2010年3月2日火曜日

lasofoxifeneが閉経後女性のER陽性乳がんのリスクを低下

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:タモキシフェンやラロキシフェンなど)に乳がん予防効果があることは以前から知られています。

今回発表されたPEARLS試験の報告によると、SERMの1つである、lasofoxifene 0.5mg/日の投与によって、閉経後ER陽性乳がん発生のリスクを81%低下させ、浸潤癌発生のリスクを85%低下させるという結果だったということです。

その他にもlasofoxifene 0.5mg/日の投与によって閉経後女性のリスクファクターのいくつかに予防効果がみられました。主なものを挙げてみます(数値は低下率)。

非椎体骨折       24%
椎体骨折        42%
心血管障害イベント   23%
脳卒中         36%

一方、lasofoxifene 0.5mg/日の投与によって増加したリスクファクターは、静脈血栓塞栓症イベント(2.06倍)、肺塞栓症(4.49倍)でした。子宮内膜がんの増加は認めず、総死亡に与える影響はありませんでした。

この結果をどう判断するかは、難しい問題です。一見、好ましい結果のように思いますが、乳がんの発生を抑制できているのに、総死亡率は低下していない点に注目する必要があります。

がん検診のところにも書きましたが、がん早期発見のための検診やがん予防として考える場合には、総死亡率が低下しなければ、本来は意味がないのです。つまり、乳がんによる死亡が減っても、他のがんによる死亡や他の疾病(脳卒中や心疾患、肺疾患など)による死亡が増えてしまえば、得られるメリットは少ないということです。

今回の結果は、乳がんの予防というよりは、骨折によるQOL低下を防ぐという意味合いが一番大きいのかもしれないと考えています。

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