病院にもパンフレットを置いていたり、学会や講演会などのブースで目にした患者さんもいらっしゃると思いますが、乳がん術後の患者さんのための特殊な下着を扱っているメーカーは何社もあります。その中でもかなり以前から製品化しているワコール主催の患者さん向け相談会が今年も近くに取り扱い店がない全国8都市で開かれるという報道がありました(今年で19年目)。
相談会名:「装いと下着に関する相談会」
対象:がんなどで乳房を手術した女性
内容:ワコールが開発した下着シリーズ「リマンマ」の商品展示(乳房温存術後の患者さん向けのブラジャーや薄型パッドも)、専門アドバイザーによる選び方や着け方の相談会
場所・日時:
福井市(7月21~23日)
青森市(9月15~17日)
松山市(10月13~15日)
岡山市(11月3~5日)
盛岡市(11月16~19日)
前橋市(12月に予定)
宮崎市(2012年1月に予定)
熊本市(同2月9~11日)
参加方法:ワコール・リマンマ事業課(0120・037・056)に事前申し込み
製品URL:http://www.wacoal.jp/remamma/
近くに取り扱い店がないと、なかなか普段は実際に見たり触れたりする機会がありませんので、このような企画はそういう地域に住む方にとっては貴重だと思います。興味がある方はせっかくのチャンスですので、利用してみてはいかがでしょうか?
乳癌が心配だけど、どこに受診したらいいかわからない、乳癌になってしまって不安…、再発したからもうだめかもしれない…。そんな不安や悩みに少しでもお役に立てればと思って始めてみました。 (*投稿内容と無関係なコメント、病状のご相談はご遠慮願います*)
2011年6月25日土曜日
医師の病状説明と患者さんの理解度
私事ですが、義父が手術をしたので昨日の夜に釧路に行って、今日の夕方に戻ってきたところです。
今回の経過は、80才になる義父が体調不良(食欲不振、嘔気、体重減少で寝たきりになり声も出なくなった)で近医を受診したところ、胆のうが非常に腫大していて今にも破れそうな状態だから大きな病院を紹介しますと言われたと義母から連絡が入ったことから始まりました。
胆のうが腫大する原因は、胆石による胆のう炎以外に下部胆管の閉塞をきたす膵がんや胆管がんなどの悪性疾患も考えられます。最初の連絡では、強い腹痛も高い発熱もなかったとのことでしたので、悪性疾患ではないかと心配していました。そして入院後に胆のうか胆管にチューブが入ったと連絡がありました。黄疸があったかどうかはよくわからないということでした。
そして、手術前日の説明を聞いた義母からの連絡では、「手術はうまくいけば腹腔鏡で胆のうを取るだけの手術で2時間くらいで終わりますが、今まで見たことがないような病態なので、どうなるかわかりません」というような内容だったとのこと。
で、病名は?と聞くと「よくわからない…」??
膵がんや胆管がんであれば、膵頭十二指腸切除術になりますし、時間も5−6時間くらいかかりますのでどうやら違うようです。胆のうがんの疑いがあるのかどうかは不明ですが、胆のう摘出術だけで終わるような胆のうがんが、チューブを入れなければならないような病態になる可能性は低いですので、結局胆石胆のう炎の可能性が高いのではないかと思いましたが、義母からは胆のう炎という言葉は聞かれませんでした。
で、昨日手術が行なわれましたが、結局予想通りただの胆石胆のう炎だったようで、無事腹腔鏡下胆のう摘出術で1時間ちょっとで終わることができました。経過は良好で一安心です。
なぜこんな話をここに書いたかと言いますと、医師の説明が十分でなければ患者さんやご家族の理解はこんなものだということです。こちらが十分にお話ししたつもりでも、専門用語を使いながら、相手が当然わかってくれるつもりで話をしたらまったく伝わらないのです。
乳がんの病状説明においても、他の疾患と同様に専門用語を使いすぎると理解は難しくなります。ただ病態から治療方針までエビデンスを交えながら話をすると、話す内容が多すぎて聞いている患者さんたちは頭の中が飽和状態になってしまいます。なるべく難しい言葉を使わないようにとわかりやすく説明しようとすればするほど時間がかかりすぎてわからなくなってしまう場合もあるのです。
説明後には、よくわかりましたと言っていたのに、翌日にはすっかり忘れていて説明したことをもう一度聞かれることもよくあります。ですから私はなるべく細かくあらかじめ紙に説明内容を書いて用意しておくようにしています。書きながら説明すると、どうしても机に向かって話をする形になるので、患者さんたちの表情から理解度を読み取ることができません。説明する時は、患者さん側を向きながらご説明し、「今お話しした内容は、この紙にも書いてありますのでもう一度読み直しておいて下さい」とお話しするようにしているのです。それでも時間がたつと、「そんな話は聞いていない」とおっしゃる患者さんもいます。その時は、その説明用紙を読むと納得して下さいますが、一般の方が医療の内容を理解するというのは、本当に難しいことなんだということを実感します。
医師の説明がわかりにくい場合、それを医師は理解していないことが多いと思います。たいていは、この説明でわかるはず、と思って話しているのです。ですから、聞いていて理解できない場合は、遠慮しないで何度でも聞いた方が良いと思います。今回の義父の手術のように、どんな病気が考えられて、その対応にはどのようなことが予想されるのかがまったくわからないまま手術を受けるというのは望ましいことではありません。結果的に一番良い結果だったので良かったですが、悪い結果で大きな手術に変更になって、合併症でも起きたら双方にとって不幸な結果になります。
医師側は、専門用語をできるだけ避けて十分にわかりやすくご説明し、用紙に内容を残すこと、患者さん側は、わからないものをそのままにせず、理解できるまでしっかり聞いて確認すること、これがそのあとの診療を円滑に進めるためにはとても重要なのです。
今回の経過は、80才になる義父が体調不良(食欲不振、嘔気、体重減少で寝たきりになり声も出なくなった)で近医を受診したところ、胆のうが非常に腫大していて今にも破れそうな状態だから大きな病院を紹介しますと言われたと義母から連絡が入ったことから始まりました。
胆のうが腫大する原因は、胆石による胆のう炎以外に下部胆管の閉塞をきたす膵がんや胆管がんなどの悪性疾患も考えられます。最初の連絡では、強い腹痛も高い発熱もなかったとのことでしたので、悪性疾患ではないかと心配していました。そして入院後に胆のうか胆管にチューブが入ったと連絡がありました。黄疸があったかどうかはよくわからないということでした。
そして、手術前日の説明を聞いた義母からの連絡では、「手術はうまくいけば腹腔鏡で胆のうを取るだけの手術で2時間くらいで終わりますが、今まで見たことがないような病態なので、どうなるかわかりません」というような内容だったとのこと。
で、病名は?と聞くと「よくわからない…」??
