2012年5月9日水曜日

セカンドオピニオンについて

乳がんと診断された方が、他の施設での診断や治療を希望されることがあります。紹介・転院を希望される場合は良いのですが、セカンドオピニオンについては、まだ十分理解をされていない方が多いようです。

mixiなどのSNSでは、「がんと診断されても一つの病院で判断しない方がいい。セカンドオピニオンを受けるべきだ。」というような書き込みをよく見かけます。しかし、その内容を読むと、それはセカンドオピニオンではないでしょう?と思うことがしばしばあります。このようなネットの影響を受けている方が多いためか私自身も何度かセカンドオピニオンに関しての患者さんの誤解に困惑したことがありました。

例えば、術前検査も終了し手術予定まで組んでいた乳がん患者さんから突然外来に電話が入り、「○○病院にセカンドオピニオンに行ってきて、結局そこで手術をすることになったから入院予約をキャンセルして下さい。」と言われたケースや、乳がんの告知の際にセカンドオピニオンの希望があればおっしゃって下さいという話をしていたにも関わらず黙って△△病院に受診して、その病院の外来から「セカンドオピニオンに来たら紹介状が必要だと言われたのでこれから取りに行くので今すぐ手紙を書いて資料も下さい。」という電話が入ったケースなどがあります。


セカンドオピニオンの概要について以下に書いてみます。

①セカンドオピニオンというのは、「前医での診断や治療方針が妥当かどうか、他の治療方法などはないのか、ということについて他の専門医の意見を聞きにいくこと」です。

②したがって、セカンドオピニオン目的で受診した病院では検査はしませんし、そこで治療を受けることを前提に行くわけでもありませんから、とりあえずセカンドオピニオン後には最初の医師の元に一度は戻るのが原則です。その上でセカンドオピニオン先での治療を希望する場合は改めて最初の医師から紹介をしてもらうようにして下さい。

③セカンドオピニオンは、基本的には保険外診療ですので、値段と時間はその施設によって異なります。中には通常の診療時間内でセカンドオピニオンを受け入れている病院もありますが、一般外来の中では十分な質問の時間は確保できないと思って下さい(外来をしている側の立場からも一般外来内でのセカンドオピニオンはあまり好ましいことではなのです)。

④セカンドオピニオンの際に必要なものは、紹介状と検査データ(検査所見用紙、画像のフィルムまたはCD-R、細胞診または組織診などの病理検査標本など)です。通常、セカンドオピニオンは予約が必要で、あらかじめ医療連携室などを通して連絡を入れます。

⑤④の準備のためには少し時間が必要です(ですから上に書いた2例目のケースは非常に困りました)。後日あらためて資料などを取りに行って予約を入れることになることもあると思います。もし外来受診時ではなく、帰宅後にセカンドオピニオンを受けたいと思われた場合は、あらかじめ外来の看護師にその旨を電話で伝えて、資料を取りに行く日を相談しておく方が二度手間にならなくてすみます。


一生懸命診断し、治療方針を立てた患者さんからセカンドオピニオンの希望を出されることは、医師にとって決してうれしいことではありません。しかし、突然の告知に戸惑い、不安になる患者さんのお気持ちはよく理解できます。ですから私はセカンドオピニオンが一般に認知されてからは、セカンドオピニオンの希望があればおっしゃるように告知の際にあらかじめ患者さんにご説明しています。

繰り返しますが、セカンドオピニオンは、「最初の診断医の判断が妥当かどうか他の医師の意見を聞く」ことが主目的ですので、私個人としては、最初の診断医との関係が良好で、セカンドオピニオンでの判断と違いがないのであれば最初の診断医の元に戻って治療を受けて欲しいと思っています。もちろんセカンドオピニオンの結果が異なっていて、そちらの意見に賛同する場合は紹介・転院を希望されるのはまったくかまわないと思います。

なお、もし最初の医師との関係に問題がある、もしくは有名な病院や医師に治療してもらいたいと最初から思っている場合はセカンドオピニオンの対象外ですので、最初から紹介してもらった方が経済的にも時間的にも有益だと思います。いずれにしても患者さんも医師も同じ人間同士ですので、良好な関係を保つためにお互いルールを守るようにしましょう。

7 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

親族の乳がんで,付き添ってセカンドオピニオンに行きました。まるでモグラたたきのような状況でしたから,あとで後悔したくないという思いで行ったのですが,結局たいして役には立ちませんでした。
 セカンドオピニオンを求めるとき,本人は混乱していると思います。もし,最初の医療機関で保険外であっても,なぜその治療計画を選んだのかを時間をかけて詳しく説明されれば,多くは他の医療機関に行かないように思います。説明が明瞭でなかったり,不親切であった場合,セカンドオピニオンを求めたくなります。
 親族の時は,主治医も是非行くようにということでした。稀なケースで,あまり経験がないので,教育機関や研究所の併設で地域の拠点病院に意見を求めて行ってほしいというのが本音のようでした。まあ,それしかないでしょう的な結論でした。セカンドオピニオンで目から鱗,知らなかったらどうなっていたか,ということはほとんどないのでしょう。一般病院の医師の実力が高いのか,権威がこけおどしなのか。マナー違反は別として,気になさらずに。ブログを読む限り,あなたは素晴らしい良医です。

匿名 さんのコメント...

