2010年12月20日月曜日

細胞診と針生検 その2

(**書き終わってから前にも似たようなことを書いたことに気づきました(汗)。これだけ書いていると何を書いたのかわからなくなります(泣)。とりあえずこのまま続編として残しておきます。)


乳腺腫瘤を診断するために必要なのは、
①視触診 
②画像検査(マンモグラフィ、超音波検査、(MRI)) 
③病理学的検査(細胞診、組織診=針生検・マンモトーム生検・開放生検)
です。

病理学的検査のうち、乳がんの確定診断にもっともよく用いられるのが、細胞診と針生検です。今回はそれぞれの特徴についてお話しします。

<穿刺吸引細胞診(ABCまたはFNAC)>
・22-23Gという細い注射針を腫瘤に穿刺して、注射器で陰圧をかけながら吸引することによって組織から細胞を採取する方法です。
・バラバラになった細胞を見て、元の組織がどういうものだったかを推定する検査法ですので、本来は確定診断ではありません。正診率は95%程度で、時に診断の誤りが起こりえます。十分な経験をもつ医師または細胞検査士でなければ、診断率はさらに下がります。ですから、細胞診単独ではがんの断定はしないほうが無難です。視触診、画像診断、経過と細胞診の結果が一致した時にのみ確定診断とするという慎重な姿勢が大切です。
・診断精度は針生検(組織診)より劣りますが、微小な病変、皮膚や筋肉に近い病変、嚢胞性病変の場合には細胞診のほうが有用であることもあります。また麻酔も必要なく簡単に何度でも行なえる手軽さが特徴です。

<針生検(CNB)>
・14-18Gの専用穿刺針で内筒と外筒の間に組織を切り取って採取する方法です。バネによる自動式のものが主流ですが、すべて手動で行なうタイプもあります。
・基本的には組織診ですのでこれで確定診断になります。しかし、まれに針生検で誤診をするケースもあると言われています。例えば乳腺症型の線維腺腫と硬がんや非浸潤がんなどです。これも画像と組織診が一致しているかどうかをよく検討すれば避けられる誤診ではありますが、実際には病理から”癌です”と組織診の報告が来たら信じてしまいがちです。人間の目で診断するものですから、針生検の診断も100%ではないことを理解しなければいけません。
・診断精度が高いことが特徴ですが、もう一つ、がんの特徴(ホルモンレセプターやHER2など)を知ることができるため、術前化学療法を行なう場合には必須の検査です。
・あまりに微小な病変の場合は命中が困難です(マンモトーム生検なら可能)。また嚢胞性病変の場合には、当たりどころによっては液体しか採取できずに診断不可能な場合があります。皮膚や筋肉に近い場合は距離と角度が取れずにうまく穿刺ができない場合があります。

最近では、細胞診の誤診を避けるために病理医がより慎重に診断する傾向が強くなったためか、明らかながんだと思って穿刺しても「鑑別困難(以前の基準ではClassⅢ)」という判定で帰ってくることが多くなったという話を聞くことあります。結局針生検をしなきゃならなくなるので最初から針生検をするようになった施設が多いようです。もちろん、昨今の術前化学療法の普及のせいもあるとは思いますが…。

ただ、私がG病院で研修していた時に夜遅くまで私たちのために細胞診診断を教えて下さった乳腺細胞診断士の第1人者であるIさんの熱いお話を思い出すと、安易に細胞診という診断方法を捨てたくはないと個人的には思うのです。Iさんからの教えは今でもノートに残っています。今はもうG病院をやめてしまわれましたが、私にとっては懐かしい大切な思い出です。

13 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして Yと申します。
昨年11/末 触診では異常なし。マンモで異常疑いありとの保健センターより連絡、
12/1再検査マンモ、エコーと細胞検、
12/20結果グレー
12/27針生検
1/17 右胸に外側に非浸潤ガン ステージ0、しこり8.5mmと診断される。

その後、造影剤をつかってMRIをとり、数日後に説明を聞きに病院へ。
結果はMRIには何も写っていなかったので、浸潤がんがひそんでいる可能性あり。
温存を希望しても手術時に もし浸潤がんが見つかれば胸筋温存乳房全適術になるとのこと。
私的に乳房が亡くなる喪失感に耐えられないので、本を読み自分の中のベスト案
1 温存の種類によっては温存希望、
2 !/4切除のように変形が激しいと予想された場合は皮下乳腺全摘術で同時再建を希望
と用意していたのに、
手術を始めてみなければ、何もわからないという医師の言葉に
ただただショックを受けました。
その後こちらの記事を読み
MRIで何もうつってないのなら、もしかしたら 私の針生検は誤診であった可能性があるのでは?
手術をするのではなく、他の検査マンモトームをしてもらうべきではないのか?と思っています。
2月にセカンドオピニオンを予約していますが、誤診のことばかり考えて、
手術方法を選択することもできずにいます。
また 高度な技術をもっている病院に二度目のセカンドオピニオンに行くべきではないかと思っています。
先生はいかが思われますか?お忙しいとは思いますが、ご意見よろしくお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Yさん)
はじめまして。
コメント内容にちょっと不可解な部分がありました。

①「結果はMRIには何も写っていなかったので、浸潤がんがひそんでいる可能性あり。」

→MRIに写らないから浸潤がんというのはおかしいです。聞き間違いではないでしょうか?ほとんどの浸潤がんはMRIに写ります。非浸潤がんでも多くは写りますが、おとなしいタイプの非浸潤がんでは写らないこともあります。浸潤がんが写らないとしたらMRIの装置に問題があるか、非常に乳腺症が強くて判断が難しい場合(この場合でも最近の装置と条件設定でほとんど写ります)くらいですのでおそらく聞き間違いではないかと思います。

②「温存を希望しても手術時に もし浸潤がんが見つかれば胸筋温存乳房全適術になるとのこと。」

→針生検を含めた術前検査で非浸潤がんの疑いであった場合、少なくとも大部分が非浸潤がんであることが多いです。このようながんに浸潤部分があるかどうかを調べるためには術中診断では限界があります。切除した標本を細かく切り出して全ての割面に浸潤がんがないことを確認して初めて非浸潤がんと診断されるのです。ですから術中にその判断をするのは困難と思われます(術中の凍結標本の割面にたまたま明らかな浸潤がんがあれば判断できますが…)。
また、浸潤がんがあれば乳房温存術ができないなどということはありません。実際乳房温存術を受けている多くの方は浸潤がんです。

なにか大きな勘違いまたは聞き間違いをされていないでしょうか?(例えば主病巣以外に病変があって、それを術中に検査するとか…)もしまったくその通りの説明だったとしたら私にはその説明内容は理解できません。もう一度きちんと説明を受けることをお勧めします。その上でセカンドオピニオンを受けられることについてはまったく問題ないと思います。その際、針生検のプレパラートも必ず借りて持っていくようにして下さい。

取り急ぎ以上です。また何かわからないことがあればご連絡下さい。お大事に!

匿名 さんのコメント...

早々のお返事ありがとうございます。
1 何も写っていなかったというのは間違いありません。
ただそれが、浸潤癌と言われたのか非浸潤癌と言われたのかは、わからなくなってしまいました。
先生のご指摘があるまで、間違いなく浸潤癌があるかもしれないと言われたと思っていました。
MRIの検査では浸潤癌は必ず写って、非浸潤癌は写らない場合があるのですね。
それを知らなかったので、医師にはっきりと浸潤か非浸潤癌かは確認ができていません。
医師は手術をしなければ、どうなっているのかわからないので、温存といっていても全適するかもしれないとか
おそらく転移はしていないと思われるが、それも手術をしてみないとわからない。
すべて最悪のケースを覚悟の上で手術にのぞむようにと言われてるようでした。

2 これははっきり確認しました。同時再建を希望しようと思っていたので。
このときの説明では映っていないガンが、もし他にもあれば温存から全適になるとおっしゃっいました。
映らなかった非浸潤癌が手術時にみつかれば、温存から全適になるといったのなら、まだつじつまがあうかもしれません。
また質問ですが、おとなしい非浸潤癌はMRIでは映らない場合があるとのことですが、ではそんなおとなしいガンをとる必要があるのでしょうか?

3 セカンドオピニオンの件ですが、
この医師からは再建の件も全く確認されませんでしたので、こちらから再建希望と言いましたら、驚かれてそれは形成外科で相談するように言われました。
セカンドオピニンを希望のときはおっしゃってくださいと言われてましたから、『お願います』と言いましたら、
紹介状を書いておきますと言われました。

先生はセカンドオピニオンのときは針生検のプレパラートを借りていくようにアドバイスしてくださってますが、これ以外に病院にはあえてこれをお願いしますと言わなければいけないものは他に何かありませんか?
たとえばMRIやマンモなど。。
先日この病院に書類について確認の電話をしたときに
何でも貸し出すというわけではありません。先方の先生はなんとおしゃってますか?と看護士さんに言われましたので。
セカンドオピニオンの先生にしっかり診ていただきたい場合はいったい何を持参すればいいのでしょうか?

そしてこれは私が悪いのですが、正式な診断名を聞いていないのです。そういうものは書いたものをいただけるのかと思っていましたから。
どうして医師はあなたのガンはこういうものです。とはっきり診断名をいわなかったのでしょうか?

お忙しい中申し訳ございませんが、お返事よろしくお願いいたします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Yさん)
疑問に思われる点についてはできれば再度主治医の先生に確認したほうが良いとは思います(セカンドオピニオンを受けるならその紹介状にはきちんと書いているのではないかと思いますが…)。
推測ではありますが、もしかすると「MRに写らなかったので「非浸潤がん」かもしれない。MRで範囲が推定できないので思いのほか広がっていた場合には乳房全摘になるかもしれない。」と説明したのではないですか?
術中に微小浸潤の有無を全て調べるのは昨日書いたように困難ですが、切除断端の一部を凍結診断に提出して明らかな取り残し(広範囲な非浸潤がんによる乳管内進展)があるかどうかは調べることが多いのです。この検査でもし術中にがんの遺残が疑われた場合には追加切除をしたり乳房全摘に術式を変更することがあります。また、術中の迅速診断で取りきれているかどうかを全て調べることはできませんので術後の病理検査で初めてがんの遺残が判明することがあります(がんの遺残する確率は乳房温存術全体で約10-20%あります)。この場合は後日再手術をするか通常の放射線治療にブースと照射という電子線照射を加えなければなりません。

以上で①②についての説明になったのではないでしょうか?②についてはおそらく浸潤がんであるかどうかではなく、切除断端にがんがあった場合、つまり乳管内進展による非浸潤がんの取り残しがあった場合には胸筋温存乳房切除術に変更するとおっしゃったのではないかと思うのですが違いますか?

MRに写らないようなおとなしい非浸潤がんを放っておいていいかどうかについてのはっきりした答えはありません。ただ、乳房内再発の最大の危険因子は、切除断端のがんの有無、つまりきちんと取りきれているかどうかです。画像に写る範囲は通常多少なりとも距離を置いて切除しているわけですので、取り残したがんの多くはMRを含めた画像に写っていないがんです。ということは、MRに写っていないがんなら放置して良いとは言えないのではないかと私は思います。ただし少量のがんの遺残であれば放射線治療でコントロール可能ですのですべて再手術すべきだと言っているわけではありません。

セカンドオピニオンというのは正確に言うと紹介先の病院では検査をしません。すべて紹介元の検査結果を見て、診断および治療方針が妥当かどうかお話しするだけです。ですから紹介元での全ての検査データ(病理標本、画像データのCD-R)と紹介状を持って受診することが基本になります。ここが転院とセカンドオピニオンの違いです。おわかりいただけましたでしょうか?

匿名 さんのコメント...

今晩は、Yです。ご説明ありがとうございます。
先生のお話でなんとなく担当の医師がいわんとしていたことが理解できたように思います。
こちらは、医師の『残念ながら』の一言で動揺していますし、医師は時間に追われてますし、短時間ですべてを理解するのは、ちょっと無理がありました。
とりあえず、、明日はセカンドオピニオン、来週はサードオピニオンを受診するので、先生のアドバイス通り、疑問に思っていることは、こちらの医師たちに尋ねてみようと思っています。
最初の医師からの『手術をしてみないと、中がどうなっているのかわからない』と言われてることが不安ですが、
先生のご説明によって、今は自分の病気をすべて受け入れることができそうです。
本当にありがとうございました。
また質問にお邪魔するかもしれませんので、そのときはどうぞよろしくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Yさん)
わかりました。納得のいく説明を受けて納得のいく治療を受けられることをお祈りいたします。
また何かあればご相談下さい。
それではお大事に!

匿名 さんのコメント...

はじめまして。
先日健診のマンモでしこりが見つかり、
乳腺専門医のあられる病院で精密検査をしました。
針生検をした結果、
「良性の線維線種ですが一部に癌のようにみえるものがあります。癌かも知れないし癌ではないかも知れない・・判明するにはしこりを手術で取り出し再度検査させてください」
と言われました。

それからセカンドオピニオンを考え紹介状をお願いし、医大の乳腺専門医に行きました。
再度針生検をしたところ、良性の線維線種で
次回は1年後に受診でよいということでした。

しかし、一度「癌かもしれない」といわれると
気になってしまい、どうすればよいか悩んでします。

気になるのは針生検をした際
最初の針生検では、なかなか的にあたりにくい
みたいで10回ほど摂取したようです。

医大でその旨を医師にお話しましたら
私のしこりをエコーで見ながら
「この大きさなら針生検で3回で十分採れます」
と説明され、
検査後の説明も
「しっかり採れましたので。」
と医師からの説明がありました。

匿名 さんのコメント...