膵がんや胆管がんであれば、膵頭十二指腸切除術になりますし、時間も5−6時間くらいかかりますのでどうやら違うようです。胆のうがんの疑いがあるのかどうかは不明ですが、胆のう摘出術だけで終わるような胆のうがんが、チューブを入れなければならないような病態になる可能性は低いですので、結局胆石胆のう炎の可能性が高いのではないかと思いましたが、義母からは胆のう炎という言葉は聞かれませんでした。
で、昨日手術が行なわれましたが、結局予想通りただの胆石胆のう炎だったようで、無事腹腔鏡下胆のう摘出術で1時間ちょっとで終わることができました。経過は良好で一安心です。
なぜこんな話をここに書いたかと言いますと、医師の説明が十分でなければ患者さんやご家族の理解はこんなものだということです。こちらが十分にお話ししたつもりでも、専門用語を使いながら、相手が当然わかってくれるつもりで話をしたらまったく伝わらないのです。
乳がんの病状説明においても、他の疾患と同様に専門用語を使いすぎると理解は難しくなります。ただ病態から治療方針までエビデンスを交えながら話をすると、話す内容が多すぎて聞いている患者さんたちは頭の中が飽和状態になってしまいます。なるべく難しい言葉を使わないようにとわかりやすく説明しようとすればするほど時間がかかりすぎてわからなくなってしまう場合もあるのです。
説明後には、よくわかりましたと言っていたのに、翌日にはすっかり忘れていて説明したことをもう一度聞かれることもよくあります。ですから私はなるべく細かくあらかじめ紙に説明内容を書いて用意しておくようにしています。書きながら説明すると、どうしても机に向かって話をする形になるので、患者さんたちの表情から理解度を読み取ることができません。説明する時は、患者さん側を向きながらご説明し、「今お話しした内容は、この紙にも書いてありますのでもう一度読み直しておいて下さい」とお話しするようにしているのです。それでも時間がたつと、「そんな話は聞いていない」とおっしゃる患者さんもいます。その時は、その説明用紙を読むと納得して下さいますが、一般の方が医療の内容を理解するというのは、本当に難しいことなんだということを実感します。
医師の説明がわかりにくい場合、それを医師は理解していないことが多いと思います。たいていは、この説明でわかるはず、と思って話しているのです。ですから、聞いていて理解できない場合は、遠慮しないで何度でも聞いた方が良いと思います。今回の義父の手術のように、どんな病気が考えられて、その対応にはどのようなことが予想されるのかがまったくわからないまま手術を受けるというのは望ましいことではありません。結果的に一番良い結果だったので良かったですが、悪い結果で大きな手術に変更になって、合併症でも起きたら双方にとって不幸な結果になります。
医師側は、専門用語をできるだけ避けて十分にわかりやすくご説明し、用紙に内容を残すこと、患者さん側は、わからないものをそのままにせず、理解できるまでしっかり聞いて確認すること、これがそのあとの診療を円滑に進めるためにはとても重要なのです。
2011年6月22日水曜日
乳がん検診の結果が「要精検」だった場合⑤〜構築の乱れ(Architectural distortion)

構築の乱れ(Architectural distortion)というのは、腫瘤は明らかではありませんが、正常の乳腺構築が歪んでいる状態のことです。
例として挙げると、
①コア(中心の高濃度陰影)を伴わない放射状の構造物(スピキュラ:spiculation)
②乳腺実質縁の局所的な引き込み(retraction)
③歪み(distortion)や乳腺の痩せ
などがあります。
この構築の乱れで発見される乳がんの代表は、浸潤性小葉がんです。浸潤性小葉がんは、乳腺を縮小させたり、伸びが悪くなったり、横方向に広範囲に広がっていることが多いため、腫瘤像は呈さずに構築の乱れをきたすことが多いのです。他に、非浸潤がんでも構築の乱れで発見されることがあります。また、硬がんでも中心のコアがはっきりせず、スピキュラのみが目立つ場合があります。
一方、良性で構築の乱れをきたす例は以下の通りです。
①傷跡(昔の生検のあと)