こんにちは。
私はセカンドオピニオンという制度があるのならば、なぜ、自分の主治医に保険診療とは別体制で時間を使って話をしていただくという制度がないのだろかと思います。
実際はわざわざセカンドオピニオンを受けに行かなくても主治医にじっくりと説明をしていただければ納得がいくということが多いのではないかと思います。
お金をかけてでもじっくりと説明が受けたいです。

これは、術後の説明についても同じです。
もちろん、主治医との話を別料金で制度化するとなれば、線引き等が難しいと思うのですが、初期治療が終わた今も、別料金でいいので主治医とじっくり話がしたい気持ちでいっぱいです。

もちろん、先生は聞いたことには回答してくださるとても信頼のおける先生です。そういう状態でも患者は落ち着かないこともあるということもわかってほしいと思います。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん(お二人)
コメントありがとうございます。匿名で続けてコメントされてしまうと返事に困ることがありますので、できれば匿名ではなくわかるような形で書いていただけると助かります。
たまたまお二人とも共通するお話でしたので失礼ながらまとめて御返事させていただきます。

お二人がおっしゃる通り、最初の医師からの説明が不十分だったことがセカンドオピニオンにつながるきっかけになることは多いと思います。
ですから私は、そのようなシビアなお話をする時は、一般外来の時間ではなく、あらかじめゆっくりお話しできる時間と場所をセッティングするようにしています。
また、紙に説明内容を書きながらお話しすると患者さんの目を見て話せなくなりますので、面談の前に(時に勤務時間外に)説明用紙は詳しく記入しておきます(必要に応じて面談後に追加記入します)。
ただ、全ての医師が私がしているような時間を確保できるとは限りませんので、一方的に結果を告知されただけで質問することすら許されないような状況というのが生じるのだと思います。これはその医師だけが悪いのではなく、日本の医療情勢(医師不足、有名病院や大病院への患者さんの集中など)にもよるのだと思います。
また、時間をかけてゆっくりご説明しても、結局もっと症例数の多い病院へのセカンドオピニオンや転院を希望される患者さんはいらっしゃいますので、説明不足だけが原因ではないと思います。病院の選択は患者さんの自由ですので残念ではありますが、それはそれでやむを得ないものだと思っています。

匿名 さんのコメント...

2人目にコメントしたものです。
先生とお1人目の方にご迷惑をおかけして申し訳ありません。

先生のような丁寧な対応をしていただける患者さんはとても幸せだなと思います。
お忙しい中での本当に大変なことだと思います。
先生がいつも真剣に取り組んでいらっしゃるお姿はこのブログを通していつも感じていますし、感謝しています。

自分も入院を通して、医者任せの患者さんや無理なお願いではないかと思われる患者さんの様子に驚くことがありました。
患者ももっと成長しなければいけないと感じることも多かったのです。

患者によって先生方を疲弊させるようなことがあってはいけないと考えています。ですから、医療者だけに要望するだけでなく、患者も成長していくような働きかけがしたい思います。

hidechin さんのコメント...

>2人目の匿名さん
本当は医師にもっと余裕があれば患者さんに十分な情報と安心を提供できるのに…と思っています。患者さんが悪いわけではありません。当然の要求だと思っています。
ただ、そういう医師の状況を少しだけ理解していただければ…と思います。

匿名 さんのコメント...

千葉県に住む母が乳ガンの全摘手術を受けました。術後 検査結果に行ったところ、再発予防のため抗がん剤治療を受けるか決めてくださいと言われました。病院は都内のため満員電車で通う母がとてもつらそうです。以前電車で貧血を起こしたこともあり私が必ず付き添っていきますが、例えば術後の治療からもう少し最寄りの病院に転院することをどう思われますか?母は60代後半ですが過去にたくさんの病気を経験し、今回の乳ガンと来たため精神的にもかなり参ってしまっています。

hidechin さんのコメント...

>匿名さん
はじめまして。
それは大変ですね。今は病院同士の連携が重要視されています。通院中の病院が大病院なのでしたら、匿名さんのようなケースはよくあることだと思いますので信頼できる近くの病院があるのでしたら紹介してくれるのではないかと思いますよ。是非ご相談なさってみて下さい。
それではお大事に!