2009年10月22日木曜日

乳癌とロイヤルゼリー

先日、ある乳癌術後の患者さんから、
”更年期症状の治療にロイヤルゼリーを内服したらずいぶん良くなったんですが、最近おりものが増えてきたんです。以前主治医から、ロイヤルゼリーだけは服用してはいけない、と言われたのを思い出して怖くなったんですがやめた方がよいですか?”
という内容の問い合わせがありました。

乳癌とロイヤルゼリーの関係については、相反する情報があります。

乳癌の再発を促すので、乳癌患者さんは服用してはいけないとする説と、乳癌の予防、治療になるという説です。

乳癌患者さんはロイヤルゼリーを内服しない方がよい、という話は、私がG病院に研修に行っていたときにも某先生から聞いたことがあります。たしか女性ホルモン様の作用があるからだめなんだという話でした。しかし、ネットを含めた最近の情報では、逆に乳癌の予防や治療につながるのではないかとの研究報告が多いように思います(http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/syokuryo/bee.htmlなど)。ただ、これらはあくまでも動物実験や試験管レベルの話ですので、臨床的に、サプリメントとして服用するロイヤルゼリーが乳癌の予防効果や治療効果があるというエビデンスはありません。

また、ロイヤルゼリーによる更年期症状の改善効果を調べる国内の臨床試験において、エストロゲン投与と同様の効果がみられたという報告があります(http://www.rjkoutori.or.jp/rj/report/report08_5.html)。しかし、動物実験レベルでは、更年期症状に対するエストロゲン投与に比べると、まったく子宮重量の増加がみられなかったことから、エストロゲン作用とは別の機序で更年期症状を改善しているらしいと推測されています。その他の報告でも、ロイヤルゼリーがエストロゲン作用を持っていて、乳癌を増殖させる、という確かな証拠はないようです。

以上をまとめると、

1.ロイヤルゼリーが乳癌の発生や再発を促すという明らかな根拠はない。
2.ロイヤルゼリーが乳癌に対して抑制的に働くという、動物実験データはあるが、臨床的に人間に対して効果があるという証拠はない。

ということになりそうです。
なんとなく、乳製品や大豆製品(イソフラボン)の話と似ていますね。動物実験や試験管レベルの話から推測されることと、実際の臨床的効果は必ずしも一致せず、場合によっては逆の結果になることもあるということです。サプリメントや代替補完療法を考える場合には、盲目的に信じるのではなく、上に述べたようなことも考えながら判断するのが良いと思います。

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