先日ここでも書いた、米国のマンモグラフィ検診の論争が、国内でもかなり関心を呼んでいるようです。そもそものきっかけは、昨年11月,USPSTFが40~49歳の女性のマンモグラフィによる定期検診を推奨しないとする勧告(Ann Intern Med 2009; 151: I44)を発表したことでした。これに対して米国内の専門家達が猛反発をしているというお話でした。
厚生労働省は、これらの問い合わせを受けて、このたび公式な見解を発表しました。
要旨は次の通りです(厚労省の回答ページ http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_situmon.html)。
1.米国内でも専門家による反対意見が相次いでいる。米国政府セベリウス保健福祉長官も「この作業部会は政府の外部独立委員会であり、政府の政策を決定する機関ではなく、今回作業部会が新たな勧告を示したものの、米国政府の乳がん検診に関する方針は現行どおりで、検診対象者を変更しない」というメッセージを発表している。
2.米国では日本と異なり60歳以上の乳がん患者が多く,今回のUSPSTFの勧告を反映するのは妥当ではないとする専門家の意見がある。
3.現時点においては,日本におけるマンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診の対象年齢を変える必要はないが、引き続き動向を見ていく。
したがって、日本の乳がん検診は今まで通りで当面行なうということです。しかし、数年後に、現在行なわれているJ-STARTの臨床試験結果が発表されれば、40歳代以下の乳がん検診は超音波検査が主体になっていくかもしれません。今後の動向に注目しています。
11 件のコメント:
先生、今年もよろしくお願いいたします。
帰省の北海道では、雪の影響で飛行機が遅れました。やはり北海道の冬はきびしいですね。
ところで、私は2年前の44歳の時に、マンモでは問題なかったのですが、超音波で4ミリのしこりがみつかりました。
残念ながら乳がんだったわけですが・・・
しかし、病院の術後定期検査は、胸に関しては年に一度のマンモだけなのです。
私の乳がんはマンモでは発見されず、超音波でみつかったので、超音波検査をしてほしいと、主治医に何度も頼んだのですが・・・
「マンモが世界のガイドライン」の一点張りで、結局術後2年間一度も超音波検査をしてません。
今、やっている研究の結果は数年後ですよね??私のような40代の患者は待てません・・・
本当にこのままだと心配で不安です。
先生の病院でも、私のような患者でも、定期検査はマンモだけですか??
>mafuさん
たしかに欧米のガイドラインでも日本乳癌学会のガイドラインでも、乳癌術後の検査で”エビデンスがある”のは年1回のマンモグラフィのみです。
しかし、日本人の乳癌術後に乳腺エコーが無意味であるというエビデンスもないのです。
主治医の先生にはその先生なりの考え方があると思いますので私は否定はしませんが、私自身は6ヶ月に1回、もしくは年1回の乳腺超音波検査を年1回のマンモグラフィに併用しています。
あくまでも私の経験上ですが、乳癌術後の残存乳房内再発(多発癌)や対側乳癌の発見契機は圧倒的に超音波検査の方が多いです。特に小腫瘤で発見される場合は超音波発見がほとんどです。微細石灰化で発見される場合はマンモグラフィの方が有用ですが、日本人の高濃度の乳房の小腫瘤発見にはマンモグラフィよりも超音波検査のほうが良い場合が多いと私は思っています。
なお、乳房温存術後の乳房に対するマンモグラフィの有用性は証明されていません。局所再発の早期発見にはエビデンスはないのです。
以上、個人的な見解をお書きしました。
私は基本的には主治医の先生の考え方を尊重する立場です。しかし、もしmafuさんがどうしてもマンモグラフィのみでは不安なので、超音波検査を受けたいと希望されるのであれば、転院も検討してみてはいかがでしょうか?でもまずその前にもう一度主治医の先生とご相談されることをお勧めしますが…。
私の場合は術後5年間の治験の治療スケジュールで一年ごとの検診の内容は決まってます。
去年の7月、術後1年検診の時、治験の検診のほかに、マンモしかしなかったのでエコーはしなくていいのかと聞いたんですが、マンモしたからいいでしょ・・
と言われてしまいました。
今後の検診のしかたについて聞いたときも、それに関しては、1年に一回マンモだけでいいという主治医の見解のようでした。
う~ん・・
1年目2年目が一番再発転移しやすいあぶない時期だからその期間だけでもエコーもしてほしいなとその時は思いました。
だから不安にならなかったといえば嘘になります。。
でも、私は主治医とあまり意思の疎通をはかることが出来てないので、素直に不安に思ったことなど話すことできず、いろいろ悩んだときもありましたが、なんと3月末に主治医が異動になり4月から担当主治医がかわるとの事なんです!(かなりうれしい・・・!)
