最近JAMAという雑誌に発表された報告を読んで驚きました。
Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのMonica Morrow氏の報告によると、2005年6月~2007年2月の間に乳房温存術を受けた1,468人(全体の75.4%)の患者さんのうち、後に再手術を必要としたのは37.9%に上ったということです。内訳としては26.0%が乳腺腫瘤摘出術で、11.9%が乳房切除術だそうです。すべてが局所再発かどうかは不明ですが、最低でも乳房切除術を行なった11.9%は再発であると思われます。
今までに発表されていた乳房温存術の局所再発率は、欧米でも日本でもおよそ年率約1%(つまり10年で約10%)ということでした。切除断端陰性にした場合にはさらにその半分くらいの再発です。それと比べるといかにこの報告の局所再発率が高いかがわかると思います。
2-4年程度の観察期間で最低でも11.9%!!信じられない高率です。
なぜこんなに高い局所再発をきたしたのでしょうか?これは今の日本の乳腺外科治療にも共通する問題点のせいだと思います。
乳房温存術が標準手術となってから、もうかなり年月が経過しました。最初は慎重に症例を選び、完全切除を目指して一定の距離をおいて切除していました。その分、対象症例は限定され、切除範囲が広くなるために変形も強かったのです。
しかし、整容性が過度に重視されるようになったために切除範囲をぎりぎりにしたり、対象症例を増やすために、術前化学療法施行施行後に広がりの評価が不十分なまま温存手術に踏み切ったりということが増えているような気がします。また、放射線治療が局所再発の予防に有効であることを過信しすぎて、かなり癌が残っている可能性が高いのに乳房切除をせずに放射線治療で経過をみたりしていることも局所再発が増えた原因のような気がします。
この報告はアメリカに限った話ではないと感じています。アメリカ的な考え方に流されつつある、今の日本の乳癌治療に対する警鐘であるという認識をもって患者さんに向き合うべきではないかと私は思います。
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2009年10月27日火曜日
ホルモン補充療法中の圧痛と乳癌発生リスク
Archives of Internal Medicineという雑誌に、ホルモン補充療法(HRT)中にみられる乳房の圧痛の出現は、乳癌の発生と相関があるということが発表されました。この報告によると、HRT開始後に乳房の圧痛がみられた女性は、そうでない女性に比べて、浸潤性乳癌が発現する可能性が48%高かったということです
この研究では、心臓発作、脳卒中、浸潤性乳癌のリスクが増大することが判明して2002年に中止された、女性健康イニシアチブ(WHI)のHRTのデータを使用しています。対象は、経口結合型エストロゲン(0.625mg/日)と酢酸メドロキシプロゲステロン(2.5mg/日)を投与したHRT群8,500人以上と、プラセボ群8,100人以上です。経過観察の方法は、年1回、マンモグラフィと視触診を実施したとのことです。
その結果、1年後、HRT群はプラセボ群に比べて乳房の圧痛を報告する可能性が3倍高く(約36%vs約12%)、5.6年間の追跡調査中、毎年、新たに乳房の圧痛を認めた女性の0.6%、圧痛を認めなかった女性の0.36%が、乳癌と診断されたということで、乳癌発生リスクの増加がみられました。
圧痛は乳房の細胞が急速に増殖している徴候である可能性があり、細胞増殖は癌の危険因子と推測されますので、この結果は十分に理解できるデータだと思います。ただ、この報告のみで、HRT中に乳房痛が出たら直ちに中止しなければならないとまでは断定できません。もう少し、追試が必要です。現段階では、HRT中に乳房痛が出た場合には、担当医と利益、不利益について再度相談してみることをお勧めします。
この研究では、心臓発作、脳卒中、浸潤性乳癌のリスクが増大することが判明して2002年に中止された、女性健康イニシアチブ(WHI)のHRTのデータを使用しています。対象は、経口結合型エストロゲン(0.625mg/日)と酢酸メドロキシプロゲステロン(2.5mg/日)を投与したHRT群8,500人以上と、プラセボ群8,100人以上です。経過観察の方法は、年1回、マンモグラフィと視触診を実施したとのことです。
その結果、1年後、HRT群はプラセボ群に比べて乳房の圧痛を報告する可能性が3倍高く(約36%vs約12%)、5.6年間の追跡調査中、毎年、新たに乳房の圧痛を認めた女性の0.6%、圧痛を認めなかった女性の0.36%が、乳癌と診断されたということで、乳癌発生リスクの増加がみられました。
