺エコーを担当している技師です。
経験が浅く、毎日悩みながら行っています。

先週のことですが、マンモグラフィで集簇性の石灰化があり、エコーで乳腺内に収まる境界平滑明瞭、円形、7mmほどの低エコー腫瘤を認めました。内部に微細でもなくかといって粗大というほどでもない石灰化と思われる高エコーが複数ありました。

「繊維腺腫とはちょっと違うなぁ・・でもDCISって感じでもないなぁ・・前に遭遇したことある肉芽腫に似てるけど・・あぁ~なんだこれぇ~??」状態でした。

悪性っぽくなかったことから、結局レポートにはカテゴリー2、s/o Fibroadenomaと書いて提出しました。(違うと思いながら・・悪い技師デス)その後細胞診でADH疑いとなりました。

エコー画像でADHと推測するには、何をどう見れば良いのでしょうか?
もしADHと推測できたら、
「カテゴリー3、s/o ADH , r/o DCIS」という報告で良いのでしょうか?

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
エコーでADHを疑い病名にすることは不可能ですし、その必要もありません。ADHかDCISかは切除した標本を見てようやく鑑別できるものですからそもそも画像で鑑別などできるはずはありません。ですからDCIS疑いで良いのです。
なお、最近当院でも経験しましたが、比較的粗大な石灰化を有するDCISはあります。特にエコーでは石灰化の形状まで見ることはできませんので、明らかな粗大石灰化を有した典型的な陳旧性の線維腺腫なら別ですが、石灰化しはじめたばかりの線維腺腫と非浸潤がんの明確な鑑別は難しいことがあります。また一見境界明瞭に見える低エコーでもDCISはあり得ます(よく見ると完全に明瞭ではないのですが)。
Mucocele-like tumor(MLT)もやや粗大な石灰化を有する境界明瞭なmassとして写ることがあります。MLTはがんを合併していることがありますし、粘液がんとの区別も難しいことがありますので内部に複数の点状高エコーを有していれば、境界明瞭であっても一度は細胞診をしてみる方が無難だと思います。以上です。

匿名 さんのコメント...

コメントありがとうございます。

この1週間、DCISとADHのことで頭がいっぱいで、 でも納得できずにいましたので、ご説明ありがとうございます。
カテゴリー判定は間違えましたが、画像をドクターが見逃さなかったことで助けられました。
疑わしいものは素直に疑わしいと報告するべきと反省しています。
またひとつ、勉強になりました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
優秀なDrがいて良かったですね。Drとコミュニケーションを十分に取ることが誤診防止に一番重要です。迷ったケースは遠慮せずにDrと直接コンタクトを取ることをお勧めします。
これからも頑張って下さいね。それでは!