今度の3番目の主治医こそ、一番初めの初診から診てくれてた主治医と同じように何でもお話しができるような方がいいなと期待してます。
私は治験に参加している以上転院はできないので・・・
そしたら不安なこと何でも相談できる主治医という事だけでも精神的にも大変安心しますので2年目の検診のときなどマンモだけでは不安だという気持も話せるかなと思ってます^^
でも医師が乳がんと診断するにはいくつもの検査を経て診断しますよね・・・
そしてエコーとマンモはそれぞれのメリット、デメリットを補ってますよね。
なので患者的には検査項目がいっぱいあったほうが医師に判断してもらえやすく、判断材料も多いほうがその診断も確実じゃないのかなとも思うので、エコーもマンモも検査して欲しいなとも思うのですが・・・
必要のない検査はしなくて、マンモだけで充分、エコーはしなくていいという見解だけでは患者としては、説得力にかけ、ちょっと理解できない部分もあったりするんですけどね。。
>きみちゃんさん
ご不安に思われるのももっともだと思います。きみちゃんさんの治験では術後の定期検査内容までは制限されていないはずですよね?
きみちゃんさんがお書きになった通り、マンモグラフィと超音波検査は相補的な関係にあります。ですから自分自身の経験も合わせて、エビデンスがなくても私は両者を併用しています。
今度担当になる医師がなんでも自由に話し合える先生だといいですね!
はじめまして。
先生の情報、いつも拝見させていただいてます。
私は昨年術前化学療法後→10月温存術→昨日放射線終了したばかりですが、マンモに写らず触診とエコーで判明したクチです。(年齢は42歳)”しこり”もなく主治医に「ここに腫瘍があります」と言われた所を自分で触っても結局分からず仕舞い・・。今は治療中なので問題ないと思うのですが、今後自己検診ができるかとても不安です。
浸潤性乳管癌(左乳房に3.5+1.5㎝2つの腫瘍)は”しこり”は出来ないのですか?そしてマンモには写らないものなのでしょうか?
>りんこさん
はじめまして。
”しこり”もなく主治医に「ここに腫瘍があります」と言われた所を自分で触っても結局分からず仕舞い・・。今は治療中なので問題ないと思うのですが、今後自己検診ができるかとても不安です。”
→癌が触れるかどうかは、乳腺の厚さや硬さ、できる部位(深さ)によって異なります。しこりとしてだけではなく、ひきつれや乳頭分泌など、自己検診でわかる場合もありますので月1回は触ってみてください。
”浸潤性乳管癌(左乳房に3.5+1.5㎝2つの腫瘍)は”しこり”は出来ないのですか?そしてマンモには写らないものなのでしょうか?”
→浸潤性乳管癌は乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌という普通にみられる乳癌の総称です。ですから、通常は一定の大きさになれば”しこり”として触れることが多いです。ただ、年齢が若かったり、乳腺症などで乳腺が硬い場合には触れにくいことがあります。特に乳腺の深部にある場合はある程度大きくてもわからないことがあります。りんこさんの場合の3.5cmと1.5cmというのが、浸潤部分の大きさだけではなく、非浸潤癌も含めた大きさなら手で触れる可能性のある大きさは、それよりも小さいことになります。通常、触診で触れるのは浸潤癌の部分だからです。りんこさんは年齢も若いので、乳腺も硬いため触診でもマンモグラフィでもわかりにくかったのだと思います。
術後の経過観察は超音波検査の併用が望ましいと思います。もちろん自己検診が無駄だという意味ではありません。表面に近い場合や引きつれを伴う場合、乳頭分泌を伴う場合には、早期でもわかる場合がありますからね。
お大事に!
>りんこさん
追加です。
言い忘れましたが、術後の検査としてマンモグラフィも必要です。小さな腫瘤はりんこさんの場合はわかりにくいかもしれませんが、石灰化で早期乳癌が発見されることもあるからです。年1回はマンモグラフィも受けましょう。
了解しました!
