2009年10月27日火曜日

ホルモン補充療法中の圧痛と乳癌発生リスク

Archives of Internal Medicineという雑誌に、ホルモン補充療法(HRT)中にみられる乳房の圧痛の出現は、乳癌の発生と相関があるということが発表されました。この報告によると、HRT開始後に乳房の圧痛がみられた女性は、そうでない女性に比べて、浸潤性乳癌が発現する可能性が48%高かったということです

この研究では、心臓発作、脳卒中、浸潤性乳癌のリスクが増大することが判明して2002年に中止された、女性健康イニシアチブ(WHI)のHRTのデータを使用しています。対象は、経口結合型エストロゲン(0.625mg/日)と酢酸メドロキシプロゲステロン(2.5mg/日)を投与したHRT群8,500人以上と、プラセボ群8,100人以上です。経過観察の方法は、年1回、マンモグラフィと視触診を実施したとのことです。

その結果、1年後、HRT群はプラセボ群に比べて乳房の圧痛を報告する可能性が3倍高く(約36%vs約12%)、5.6年間の追跡調査中、毎年、新たに乳房の圧痛を認めた女性の0.6%、圧痛を認めなかった女性の0.36%が、乳癌と診断されたということで、乳癌発生リスクの増加がみられました。

圧痛は乳房の細胞が急速に増殖している徴候である可能性があり、細胞増殖は癌の危険因子と推測されますので、この結果は十分に理解できるデータだと思います。ただ、この報告のみで、HRT中に乳房痛が出たら直ちに中止しなければならないとまでは断定できません。もう少し、追試が必要です。現段階では、HRT中に乳房痛が出た場合には、担当医と利益、不利益について再度相談してみることをお勧めします。

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