2014年5月19日月曜日

数年前の悲しい出来事…

このようなブログを書いているとき、いつも気を使うのは守秘義務に関してです。私が誰なのかご存知の方もいらっしゃいますのでうかつに書いてしまうとその患者さんが特定されてしまう可能性があります。ですからそのような時は書くだけ書いて下書きの状態で保存したままにしておきます。一定時間が経ってからであれば個人情報が漏れるリスクは低くなりますので差し支えないと判断したものを公開していきたいと思っています。以下は数年前に書いた内容です。

私は乳がんの術後は10年は通院するように患者さんにお話ししています。再発が多いのは一応10年間と言われているからです(時にそれ以上たってからの再発もありますが…)。

そして10年が無事経過すると私もとてもうれしくなります。
「良かったですね!おめでとうございます!」
とお話しすると患者さんも長かった闘病を思い出すのかほっとした笑みを浮かべて一緒に喜んでくれるのです。


Aさんも昨年の春に無事10年を迎えました。術後に抗がん剤を投与し、ホルモン療法を5年行ない、ようやく迎えた10年目だったのです。

このとき私の記憶ではAさんも無事10年を迎えて喜んでいたはずです。そして半年後の乳腺検査の予約をして元気に帰られたのです。

しかし、その1ヶ月後に予約日を変更したいとご本人から連絡が入ったのがAさんとの関わりの最後でした…。

理由はわかりません。病院に入ったのはAさんが自ら命を絶ったという連絡だけでした。

乳がんはようやく克服できたのに何が彼女を絶望させてしまったのか…。10年もAさんを診てきて、わかっていたようで実は何も彼女のことをわかっていなかったのです。乳がんが治ったことも彼女にとってはそれほど大きなことではなくて、きっともっとつらいことを抱えていたのだと思います。どうして気づいてあげれなかったのか…悔やんでも悔やみきれません。

患者さんに向き合う時は、「病気」を診るのではなく、「病気を持った一人の人間」を診るのだということをわかっていたつもりでわかっていなかったのかもしれません。今はただただAさんのご冥福をお祈りするしかありません…。

この出来事から数年、私は患者さんに対して「病気を持った一人の人間」として診ることができているのか…もしかしたらまだまだ不十分なのかもしれません。

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