命には関わりませんがタキサン系(ドセタキセル、パクリタキセル)のやっかいな副作用の一つに浮腫があります。一般的にはドセタキセルのほうが起きやすいと言われていますが、パクリタキセルでも起きます。以下、ドセタキセルによる浮腫についてご説明します。
1.概要
ドセタキセルが使用可能となった当初の国内での適応は進行再発乳がんで、投与量も60(-70)mg/㎡と少ない量(欧米では100mg/㎡)でしたので欧米で言われていたほどの浮腫の発生はないとされていました。実際、私たちの病院では60mg/㎡を基本としていましたのでかなり回数を重ねない限り、浮腫で悩まされることは多くありませんでした。しかし術後補助療法として投与されるようになってからは70mg/㎡が基本量となり、さらにTC療法で75mg/㎡のドセタキセルを投与するようになってからは浮腫の頻度が増加してきた印象があります。
2.用量と発生頻度
ドセタキセルによる浮腫は,毛細血管透過性の亢進が主な原因と考えられています。発生頻度は用量依存性であり、特に総投与量が300-400mg/㎡以上になると間質へのうっ血とリンパ管への還流障害が起こり,浮腫の発生頻度が増加します。ただし、これ以下の量でも発生することがあります。
3.予防法
ステロイドの予防投与が浮腫の発生を抑制することがわかっています。施設によって若干違いはありますが、代表的な方法は以下の通りです。
①ドセタキセル投与前にリン酸デキサメタゾン8-16mg点滴静注(または投与12時間前、3時間前にデキサメタゾン4mg内服)
②投与翌日(または当日夕)から2日間、デキサメタゾン8mg/日(1日2回に分ける)内服
4.投与中の留意点
体重測定、起床時の顔のむくみ、夕方にかけて悪化する下肢のむくみ(靴下の跡や圧痕の有無)などをチェックしておき、次回投与時に主治医に報告します。むくみがあるときには怪我に気をつけましょう(治りにくくなりますので…)。
5.浮腫発生時の対処
①できるだけ早めに利尿剤を投与…フロセミド20-40mg/日→血清カリウム値と浮腫の状態を見てスピロノラクトン25-50mg追加
②改善がなければ治療の延期、他剤への検討を検討する
浮腫や関節痛・筋肉痛・しびれなどのタキサン系の副作用は命に関わるようなものではありませんが、患者さんにとっては非常に不快な症状です。先日も一人、浮腫を発生した患者さんがいらっしゃいましたが、幸い利尿剤に反応してくれたため浮腫は軽快し、治療を継続できています。治療が奏効している場合は、なんとかうまく副作用をコントロールしながら継続したいものです。しかしいつもうまくコントロールできるわけではありません。その場合は、患者さんに我慢してもらいながら継続するか、治療を変更するかを検討しなければなりません。
5 件のコメント:
hidechin先生いつも大変為になるブログをありがとうございます。とても参考にさせていただいております。
以前にも何度か質問させていただき先生にアドバイスいただいている者です。
少し前の記事にコメントしてすみません。
浮腫みのことで、やはり気になっているのでこちらの記事にコメントとさせていただきました。
抗がん剤治療(タキソテール、エンドキサン)が終わって1年2ヶ月がたちます。それから現在までの間にハーセプチン治療を1年間し、それも終わって2ヶ月がたちます。
最初の抗がん剤治療の副作用は様々な症状が出て、かなりきつかったんですが、浮腫みは終わってからもなかなか治りませんでした。そして今も尚、多少浮腫みがあるような気がするのです。(特に足のふくらはぎから足首にかけてと、腕の肘から上の部分)
勿論治療中に比べたら、だいぶ症状は軽いのですが、それでも今までの履けていたブーツが履けなくなっていたり、服の袖が肩の部分などきつく感じたりします。
こんなに時間がたっても浮腫みの症状が続くことはあるのでしょうか?また、何か症状が緩和される薬などあるのでしょうか?
主治医の先生にも話したのですが、あまり相手にしてもらえませんでした。
何かアドバイスがあれば教えていただけたらありがたいです。
>ミチさん
けっこうむくみが長く続いているんですね。だいたいは治療終了後半年以内くらいで改善することが多いと思いますが個人差がありますので今後どういう経過を取るかは何とも言えません。他にむくみの原因がないのであれば、治療は利尿剤か漢方薬くらいだと思います。マッサージなども効果があるかもしれませんが、主治医の先生に確認してから行なって下さい。
あまり良いアドバイスができなくてすみません。それではお大事に!
hidechin先生
ご返答どうもありがとうございます。
もう少し様子をみてみます。
初めてコメントします。
よろしくお願いします。
三ヶ月前胸な痛みが強く、しこりには気付きませんでした。マンモとエコーをした後に、マンモには異常はなくエコーに楕円形で下の部分が歪な1センチのしこりが見つかりました。すぐに針生検をその場でおこないました。硬くてコロコロ動くとの事でした。
結果は悪性ではない。あとは何の病名もなく大きくならなければ問題ないと言われました。
ほっとしたので何も聞かずに帰りました。
が、検査から三ヶ月経って違和感は取れず、うつ伏せになって圧迫するときつい痛みがあります。
右胸も少し大きく見えるて位置が左より下がっています。
気になって子宮頸がんでお世話になった病院で再検査しました。
マンモとエコーです。
針生検は三ヶ月前にしたばかりだから出来ないとの事。
エコーにやはり同じ楕円形の上部は境界線がはっきりしていますかが底面はもやもやしています。
1.3センチと、三ヶ月前より3ミリ大きくなっていました。他、別で新たに6ミリのしこりが見つかりました。
繊維腺腫だろうとの事ですが45歳の私が繊維になると葉状腫瘍の可能性もあるのでしょうか。
5年前にマンモとエコーを二回していますがその頃は何もありませんでした。
大きくなったら怖いものもあるのでと、
半年ごとに検査し経過観察となりました。
その間に大きくなったらすぐに来てくださいとのことです。
三ヶ月で3ミリ大きくなるのは速いですか。
三ヶ月で新しいしこりが6ミリって早いですか。
大きくなったら怖いものの可能性とは何ですか。
胸を出来るだけ観察しておくように言われました。
>間久保ひとみさん
はじめまして。
閉経前であれば線維腺腫が増大することはあります。また、3㎜程度であれば測定の仕方による誤差ということもありえます。検査した病院が違うのであればなおさらです。6㎜の腫瘤は見落としていたという(もしくは腫瘤ではなく脂肪や乳腺症のムラという可能性もあります)可能性も否定できません。なお6㎜で葉状腫瘍かどうか画像で判断することはほぼ不可能です。通常は経過をみて増大傾向が明らかであれば葉状腫瘍も鑑別に入れます。
ご不安に思われるお気持ちはよく理解できます。
ただ実際に画像を見ておらず、組織診の結果も確認していませんので私はなんとも言えません。ですから中途半端な意見は差し控えさせていただきます。いま疑問に思われることを生検をした施設の担当医に直接お聞きになるのが一番早いと思いますよ。
取り急ぎ以上です。
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