2010年4月20日火曜日

がんの補完代替医療 慎重に(読売新聞より)

読売新聞をとっていないため(生まれつきアンチ巨人なんです…すみません…)インターネットのニュースでこの記事を読みました。
要旨を抜粋してご紹介します。

・がん患者の4割以上が、東洋医学や健康食品、免疫療法など、保険適用外の「補完代替医療」を利用している。
・一部は近年になって苦痛緩和に役立つことが分かってきたが、がん自体の縮小効果が科学的にはっきりと立証されたものはない。
・貴重な時間とお金を無駄にしないよう、患者・家族も慎重に判断する必要がある。

<アメリカのがんの専門家による報告(2007年)>
・一部の補完代替医療の効果について、実際の患者で試して科学的に検証した報告の中では、はり・きゅうの有効性を認める研究が多く、がんに伴う痛みや、放射線治療後の口内乾燥症、抗がん剤や麻酔によるむかつきや嘔吐などに対しての利用は勧められる。

<厚生労働省研究班の報告>
・補完代替医療の安全性や有効性に関する国内外の論文を集め、臨床試験も行っている。
・最も多く利用されているキノコの健康食品「アガリクス」は、抗がん剤による食欲不振や脱毛、全身倦怠感を軽減するという論文はある反面、ごくまれに肝機能を悪化させることがある。
・免疫力を高めて、がんを死滅させようとする免疫療法は、早期がんでは様々な種類のがんで世界各地で臨床試験が進んでいるが、手術も放射線治療もできない極端な進行例には歯が立たない(*注 現段階では…)。

<研究班代表、四国がんセンター胸部外科医長 山下素弘先生のコメント>
「治療の主役はあくまでも手術・放射線・抗がん剤。補完代替医療は脇役で、それだけに頼れば治せるはずのがんが治らなくなるかもしれない。『絶対に治る』という言葉には用心を」
「本当に有望な治療法なら臨床試験を経て数年内に保険適用されるはず。まずは宣伝文句を疑い、安全性と有効性を吟味するべきだ」

→吟味する上でのポイント
〈1〉健康食品やサプリメントにも副作用の心配はある
〈2〉培養細胞や動物を使った実験の結果と体験談だけでは信用に値しない
〈3〉通常はがんの大きさが30%以上縮小した患者の割合で効果の有無を判定する
〈4〉治療法の解説文やデータを主治医に見せて相談する


→これらを踏まえ、さらに下に挙げたような研究機関や厚労省研究班のホームページで安全性・有効性に関する情報、臨床試験の内容などを調べると検討の際に参考になります。


【がんの補完代替医療に関する相談窓口】
(いずれも保険がきかない自由診療で、要予約)
・大阪大病院(大阪府吹田市) (電)06・6879・3498
・徳島大病院(徳島市)    (電)088・633・7960
・芳珠記念病院(石川県能美市)(電)0761・51・5551
・四国がんセンター(松山市) (電)089・999・1114

【がんの補完代替医療に関するインターネットサイト】
厚生労働省研究班のホームページ=基礎知識や試験結果など紹介 
 http://www.shikoku-cc.go.jp/kranke/cam/index.html
「がんの補完代替医療ガイドブック」=厚労省研究班の解説書をダウンロードできる 
 http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med67/guide/index.html
国立健康・栄養研究所のサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」=成分ごとに論文発表された情報を検索できる  
 http://hfnet.nih.go.jp/

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは、今月17日に乳ガンと告知されたYです。
まだ手術方法も主治医も決めていません。
どこに投稿すれべきか迷ったのですが、先生が代替治療に関して肯定こそされていませんが、否定もされていないと思いましたの、ここにコメントさせてください。

