2014年5月24日土曜日

乳腺嚢胞の穿刺から難治性の膿瘍をきたした若年女性のお話

先日の外来にニセコ方面に住んでいるSさんという患者さんが1年ぶりに来院されました。

Sさんと私の初めての出会いは今から15年以上前です。まだ20才ちょっとくらいだったSさんは、近くの外科で乳腺の嚢胞に対して繰り返し穿刺排液を受けていたところ乳腺膿瘍を併発してしまい、なかなか改善しないということで私たちの施設に入院となりました。

局所麻酔で膿瘍を切開しドレーンという管を入れる処置をしましたが、すでにかなりこじれてしまっていたために次から次へと他の場所から排膿し出し、右乳房の内側・外側のそれぞれ上下に合計4カ所の切開を要しました。最終的には全身麻酔下で乳腺の裏側から広範囲に洗浄しドレーンを留置したところ、ようやく治癒傾向となって退院となりました。まだ未婚、未出産の若年女性でしたので、美容的にも、その後の授乳に関しても当時は非常に心配しました。

しかしその後無事に結婚し、現在12才と2才の子供の母親になっています。心配した乳腺炎も起こさず、授乳も良好だったようですし、美容的にも今はほとんど傷跡がわからなくなりました。あれだけ激しい侵襲を加えてしまったのにこのような順調な経過を取ることができるとは当時は思いもしませんでした。人体、特に女性の身体って不思議なものです(故 渡辺淳一先生も小説の中でよく書かれていました)。

毎年その患者さんに会うたびに当時のことが思い出されます。でも大変だったという思いより、こんなに立派な母親になってくれて良かったという思いの方が強いですね。来年またお会いできるのを楽しみにしています。

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