先生の患者さんでもないのに、お忙しい中分かり易い回答を頂き有難うございます。
先生も「こんなこと、主治医に聞けよ・・」てな気分でしょうが、私の主治医は同世代で決して話しにくい先生ではないのですが、東京にある大学病院でいつも2~3時間待ち、且つ午後から他の病院にも診察に行っているようで、とにかく忙しいらしく(良く貧乏ゆすりとかしてるし。←癖かも知れないけど)何かゆっくり話せない感じなんですよ~。何だかグチになってしまいました・・・。
先生が主治医なら良かったなぁ、と思いつつも北海道まで行く事は出来ないため、今の主治医にはもっとズーズーしく聞いていこうと思います。自分の事だものね。
また不安な事や分からない事があったら懲りずに教えて下さい。宜しくお願いします。
>りんこさん
主治医の先生も本当はもっとゆっくり答えてあげたいんだと思いますよ。でも忙しい外来の中では他の患者さんをお待たせしたくないという気持ちがあるのでどうしてもゆっくり聞いてあげれない雰囲気になるんだと思います。私にもそういうことはありますので、患者さんには申し訳なく思っています。
私がこのブログを始めたのは、そういう患者さんの疑問や不安を補ってあげれたらいいなと思ったのも動機の一つなんです。
ですから遠慮せずお聞きになってくださいね。
初めまして。突然のメールお許しください。
私の母が、今月頭、乳ガンと告知されました。
64歳、大きさ1.6センチ、1期、硬がん。とこれだけしかまだ情報はありません。遠くに住んでいるため電話で聞くにも、母も心配かけまいとあまり話しません。
私なりに調べたのですが、硬がんはたちが悪く、例え初期でも転移しやすいから注意が必要、予後も悪い。と書いてあります。
それなのに、母の医師は『そう簡単には進行しないから 』『待ちもあるから』
と手術も一ヶ月も先になったそうです。
大丈夫てしょうか?その間に転移してしまうんじゃないかと、不安て不安てたまりせん。
因みに春には肺梗塞と診断され、血液をサラサラにする薬も飲んでいます。
>匿名さん
はじめまして。
突然のお母様の発病で大変不安なことと思います。ネットの情報は誤解されやすい表現がよく書かれていますのでネットの一部の情報のみを鵜呑みにするのはおすすめできません。
硬がんはよく見られる浸潤性乳管がんの3つのタイプのうちの1つです(その他は充実腺管がんと乳頭腺管がん)。たしかに組織型別に予後を比べてみると硬がんは、乳頭腺管がんに比べると少し悪いですが、充実腺管がんもトリプルネガティブと呼ばれる組織型が多く含まれることもあり、やはり乳頭腺管がんよりは悪いです。そして硬がんは乳癌全体の中でも非常にありふれた組織型ですが、乳がん全体の予後は早期で見つかれば他のがんに比べると比較的良好です。つまり、何と比べて予後が悪いと言っているかをよく考えずに情報を読んでしまうと判断を誤ります。
繰り返しますが硬がんはよく見られる組織型で乳がんの中で特別なタイプではありません。他の特殊型と呼ばれるタイプの中には非常に予後の悪い組織型もありますが、少なくとも硬がんという組織型だけでそこまで予後が不良と言えるわけではありません。
なお今は再発率や悪性度、抗がん剤の必要性の判断を組織型で判断することはほとんどしません。ホルモンレセプター、HER2、Ki-67(または核異型度)を中心にリンパ節転移の数などを加味して判断する時代です。ですから転移しやすさ(再発しやすさ)、悪性度などを正確に判断するためには、手術した標本について上記のような情報を詳細に検索しなければ最終的にはわからないのです(針生検材料でも一定の判断はできます)。
硬がんは一般によく見られる代表的な乳がんですので、担当医のおっしゃる判断は間違ってはいません。できるだけ早くにというお気持ちはわかりますが、手術までに1ヶ月くらいかかるのは実際問題としてよくあることですし(有名病院ほど待ち時間は長くなります)、乳がんは診断されるまでにすでに発がんから5-10年たっていますので1ヶ月でものすごく進行することは通常ないというのが一般的な考え方です。ただまれに急に大きくなることもないわけではありませんので(これこそが真に悪性度の高いタイプです)、明らかな増大があればすぐに受診するようにお伝え下さい。
取り急ぎ以上です。
なお、ブログのトップページの注意事項を一度読んでいただければ幸いです。それではお大事に。
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