②放射状瘢痕(radial scar/complex sclerosing lesionまたはradial sclerosing lesion…写真)…乳腺症の部分症である腺症や乳管過形成などの管腔構造が中心の線維-弾性組織帯から放射状に配列したもの。異型乳管過形成や非浸潤がんを伴う場合があります。
③”何もない”…何もないのに乳房の挟み方の加減や単なる乳腺の生理的左右差を構築の乱れと取ってしまう場合があります。講習会や学会の読影テストで難しい構築の乱れを見せられると、異常はないのに構築の乱れではないかと気になって仕方なくなることがあります(汗)。
構築の乱れが明らかであれば、カテゴリー4になり、傷跡がなければがんの可能性を十分に考慮しなければなりません。微妙な場合は、”構築の乱れの疑い”としてカテゴリー3と判定します。乳がん検診の精度管理上、このカテゴリー3(構築の乱れの疑い)を増やしすぎないようにすることが、FADと同様に読影者側から見ると重要です。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
2011年6月21日火曜日
乳がん検診の結果が「要精検」だった場合④〜微細石灰化
石灰化というのは、何らかの原因でカルシウムが沈着したものを言います。石灰化には良性の石灰化と悪性の石灰化があり、良性の石灰化が悪性に変わるということはありません。ただ、初期の悪性石灰化は良性の石灰化と区別がつかないことはあります。ですから、前回のマンモグラフィとの比較が非常に有用な場合があります。
一目見て良性と判断できる石灰化には、動脈硬化、嚢胞の石灰化、古い線維腺腫の石灰化などがあります(カテゴリー1または2)。
問題は良性か悪性化の鑑別が必要な石灰化です。これをカテゴリー2(良性)から5(悪性)までにカテゴリー分類するのですが、これは2つの要素を組み合わせて判断します。
1つ目は、石灰化一つ一つの形状です。微小円形→淡く不明瞭→多形性(ガラスを割ったかけらのような形)→微細線状・微細分枝状(木の枝のような形状)の順で悪性の比率が高くなります。
2つ目は石灰化の分布です。びまん性・領域性(乳管の走行=腺葉に一致しないぱらぱらとした分布)→集簇性(狭い範囲に集まっている)→線状・区域性(乳管の走行=腺葉に一致した分布)の順で悪性の可能性が高くなります。
例えば、微小円形の石灰化が、びまん性にあればカテゴリー2、集簇性にあればカテゴリー3、微細分枝状の石灰化が区域性にあればカテゴリー5、のように判定します。
カテゴリー5と判定された場合は、がんである可能性が非常に高いと考えます。カテゴリー4(例えば多形性、集簇)の場合は、がんの可能性が30-50%と言われています。カテゴリー3の場合は、良性の可能性が高いですが、5-10%くらいがんの可能性もあります。カテゴリー3以上は「要精検」となります。
基本的な判断基準は上に書いた通りですが、時に紛らわしい場合があります。以下に例を挙げます。
・線維腺腫の石灰化…石灰化ができ始めの時は、多形性・集簇性に見える場合があります(やや丸みを帯びているのでわかることが多いですが時に迷う場合があります)。
・温存術後に見られる異栄養性石灰化…時間がたつと大きな石灰化になっていくので良性とわかりますが、やはりでき始めの時には局所再発ではないかと心配する場合があります。
・MLT(mucosele-like tumor)の石灰化…少し変わった形をしているため悪性に見える場合があります。
・悪性の場合でも、微小円形石灰化で数が少ない場合は、カテゴリー3以上に取れない場合があります。経過を追うことによって数が増え、要精検となる場合がたまにあります。以前、研修でお世話になった病院で、3年以上経過を追って、石灰化が少し増えたのでマンモトーム生検をしたら非浸潤がんだった症例もありました。微小円形の石灰化(分泌型)はがんでも見られますが、多形性や微細分枝状の石灰化(壊死型)と異なり、進行がゆっくりなことが多いので、強く悪性を疑わない場合には、カテゴリー3でもマンモトーム生検までしないで経過をみる場合もあります。
患者さんの中には、検診で「微細石灰化」という結果が届いただけで「がんなんだ…」と思い込んで受診される方もいらっしゃいます。実際はカテゴリー3での「要精検」のケースが多いですので微細石灰化=がんではありません。微細石灰化で「要精検」となった場合は、通常、まず超音波検査で病変が見えるか確認します。見えれば細胞診、または組織診を行ないます。MRも診断の補助になりますので、超音波検査で見えない場合には特に判断のためには有用です。これらの検査結果を踏まえた上で、経過観察にするか、ステレオガイドのマンモトーム生検まで行なうかを判断します。超音波検査やMRで病変が確認できないような乳がんは一般的に進行が遅いおとなしいタイプですので経過観察も選択肢に入ります。慌てずに順序を追って検査を受けるようにして下さい。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
一目見て良性と判断できる石灰化には、動脈硬化、嚢胞の石灰化、古い線維腺腫の石灰化などがあります(カテゴリー1または2)。
問題は良性か悪性化の鑑別が必要な石灰化です。これをカテゴリー2(良性)から5(悪性)までにカテゴリー分類するのですが、これは2つの要素を組み合わせて判断します。
1つ目は、石灰化一つ一つの形状です。微小円形→淡く不明瞭→多形性(ガラスを割ったかけらのような形)→微細線状・微細分枝状(木の枝のような形状)の順で悪性の比率が高くなります。
2つ目は石灰化の分布です。びまん性・領域性(乳管の走行=腺葉に一致しないぱらぱらとした分布)→集簇性(狭い範囲に集まっている)→線状・区域性(乳管の走行=腺葉に一致した分布)の順で悪性の可能性が高くなります。
例えば、微小円形の石灰化が、びまん性にあればカテゴリー2、集簇性にあればカテゴリー3、微細分枝状の石灰化が区域性にあればカテゴリー5、のように判定します。
カテゴリー5と判定された場合は、がんである可能性が非常に高いと考えます。カテゴリー4(例えば多形性、集簇)の場合は、がんの可能性が30-50%と言われています。カテゴリー3の場合は、良性の可能性が高いですが、5-10%くらいがんの可能性もあります。カテゴリー3以上は「要精検」となります。
基本的な判断基準は上に書いた通りですが、時に紛らわしい場合があります。以下に例を挙げます。
・線維腺腫の石灰化…石灰化ができ始めの時は、多形性・集簇性に見える場合があります(やや丸みを帯びているのでわかることが多いですが時に迷う場合があります)。
・温存術後に見られる異栄養性石灰化…時間がたつと大きな石灰化になっていくので良性とわかりますが、やはりでき始めの時には局所再発ではないかと心配する場合があります。
・MLT(mucosele-like tumor)の石灰化…少し変わった形をしているため悪性に見える場合があります。
・悪性の場合でも、微小円形石灰化で数が少ない場合は、カテゴリー3以上に取れない場合があります。経過を追うことによって数が増え、要精検となる場合がたまにあります。以前、研修でお世話になった病院で、3年以上経過を追って、石灰化が少し増えたのでマンモトーム生検をしたら非浸潤がんだった症例もありました。微小円形の石灰化(分泌型)はがんでも見られますが、多形性や微細分枝状の石灰化(壊死型)と異なり、進行がゆっくりなことが多いので、強く悪性を疑わない場合には、カテゴリー3でもマンモトーム生検までしないで経過をみる場合もあります。
患者さんの中には、検診で「微細石灰化」という結果が届いただけで「がんなんだ…」と思い込んで受診される方もいらっしゃいます。実際はカテゴリー3での「要精検」のケースが多いですので微細石灰化=がんではありません。微細石灰化で「要精検」となった場合は、通常、まず超音波検査で病変が見えるか確認します。見えれば細胞診、または組織診を行ないます。MRも診断の補助になりますので、超音波検査で見えない場合には特に判断のためには有用です。これらの検査結果を踏まえた上で、経過観察にするか、ステレオガイドのマンモトーム生検まで行なうかを判断します。超音波検査やMRで病変が確認できないような乳がんは一般的に進行が遅いおとなしいタイプですので経過観察も選択肢に入ります。慌てずに順序を追って検査を受けるようにして下さい。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
2011年6月20日月曜日
