2010年4月26日月曜日

中間期乳癌〜乳がん検診の精度は100%ではありません!

乳がん検診で「異常なし」と判定された後で、次の検診(現行制度では2年後)までの間に発見された乳癌を中間期乳癌と言います。

中間期乳癌が発生してしまう理由には次のようなことが挙げられます。

①前回乳がん検診時の見落とし
触診のみの時代には検証しようがありませんでしたが、現在行なわれているマンモグラフィ検診では、前回のフィルムを見直すことで確認することが可能です。
この中には、誰が見ても要精査とすべきなのに見落としてしまった場合と、写ってはいるけど今回と比較して初めて指摘が可能である微妙な病変とに分けられます。この微妙な病変を指摘できるかどうかは、マンモグラフィ読影医の技量と読影システム(ダブルチェックなど)にも影響されます。中間期乳癌の大部分はこの微妙な病変です。これを医療過誤と呼ぶのは妥当ではありません。例えば半数の読影医しか指摘できない病変を指摘しなかったことが医療過誤だと言ってしまうと、半数の医師は罪を問われるからです。実際、このようなケースを恐れすぎてしまうと、要精査率が上がりすぎてしまいます。検診を受けた人の過半数が精密検査にまわるようでは検診の意味がなくなってしまいますよね。ですから、読影医は見落としに気をつけながら、拾いすぎないようにも気を配らなければならないのです。そういう中で、微妙な病変の見落としというケースが生じてしまいます。

②前回検診後に比較的急速に大きくなって病変が指摘できるようになったケース
前回のマンモグラフィをいくら見ても今回の病変が指摘できない場合です。このようなケースは急速に増大する悪性度の高い癌であることが多いです。組織型では充実腺管癌や化生癌など、免疫染色による分類では、HER2陽性やトリプルネガティブに多い印象があります。
私自身も前回のマンモグラフィ(脂肪性乳腺なので非常にマンモグラフィが見やすい患者さんでした)では全く病変が認められなかったのに、1年経つ前に1.5cmくらいのしこりを自覚して受診された方を経験しました。この患者さんはトリプルネガティブの充実腺管癌でした。

③前回検診時にも指摘できる大きさだったかもしれないが検証困難なケース
これは、マンモグラフィの死角に癌があった場合です。50才以上では1方向のみですので、どうしても内側の上側が撮影範囲から欠けやすくなります。ここにできた場合はマンモグラフィに写らないことがあります。それを補うために触診を行ないますが、乳房の厚みや硬さによってはわかりにくい場合もあります。こういうケースは2方向撮影を行なうか超音波検査を併用すれば指摘できた可能性があります。しかし、現行の検診制度では検出困難なのです。

以上のことから、乳がん検診で「異常なし」と判定されることが、「あなたの乳房には癌がありません」ということとイコールではないということがおわかりいただけたと思います。われわれ乳腺外科医もマンモグラフィの読影模擬試験や定期的な講習会を受けて、このような中間期乳癌をできるだけ減らすための努力を行なっていますが、残念ながらそれでも100%防ぐことはできません。

このように、乳がん検診を受ける方にもマンモグラフィ検診には限界があるということを理解していただく必要があります。
ご自分の命を守るためにも、検診を過信しすぎないように、自己検診を月1回はするようにして下さい。

0 件のコメント: