2010年12月7日火曜日

抗癌剤の副作用11 手足症候群

手足症候群は、手足の皮膚細胞が障害を受けることによって起きる副作用です。

症状によって、次のようにグレード分類されます(CTCAE V3.0 日本語訳 JCOG/JSCO版 手足皮膚反応のグレード判定基準)。

グレード1  疼痛を伴わない軽微な皮膚の変化または皮膚炎(紅斑など)
グレード2  機能障害のない皮膚の変化(角層剥離、水疱、出血、腫脹など)または疼痛
グレード3  潰瘍性皮膚炎または疼痛による機能障害を伴う皮膚の変化

発生機序:正確な発症機序は不明。皮膚基底細胞の増殖能の阻害,エクリン汗腺からの薬剤分泌などが原因として考えられています。

発症頻度:ゼローダにおいては、3週投与1週休薬(A法)で51.9%(グレード2以上は23.6%)と報告されています。

原因薬剤:5FU系(5FU注、ゼローダ、フルツロン、TS-1など)でよく見られます。他にタキサン系(ドセタキセル、パクリタキセル)、アンスラサイクリン系(ドキソルビシンなど)、メソトレキセートでも起きることがあります。また乳がんへの適応はありませんが、ソラフェニブやスニチニブなどの分子標的薬でも起きると言われています。

治療:確立した治療法はありません。グレード2以上では抗癌剤投与中止が望ましいと言われています。そのまま継続すると薬剤終了後も症状が続くことがあります。非薬物療法としては、手足の安静、挙上,冷却などがあります。薬物療法では、局所には保湿クリームの塗布、ステロイドの外用が有効です。内服治療としてはリン酸ピリドキサール(ビタミンB6)錠(ピドキサール®)を投与します。ゼローダ投与時には、私は予防的にこの薬を内服してもらっていますが、重篤な手足症候群はほとんどみられなくなりました。

日常の注意点:
①皮膚を清潔にし,乾燥を避ける→低刺激性石けん、保湿剤を使用
③過度の荷重や機械的刺激(熱、摩擦、ジョギングなど)を避ける→やわらかいパッドなどを患部に当てる


余談ですが…私の父は7年前に大腸癌で亡くなりました。肝転移を伴う進行癌で見つかったため、根治手術はできず5FUの持続点滴を行なっていましたが、途中からひどい手足症候群に悩まされていました。あのころはピドキサールの内服が有効であることも知らず、主治医の指示のまま治療を継続していたため、途中から痛みで歩くこともできなくなってしまいました。亡くなる直前までこの治療を自宅で受けさせてしまったことは今でも後悔しています。全身状態を考えると、もう少し早くに治療を中止して緩和医療に移行してあげれば良かったと思っています。患者さんに手足症候群のお話をするときにはいつも父の痛々しい姿を思い出してしまいます。

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