2010年11月15日月曜日

化学療法中のインフルエンザワクチン接種時期

化学療法中の患者さんからよく聞かれる質問の一つに、インフルエンザワクチンを受けた方が良いのか?受けるならいつがいいのか?というのがあります。

その答えは、「乳癌診療ガイドラインー1 薬物療法 2010年版」の中に書いてあります。要旨は以下の通りです。

1.化学療法施行前または施行中に、インフルエンザ不活化ワクチンの接種が望まれる(推奨グレードB)。
2.化学療法前に接種する場合は、初回投与の2週間前までに接種することが望ましい。
3.すでに治療中の場合は、治療日は避ける。できれば投与後7日以降の接種が望ましい(化学療法後7日以内だと抗体産生能が劣るという報告あり)。

化学療法中のワクチン接種の場合、問題になるのは、抗体の産生能と副作用の重複です。
証明はされていませんが、化学療法剤と同時に投与することが多いステロイドの投与が抗体の産生に影響を及ぼす可能性は否定できません(ステロイドが抗体産生に及ぼす影響はなかったとの報告もありますが…)。
また免疫機能が下がっている時にはあまりワクチンを打ちたくないものです。もしこの時期に接種して発熱した場合、好中球減少に伴う細菌感染なのか、ワクチンの副作用なのかがわからなくなるからです。

ですから私は、例えばFEC療法の場合は、抗がん剤投与2週後以降の骨髄機能が回復する時期に接種するように勧めています。しかしこのころに骨髄抑制のピークを迎えることも多いのが実情です。次のクールを1週ずらして接種するのも一つの方法かもしれません。問題はパクリタキセルをweekly投与している場合ですが、ステロイドも投与しますので3週連続投与1週休薬の場合は、休薬する週に接種しています。しかし、この時期はパクリタキセルでも免疫機能が一番下がっている可能性もあるのでなかなか悩ましいです。この場合も骨髄抑制が強い場合は次のクールを1週遅らせるのが良いかもしれませんね。

以上を考えると、インフルエンザワクチンはできれば化学療法開始前に接種しておくのがベストだと思います。

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