突然のコメント申し訳ありません。
お忙しくされている中申し訳ありませんが
先生のご意見をお聞かせください。
よろしくお願いします。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
経過をお聞きすると迷われるお気持ちはよく理解できます。最終的に医大の先生がそう判断されたのであれば安心して良いのではないかと思いますが、実際に画像も生検結果も見ていませんので確かなことは言えません。
最初の病院で”針生検検体の一部にがんのようなものが見えた”という件についてあくまでも想像ですが、可能性についてお書きします。
①乳腺症型の線維腺腫だったために、乳腺症様の乳管内増殖性病変が非浸潤がんのように見えた(これは線維腺腫をがんと誤診することがあるもっとも多い理由です)。
②10回も穿刺した(普通はこんなに刺しません)ということから、線維腺腫の周囲の組織が採取されていて、この中にがん、またはがんのような病変(①で書いたような乳管内増殖性病変)が一緒に採取された。
③線維腺腫の一部に本当にがんが合併していた(線維腺腫内にがんが発生するのは実際はきわめてまれと言われています)。
この中では①②の可能性が高いのではないかと思います。もしどうしても心配なら、その旨を医大の先生にお話しして、摘出生検の是非も含めて再度説明をしてもらうのが良いと思います。

匿名 さんのコメント...

初めてコメントさせていただきます。 
Amyです。 もともと乳腺症なので、6-10か月に一度の検査でエコー、視触診の定期健診、(マンモは年一度)を乳腺外科クリニックで受診しています。

2013/8 定期健診で来院。 
    今年の春くらいから少しきつめのユニクロブラトップを昼夜問わずつけていたせか、胸が痛いことを主治医に伝えた。視触診、マンモ異常無。エコーでしこりを発見。その場で細胞検を実施。

2013/8 2週間後 結果はクラスⅣ。 主治医はエコーの画像を見る限り、総合すると癌の確立は50%と言及。針生検の予約を取る。1週間後針生検実施

2013/9 浸潤性癌 I期 リンパ節なし診断
腫瘍マーカー等の詳細結果は来週.現時点での治療方針としては
温存手術+放射線+腫瘍マーカーによって。

主治医出身の乳がんでは知られた病院へ紹介状をもらい来週行く予定。 
そこで温存手術の日程、MRI検査実施予定。

質問1 数年前ヘルペスに右上半身罹患しましたが、ここ数週間針生検の患部、検査前からも疲れると首の右側、右鎖骨、右胸下部ヘルペスと類似した痛みがあります。現在特に右首、鎖骨に痛みがあります。 ヘルペスの後遺症が細胞、組織検査結果に影響を与える可能性はありますか?

質問2 合わないブラを24時間ほぼつけてしまったことで炎症が誘因され、それによって細胞が傷つき、癌ではないがこのような検査結果が出ることはありますか?

質問3 主治医から紹介された病院で、再度細胞診、生検(サンプルが残っていたら流用したい)を依頼するのは可能でしょうか?

質問4 紹介された病院で計画予定のMRIを行う事で、上記の誤診の懸念は払しょくされるでしょうか?

長くなり申し訳ありません。 

アドバイス頂ければ幸いです。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(Amyさん)
はじめまして。
ご質問にお答えします。
質問1 ヘルペスの後遺症が細胞診/針生検結果に影響を及ぼすことはありません。痛みに関しては、診察もしていませんので原因を推測することは控えます。
質問2 そのようなことはありません。
質問3 通常、紹介状と一緒に標本のプレパラートを渡されるのではないかと思います。それを紹介先で見てもらうのが体に対する侵襲の上でも望ましいと思います。もし渡されないようでしたら依頼すれば必ず貸してもらえるはずです。
質問4 MRでは確定診断はできません。良悪に関しては推定診断です。MRは主に温存手術可能かどうか広がりを見るために施行します。良悪の診断に関しては組織での診断がもっとも重要です。
以上です。それではお大事に。

匿名 さんのコメント...

お忙しい中多くの質問に早速答えて頂き大変ありがとうございました。 主治医には直接聞きにくい質問でしたので、とてもありがたく思います。 プレパラートに関しては現在受け取ったものに入っていないようですので、依頼したいと思います。 

本当にご多忙中速やかに回答頂きありがとうございました。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
それが良いと思います。
これからの治療、頑張って下さいね。お大事に!