圧痛は乳房の細胞が急速に増殖している徴候である可能性があり、細胞増殖は癌の危険因子と推測されますので、この結果は十分に理解できるデータだと思います。ただ、この報告のみで、HRT中に乳房痛が出たら直ちに中止しなければならないとまでは断定できません。もう少し、追試が必要です。現段階では、HRT中に乳房痛が出た場合には、担当医と利益、不利益について再度相談してみることをお勧めします。
2009年10月25日日曜日
乳癌検診普及のジレンマ
無料クーポン券の影響なのか、最近乳がん検診受診者が急増しています。
私はいま二つの病院の外来に出ています。週2回、外来に行っている関連病院でこの2週間に読影した検診のマンモグラフィ数は141件。昨年のほぼ2倍です。土曜日(10/17)の検診単位が1単位(約20件)ありますが、この間の外来数(他の医師の一般外来も含めて)は、のべ10単位ですので、検診を除いても1単位あたり10件以上の検診が一般外来に含まれたことになります。予約患者さんの間に混ざることになりますので、こなすのはなかなか大変です。
うちの病院では、検診のマンモグラフィは私を含めた二人の読影医で2重読影で診断しています。ですから私はすべてのフィルムに目を通さなければなりません。これらのマンモグラフィは、週2回の外来日の朝に読影しています。外来にまだだれも来ていない7:45ころから、カルテ診(データチェックや手紙を書く仕事など)を終えたあとで読み始めるのですが、ここ2週間は外来の始まる9:00までに読み終えることができなくなってしまいました。結局、外来が終わったあとに残りを読んで、本拠地の病院に移動しています。
検診受診者数を増やしたい、と願って、ピンクリボン活動にも取り組んでいますが、これからさらに増えるのなら、本格的な対策を考えなければなりません。他の病院も同様だと思いますが、乳腺外来は飽和状態になりつつあります。受け皿(乳腺外科医、マンモグラフィ読影医)の確保を早めに検討しなければ、検診に何ヶ月も待たなければならない状態になりかねません。
後継者対策については、かなり前から院長にも外科の最高責任者にも伝えてありますが、外科全体、というより医師数全体が不足している中で、なかなか話が進んでいません。検診を増やしたいけど受け入れるのが難しくなっているジレンマと、多忙による見落としの恐怖に悩まされる今日このごろです。
私はいま二つの病院の外来に出ています。週2回、外来に行っている関連病院でこの2週間に読影した検診のマンモグラフィ数は141件。昨年のほぼ2倍です。土曜日(10/17)の検診単位が1単位(約20件)ありますが、この間の外来数(他の医師の一般外来も含めて)は、のべ10単位ですので、検診を除いても1単位あたり10件以上の検診が一般外来に含まれたことになります。予約患者さんの間に混ざることになりますので、こなすのはなかなか大変です。
うちの病院では、検診のマンモグラフィは私を含めた二人の読影医で2重読影で診断しています。ですから私はすべてのフィルムに目を通さなければなりません。これらのマンモグラフィは、週2回の外来日の朝に読影しています。外来にまだだれも来ていない7:45ころから、カルテ診(データチェックや手紙を書く仕事など)を終えたあとで読み始めるのですが、ここ2週間は外来の始まる9:00までに読み終えることができなくなってしまいました。結局、外来が終わったあとに残りを読んで、本拠地の病院に移動しています。
検診受診者数を増やしたい、と願って、ピンクリボン活動にも取り組んでいますが、これからさらに増えるのなら、本格的な対策を考えなければなりません。他の病院も同様だと思いますが、乳腺外来は飽和状態になりつつあります。受け皿(乳腺外科医、マンモグラフィ読影医)の確保を早めに検討しなければ、検診に何ヶ月も待たなければならない状態になりかねません。
後継者対策については、かなり前から院長にも外科の最高責任者にも伝えてありますが、外科全体、というより医師数全体が不足している中で、なかなか話が進んでいません。検診を増やしたいけど受け入れるのが難しくなっているジレンマと、多忙による見落としの恐怖に悩まされる今日このごろです。
2009年10月22日木曜日
乳癌とロイヤルゼリー
先日、ある乳癌術後の患者さんから、
”更年期症状の治療にロイヤルゼリーを内服したらずいぶん良くなったんですが、最近おりものが増えてきたんです。以前主治医から、ロイヤルゼリーだけは服用してはいけない、と言われたのを思い出して怖くなったんですがやめた方がよいですか?”