私は英語が苦手ですが、スコットランド人の友人がいます。がん告知をされた日にたまたまメールが来たので、
『乳ガンになり、しばらく連絡ができないかもしれない』とメールすると、
『このwebsiteを英語が堪能な人に読んでもらって』
とリンクを貼ってくれました。海外では認められたがんの薬を紹介しているとのことでした。
翻訳サイトを使うと、その薬の日本名がわかりました。ネットで調べ、日本でも代替治療をしている医院などで実際に処方されてるところもあることを知りました。
しかし、どこもなにか怪しげです。
その友人には
『私もできるなら、その素晴らしい薬を飲んでみたいが
外国の薬品はその国の人の平均的な身長、体重、食生活、環境などに合わせて作られています
ドクターが指定した以外の薬品を服用すると、治療を拒否されることもあります』
ということを書いて返事をしたのですが、
返ってきたきた返事には、
『君はドクターにこのwebsiteを読んでもらったのか?
私の知り合いが実際にこの数年で20人は治癒しているんだから、信頼してほしい
是非ドクターに読んでもらって!』
と何度もメールが届きます。
また友人が言うには、君の好きな治療方法(手術、抗がん剤、放射線治療、ホルモン治療)をした上で、さらにその薬を飲めばいい。副作用もない。そしてその薬は驚くほど安いと言います。
ただネットで買ったりすることはできず、医師の処方箋をもって薬局で買う方法しかないということも書かれてした。
こちらにそのwebsiteを貼付けます。のでご覧になって
先生のご意見をおきかせていただけませんか?
またこの記事が不適切な場合はすぐに削除してください。
よろしくお願いいたします。
http://www.lowdosenaltrexone.org/

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Yさん)
Naltrexoneは麻薬拮抗剤の1種です。がん細胞にあるオピオイド受容体を介してがん細胞のアポトーシスを促進する(?)ということでアメリカのBernard Bihariという医師が最初に低用量ナルトレキソン療法(LDN)の効果を報告したらしいですね(私は知りませんでしたが…)。ネットを見ると、どのHPにも米国国立癌研究所(NCI)の調査でBihari医師の報告には問題はなかったということが書かれていますが、正確な調査内容はわかりません。

また乳がんにおいてはエストロゲン受容体を介する増殖を抑えたり、腫瘍への血流をブロックしたりなどという効果も動物実験的には報告されているようです。
ミネソタ大学メソニック・がんセンターがNCIと共同で乳がんの転移病変に対するLDNの効果をPETで評価する第2相臨床試験(Phase II Study of Naltrexone for the Treatment of Hormone-Refractory, Metastatic Breast Cancer
)を2006年から実施しているようです(http://www.cancer.umn.edu/research/clinicaltrials/index.php?tabval=&pno=2006LS016&pid=8565)。ということはまだ第2相試験の結果も出ていない状況であることは確かなようです。

臨床試験になっているということは、まったくの怪しげな治療ということではなく、ある程度期待はできるのかもしれませんが、動物実験や少数の研究で効果があるとされたものが、厳密な臨床試験で最終的に効果なしと判断されたケースは山ほどあります。少なくとも安全性と有効性が保証されているわけではないことを理解した上で併用を検討するべきだと私は思います。

ちなみに国内でLDNを行なっているクリニックの中にはとてもがん化学療法に精通しているようには見えない医師が治療を行なっているケースもあるようです。私には彼らがどのような信念と確証をもってこのような治療を行なっているのか非常に疑問です。

ご友人はYさんのことを心配されて好意でこの治療を勧めているのかもしれません(おそらくそうなのだろうと思います)。しかし副作用がないというのは正しくありません(麻薬拮抗剤というれっきとした薬剤ですから)。また私が見たサイトの値段は1ヶ月分で15000円です。けっして安くはないと思います。また知り合い20人が治癒という表現をすることに関しては、私はちょっと疑ってしまいます。なぜなら、標準治療を併用してもよいとその友人はおっしゃっているわけですから治癒したのは標準治療の効果かもしれないからです。フコイダンなんかもそうですが、「標準治療との併用が可能」というように書いてあって良心的な印象を与えていますが、もし効果があれば代替補完療法の効果だと(抗がん剤や放射線治療の効果かもしれないのに)宣伝するケースが多いのは事実です。そこにも十分に注意しなければなりません。

私には今のところこの治療をYさんに積極的にお勧めする根拠は見いだせませんでした。将来的には期待できる治療になるかもしれませんが、がん治療というのはそう簡単でも単純でもないのです。あとは主治医の先生とよくご相談の上でご判断下さい。
それではお大事に!