乳がん検診の結果が「要精検」だった場合③〜局所的非対称性陰影(FAD)
おそらく「要精検」の中で一番多いのがこの所見だと思います。そして、読影する側から言うと、このFADをどの程度拾うかが、要精検率にも陽性反応的中度にも大きく影響してきます。ついつい拾いすぎてしまうと要精検率が上がり、検診精度としては好ましくない結果になってしまいます。
局所的非対称性陰影(FAD)は、「腫瘤」と言えるほどの濃度や境界を持たない左右非対称性の陰影のことです。
どんなタイプのがんでもFADとして判定される可能性はありますが、乳腺濃度が低い場合は、浸潤がん(硬がんや充実腺管がんなど)では腫瘤と認識できることが多く、非浸潤がんではFADと判定されるケースが多いような印象です。乳腺濃度が高い場合は、腫瘤の境界がよく見えないことがあり、浸潤がんでもFADとしか言えないことがあります。
一方、良性腫瘍でも乳腺と重なると境界がはっきりせず、腫瘤とは判断できずにFADとされることがあります。また、離れ小島のように存在している単なる乳腺組織や乳腺同士の重なりで濃くなった部分がFADと判定されることもよくあります。これをいかに区別するかが、読影医の悩みどころです。
「要精検」とされる所見で一番多いのはこのFADですが、その一方で異常がない可能性が一番高いのもFADかもしれません。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
局所的非対称性陰影(FAD)は、「腫瘤」と言えるほどの濃度や境界を持たない左右非対称性の陰影のことです。
どんなタイプのがんでもFADとして判定される可能性はありますが、乳腺濃度が低い場合は、浸潤がん(硬がんや充実腺管がんなど)では腫瘤と認識できることが多く、非浸潤がんではFADと判定されるケースが多いような印象です。乳腺濃度が高い場合は、腫瘤の境界がよく見えないことがあり、浸潤がんでもFADとしか言えないことがあります。
一方、良性腫瘍でも乳腺と重なると境界がはっきりせず、腫瘤とは判断できずにFADとされることがあります。また、離れ小島のように存在している単なる乳腺組織や乳腺同士の重なりで濃くなった部分がFADと判定されることもよくあります。これをいかに区別するかが、読影医の悩みどころです。
「要精検」とされる所見で一番多いのはこのFADですが、その一方で異常がない可能性が一番高いのもFADかもしれません。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
2011年6月19日日曜日
乳がん検診の結果が「要精検」だった場合②〜腫瘤(疑い)
検診結果が「要精検」で、所見のところに「腫瘤(疑い)」または「mass」と書いていた場合、マンモグラフィに「しこり」のようなものが写っているということです。
このような判定の場合、「がん」の可能性があるのはもちろんですが、「がん」ではないのにこの所見になることがあります。そういう判定になる可能性があるのは以下のような場合です。
①良性乳腺腫瘍:
線維腺腫、嚢胞などの良性腫瘍の場合は、境界明瞭な腫瘤としてマンモグラフィに写ります。超音波検査で見ればだいたい良性とわかるこのような腫瘍でも、マンモグラフィの判定は「カテゴリー3」になってしまいます。
②皮膚腫瘤:
ほくろや粉瘤などの皮膚の腫瘤も挟み方によっては乳腺内のしこりのように写ってしまい、「要精検」と判定されることがあります。触診所見にきちんと記載してあれば除外できるのですが、書いていないと区別できないのです。
③腋窩リンパ節
腋窩リンパ節が乳腺に近い位置にあったり、乳腺が発達していて腋窩まで伸びている場合は、腋窩リンパ節と乳腺内の腫瘍とが区別できないことがあります。明らかに脂肪を含んでいたり、馬蹄形をしていればリンパ節と判断できるのですが、円形や楕円形で脂肪をあまり含まない場合は判断に迷う場合があります。
「腫瘤」と書かれると、とても心配になると思いますが、腫瘤=がんではないことがおわかりいただけたと思います。良性という可能性も十分ありますので、まずはきちんと再検査を受けるようにして下さい。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