という内容の問い合わせがありました。
乳癌とロイヤルゼリーの関係については、相反する情報があります。
乳癌の再発を促すので、乳癌患者さんは服用してはいけないとする説と、乳癌の予防、治療になるという説です。
乳癌患者さんはロイヤルゼリーを内服しない方がよい、という話は、私がG病院に研修に行っていたときにも某先生から聞いたことがあります。たしか女性ホルモン様の作用があるからだめなんだという話でした。しかし、ネットを含めた最近の情報では、逆に乳癌の予防や治療につながるのではないかとの研究報告が多いように思います(http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/syokuryo/bee.htmlなど)。ただ、これらはあくまでも動物実験や試験管レベルの話ですので、臨床的に、サプリメントとして服用するロイヤルゼリーが乳癌の予防効果や治療効果があるというエビデンスはありません。
また、ロイヤルゼリーによる更年期症状の改善効果を調べる国内の臨床試験において、エストロゲン投与と同様の効果がみられたという報告があります(http://www.rjkoutori.or.jp/rj/report/report08_5.html)。しかし、動物実験レベルでは、更年期症状に対するエストロゲン投与に比べると、まったく子宮重量の増加がみられなかったことから、エストロゲン作用とは別の機序で更年期症状を改善しているらしいと推測されています。その他の報告でも、ロイヤルゼリーがエストロゲン作用を持っていて、乳癌を増殖させる、という確かな証拠はないようです。
以上をまとめると、
1.ロイヤルゼリーが乳癌の発生や再発を促すという明らかな根拠はない。
2.ロイヤルゼリーが乳癌に対して抑制的に働くという、動物実験データはあるが、臨床的に人間に対して効果があるという証拠はない。
ということになりそうです。
なんとなく、乳製品や大豆製品(イソフラボン)の話と似ていますね。動物実験や試験管レベルの話から推測されることと、実際の臨床的効果は必ずしも一致せず、場合によっては逆の結果になることもあるということです。サプリメントや代替補完療法を考える場合には、盲目的に信じるのではなく、上に述べたようなことも考えながら判断するのが良いと思います。
”更年期症状の治療にロイヤルゼリーを内服したらずいぶん良くなったんですが、最近おりものが増えてきたんです。以前主治医から、ロイヤルゼリーだけは服用してはいけない、と言われたのを思い出して怖くなったんですがやめた方がよいですか?”
という内容の問い合わせがありました。
乳癌とロイヤルゼリーの関係については、相反する情報があります。
乳癌の再発を促すので、乳癌患者さんは服用してはいけないとする説と、乳癌の予防、治療になるという説です。
乳癌患者さんはロイヤルゼリーを内服しない方がよい、という話は、私がG病院に研修に行っていたときにも某先生から聞いたことがあります。たしか女性ホルモン様の作用があるからだめなんだという話でした。しかし、ネットを含めた最近の情報では、逆に乳癌の予防や治療につながるのではないかとの研究報告が多いように思います(http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/syokuryo/bee.htmlなど)。ただ、これらはあくまでも動物実験や試験管レベルの話ですので、臨床的に、サプリメントとして服用するロイヤルゼリーが乳癌の予防効果や治療効果があるというエビデンスはありません。
また、ロイヤルゼリーによる更年期症状の改善効果を調べる国内の臨床試験において、エストロゲン投与と同様の効果がみられたという報告があります(http://www.rjkoutori.or.jp/rj/report/report08_5.html)。しかし、動物実験レベルでは、更年期症状に対するエストロゲン投与に比べると、まったく子宮重量の増加がみられなかったことから、エストロゲン作用とは別の機序で更年期症状を改善しているらしいと推測されています。その他の報告でも、ロイヤルゼリーがエストロゲン作用を持っていて、乳癌を増殖させる、という確かな証拠はないようです。
以上をまとめると、
1.ロイヤルゼリーが乳癌の発生や再発を促すという明らかな根拠はない。
2.ロイヤルゼリーが乳癌に対して抑制的に働くという、動物実験データはあるが、臨床的に人間に対して効果があるという証拠はない。
ということになりそうです。
なんとなく、乳製品や大豆製品(イソフラボン)の話と似ていますね。動物実験や試験管レベルの話から推測されることと、実際の臨床的効果は必ずしも一致せず、場合によっては逆の結果になることもあるということです。サプリメントや代替補完療法を考える場合には、盲目的に信じるのではなく、上に述べたようなことも考えながら判断するのが良いと思います。
2009年10月19日月曜日
乳癌の治療最新情報8 Avastin〜乳癌に対する効能の追加申請へ
現在、進行・再発大腸癌の治療に使用されている抗VEGF(血管内皮増殖因子)ヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(遺伝子組換え)-販売名”アバスチン”の乳癌に対する適応申請がついに厚生労働省に提出されたそうです。
この薬剤については以前も触れましたが(乳癌の治療最新情報5)、今までの抗癌剤や分子標的薬とは作用機序が異なるため、併用投与によって無増悪生存期間の延長が期待できる薬です。欧米ではすでに臨床応用されており、その効果は確認されています。今回、国内での臨床試験でもその効果が確認されたということで追加申請に至ったようです。
いずれは申請されると思っていましたが、私の予想より早く使用できることになりそうで良かったです。また、この薬剤はトリプルネガティブ乳癌にも効果が期待できそうです。ただ、重篤な副作用(創の治癒が遅れる、腸管穿孔など)もあるので、他の抗癌剤と同様に注意が必要です。
すでに大腸癌に対して使用されている薬剤ですので、できるだけスムーズに保険適応が通ることを期待しています。
この薬剤については以前も触れましたが(乳癌の治療最新情報5)、今までの抗癌剤や分子標的薬とは作用機序が異なるため、併用投与によって無増悪生存期間の延長が期待できる薬です。欧米ではすでに臨床応用されており、その効果は確認されています。今回、国内での臨床試験でもその効果が確認されたということで追加申請に至ったようです。
いずれは申請されると思っていましたが、私の予想より早く使用できることになりそうで良かったです。また、この薬剤はトリプルネガティブ乳癌にも効果が期待できそうです。ただ、重篤な副作用(創の治癒が遅れる、腸管穿孔など)もあるので、他の抗癌剤と同様に注意が必要です。
すでに大腸癌に対して使用されている薬剤ですので、できるだけスムーズに保険適応が通ることを期待しています。
2009年10月18日日曜日
ジャパン・マンモグラフィーサンデー終了
今日はJMSの乳がん検診の日でした。平日は仕事などで乳がん検診を受けれない人のために、J.POSHが呼びかけて全国で行われた試みです。
私の病院ではもともと定期的に日曜検診を行っていましたので、それを利用する形で備えていました。
しかし、予約された数はもともとの友の会の対象者20人だけ。残念ながらJ.POSHの呼びかけに反応して検診を申し込んだ人はいなかったそうです。
JMSの協賛病院になっている市内のある病院の乳腺外科医(大学時代の私の同期)からも先日電話がありましたが、「せっかく日曜検診の体制をとったのに申し込みがほとんど来ないんだけど…」と言っていました。せっかくの良い取り組みなのに残念です。
来年に向けて、この活動を一般の人たちにもっと知ってもらうことが必要です。また、値段の設定が病院によってばらばらで、混乱を招く可能性があることが課題と思われました。病院によっては、自治体の補助を受けれる対象の人も自己負担7000円くらいを一律で設定していたケースもあったようです。自治体補助の対象外の人(40才未満や奇数年齢など)も受けれるようにするのが望ましいのですが、自己負担額をいくらにするのが適切かという問題は少し議論したほうが良いのかもしれません。
ちなみに今日の受診者の中では乳癌と思われる人はいませんでした。今回の試みを契機にさらなる啓蒙活動を続けていきたいと思っています。
私の病院ではもともと定期的に日曜検診を行っていましたので、それを利用する形で備えていました。
しかし、予約された数はもともとの友の会の対象者20人だけ。残念ながらJ.POSHの呼びかけに反応して検診を申し込んだ人はいなかったそうです。
JMSの協賛病院になっている市内のある病院の乳腺外科医(大学時代の私の同期)からも先日電話がありましたが、「せっかく日曜検診の体制をとったのに申し込みがほとんど来ないんだけど…」と言っていました。せっかくの良い取り組みなのに残念です。
来年に向けて、この活動を一般の人たちにもっと知ってもらうことが必要です。また、値段の設定が病院によってばらばらで、混乱を招く可能性があることが課題と思われました。病院によっては、自治体の補助を受けれる対象の人も自己負担7000円くらいを一律で設定していたケースもあったようです。自治体補助の対象外の人(40才未満や奇数年齢など)も受けれるようにするのが望ましいのですが、自己負担額をいくらにするのが適切かという問題は少し議論したほうが良いのかもしれません。
ちなみに今日の受診者の中では乳癌と思われる人はいませんでした。今回の試みを契機にさらなる啓蒙活動を続けていきたいと思っています。
2009年10月13日火曜日
閉経前ER陽性乳癌が急増?