このような判定の場合、「がん」の可能性があるのはもちろんですが、「がん」ではないのにこの所見になることがあります。そういう判定になる可能性があるのは以下のような場合です。
①良性乳腺腫瘍:
線維腺腫、嚢胞などの良性腫瘍の場合は、境界明瞭な腫瘤としてマンモグラフィに写ります。超音波検査で見ればだいたい良性とわかるこのような腫瘍でも、マンモグラフィの判定は「カテゴリー3」になってしまいます。
②皮膚腫瘤:
ほくろや粉瘤などの皮膚の腫瘤も挟み方によっては乳腺内のしこりのように写ってしまい、「要精検」と判定されることがあります。触診所見にきちんと記載してあれば除外できるのですが、書いていないと区別できないのです。
③腋窩リンパ節
腋窩リンパ節が乳腺に近い位置にあったり、乳腺が発達していて腋窩まで伸びている場合は、腋窩リンパ節と乳腺内の腫瘍とが区別できないことがあります。明らかに脂肪を含んでいたり、馬蹄形をしていればリンパ節と判断できるのですが、円形や楕円形で脂肪をあまり含まない場合は判断に迷う場合があります。
「腫瘤」と書かれると、とても心配になると思いますが、腫瘤=がんではないことがおわかりいただけたと思います。良性という可能性も十分ありますので、まずはきちんと再検査を受けるようにして下さい。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
乳がん検診の結果が「要精検」だった場合①〜はじめに
乳がん検診の結果が郵送されてきて、「要精検」と書いてあると「乳がんではないか?」ととても心配されると思います。もちろん、乳がん検診は乳がんの早期発見のために行なう検診ですので、乳がんの可能性があると判断した場合に「要精検」として結果をお返しするのは事実です。しかし、「要精検」とされた方のうち、実際にがんであった方の比率(陽性反応的中度)はそれほど高くないのが実際です。
ちなみに平成22年3月に発表された「がん対策基本法案答申」によると、乳がん検診における各指標の目標値は以下のとおりです。
要精検率 11.0%以下
がん発見率 0.23%以上
陽性反応的中度 2.5%以上
つまり、1000人の方が乳がん検診を受けると約100人が「要精検」と判定されますが、そのうちでがんである人は2-3人しかいないということです。残りの97-98人はがんではないのです。ですから「要精検」と判定されても「がん」だと決めつけていたずらに怖がるのではなく、きちんと検査を受けて疑いを晴らす、という考え方で良いと思います。
「要精検」と判定されるのは、判定が「カテゴリー3以上」の場合です。カテゴリーが3以上になる主な所見は、「腫瘤(疑い)」「微細石灰化」「局所的非対称性陰影(FAD)」「構築の乱れ(distortion)」です。
これからそれぞれについて数回に分けてご説明します。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
ちなみに平成22年3月に発表された「がん対策基本法案答申」によると、乳がん検診における各指標の目標値は以下のとおりです。
要精検率 11.0%以下
がん発見率 0.23%以上
陽性反応的中度 2.5%以上
つまり、1000人の方が乳がん検診を受けると約100人が「要精検」と判定されますが、そのうちでがんである人は2-3人しかいないということです。残りの97-98人はがんではないのです。ですから「要精検」と判定されても「がん」だと決めつけていたずらに怖がるのではなく、きちんと検査を受けて疑いを晴らす、という考え方で良いと思います。
「要精検」と判定されるのは、判定が「カテゴリー3以上」の場合です。カテゴリーが3以上になる主な所見は、「腫瘤(疑い)」「微細石灰化」「局所的非対称性陰影(FAD)」「構築の乱れ(distortion)」です。
これからそれぞれについて数回に分けてご説明します。
*ご質問をされる前にhttp://hidechin-breastlifecare.blogspot.jp/2013/10/blog-post.htmlをご覧下さい。
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