先日開催された日本癌学会において、日本における閉経前のER陽性乳癌が、著しく増加しているとの報告が出されました。
この報告によると、ER陽性乳癌の占める頻度は,50歳以下においては,1982~91年が53.9%であったのに対し,1992~2001年では72.3%,2002~09年では85.6%と著しく増加していた(P<0.0001)とのことです。
以前は閉経前の乳癌には、ホルモン非依存性(ER陰性)のものが多いと言われていました。しかし、乳癌学会発表の2006年度のがん登録のデータでも同様の傾向があるため、現在の閉経前乳癌にはホルモン依存性のものが多いというのは事実のようです。
しかし、昔に比べてER陽性乳癌がこんなに増加しているのか、ということについては少し検討が必要です。なぜなら、現在のERの判定は免疫染色という手法を使って、顕微鏡的に染色される細胞の比率で判断しますが(IHC法)、少なくとも1990年代半ばくらいまでは乳癌組織の一部を採取してEIA法という方法で定量的に測定していたからです。
EIA法の場合、採取する場所によって異なる結果が出る可能性がありますし、陽性、陰性の判断基準も数値ですのでIHC法とは異なります。ですから、IHC法で測定していた時代のER陽性率とIHC法で診断したER陽性率とは単純には比較できません。正しくは、EIA法で測定していた標本をすべてIHC法で測定し直した上で比較しなければ正確なデータとは言えません。
私はこの発表を実際に聞いたわけではないので、IHC法で判定し直したデータかどうかはわかりませんが、もしIHC法で判定したデータなら、非常に興味深い報告です。やはり、生活環境の変化によって発生する乳癌の性質も変わってきているということですから。言い換えるなら、現在増加している乳癌は、この生活環境の変化によって生じた上乗せ分によるとも推測できるからです。
もちろん、”乳製品の消費量が増えたからだ”、と一部の人たちが主張しているような単純なものではないと思います。50年前と比較するならわかりますが、この間の乳製品の消費量はそれほど急増はしていないと思われるからです。インスタント食品やファストフードの増加、コンビニの普及、ますますの少子化、晩婚化、キャリアウーマンの増加、電子製品の増加による電磁波の影響…。この20年間にはさまざまな生活環境の変化があります。大切なのは、これらを正確に解析して、閉経前に乳癌になりやすいハイリスクグループを同定することだと思います。
この報告によると、ER陽性乳癌の占める頻度は,50歳以下においては,1982~91年が53.9%であったのに対し,1992~2001年では72.3%,2002~09年では85.6%と著しく増加していた(P<0.0001)とのことです。
以前は閉経前の乳癌には、ホルモン非依存性(ER陰性)のものが多いと言われていました。しかし、乳癌学会発表の2006年度のがん登録のデータでも同様の傾向があるため、現在の閉経前乳癌にはホルモン依存性のものが多いというのは事実のようです。
しかし、昔に比べてER陽性乳癌がこんなに増加しているのか、ということについては少し検討が必要です。なぜなら、現在のERの判定は免疫染色という手法を使って、顕微鏡的に染色される細胞の比率で判断しますが(IHC法)、少なくとも1990年代半ばくらいまでは乳癌組織の一部を採取してEIA法という方法で定量的に測定していたからです。
EIA法の場合、採取する場所によって異なる結果が出る可能性がありますし、陽性、陰性の判断基準も数値ですのでIHC法とは異なります。ですから、IHC法で測定していた時代のER陽性率とIHC法で診断したER陽性率とは単純には比較できません。正しくは、EIA法で測定していた標本をすべてIHC法で測定し直した上で比較しなければ正確なデータとは言えません。
私はこの発表を実際に聞いたわけではないので、IHC法で判定し直したデータかどうかはわかりませんが、もしIHC法で判定したデータなら、非常に興味深い報告です。やはり、生活環境の変化によって発生する乳癌の性質も変わってきているということですから。言い換えるなら、現在増加している乳癌は、この生活環境の変化によって生じた上乗せ分によるとも推測できるからです。
もちろん、”乳製品の消費量が増えたからだ”、と一部の人たちが主張しているような単純なものではないと思います。50年前と比較するならわかりますが、この間の乳製品の消費量はそれほど急増はしていないと思われるからです。インスタント食品やファストフードの増加、コンビニの普及、ますますの少子化、晩婚化、キャリアウーマンの増加、電子製品の増加による電磁波の影響…。この20年間にはさまざまな生活環境の変化があります。大切なのは、これらを正確に解析して、閉経前に乳癌になりやすいハイリスクグループを同定することだと思います。
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